大谷 本物のカリスマへ 2017年はスターの真価問われる年
思わず顔を下に向けた。反省するしかなった。先日、日本ハム・大谷が昨季限りで現役を引退した元DeNAの三浦大輔氏とテレビ局の企画で対談した時のことだ。大谷は「毎日、囲み取材があるけど、同じことばかり聞かれます。“WBCのボールは滑りますか?”って。一日で変わらないですよね」と笑いながら、悩みを打ち明けた。

大谷の言い分はもっともだ。理解もできる。ただ、いまや球界を代表するスーパースター。3月にWBCが控えることから、このオフは例年以上に一挙手一投足が注目を集めているのも事実だ。二刀流5年目。練習スケジュールは過密で、練習を妨げてはいけない気持ちは報道陣も同じ。その中で、少しでも大谷の日々の変化やオフのテーマを全国の野球ファンに伝えることが使命でもある。大谷が打ち明けた「悩み」は、報道陣とまだ心が通じ合えていないと感じた瞬間だった。
選手と報道陣の心が通じ合う必要はないのかもしれない。だが、ファンあってのプロ野球。大谷もそこには気付いている。大谷はこのオフの思い出に巨人・長嶋茂雄終身名誉監督(80)との初対面を挙げ、こう言った。「凄く勉強になることがたくさんあった。言葉ではなく、話している感じとか人柄。現役(時代)を知らない僕らでもそう感じるということは、それだけ魅力があるということ」。真摯(しんし)に質問に受け答えをする立ち居振る舞い、積極的なファンサービスは、大谷もプロ野球選手として常に意識してきた。それを率先してきたのが長嶋氏だった。
昨年12月の契約更改交渉の席で球団からメジャー挑戦を正式に容認され、今季は日本ラストイヤーになる可能性がある。WBCを終え、シーズンが佳境を迎える秋にはさらに報道が過熱するだろう。大谷は言った。「僕が長嶋さんにそういう感情を抱いたように(その空気感は)目指すものではない。それは周りが決めること」。スターの領域に足を踏み入れた男だからこそ、国民を熱狂させた長嶋氏のカリスマ性を肌で感じ取ることができた。2017年。大谷はスターとしても真価が問われる1年となる。(記者コラム・柳原 直之)