【美里工業】グラウンドで朝食!?温暖な気候を活かしたオフ練習
オフシーズンの練習といえば「体力づくりのための地道なトレーニング」を思い浮かべることが多いが、美里工業では沖縄の温暖な気候を活かした試合形式の実践練習、基礎練習、体力トレーニングを効率よくローテーションさせながら、すべての選手になるべく多く実践経験を積むように考えられた練習を行っている。「オフシーズンが一番楽しいかもしれないね」と語る美里工業・神谷嘉宗(かみや・よしむね)監督にお話をうかがった。
美里工業の選手たちはグランドで朝食をとる。他のクラブとの兼ね合いもあって、グランド全面を使ってのバッティング練習は朝早い時間帯にしか行えないためだ。選手たちはそれぞれ自宅から主食となるご飯と、味噌汁用の具材を一種類持ち寄って集まってきた。190リットルのお鍋に入れる具材は何でもよく、野菜や豆腐、ハムやきのこ類などに加えて、卒業生が経営しているステーキハウス店から肉の切れ端を提供してもらっているという。そこに味噌3㎏、鰹だしをあわせ、溶き卵を加えて味噌汁を作る。
当然、毎日少しずつ味は変化するらしい。選手たちは各自タッパーにお味噌汁を入れ、900g以上になっているかどうかをチェックしていた。36年間高校野球の指導にたずさわってきた神谷監督は「朝食をグランドで食べないと落ち着かない」と笑う。

2年生31人、1年生50人、あわせて81人の野球部員がいる大所帯。全体練習を行うためには練習をいかに効率よくできるかが重要になってくるが、こうした練習メニューについても「臨機応変に対応できるように」選手たちに考えさせているという。
バッティング練習をしているグループとは別に、外野付近でまとまってウォームアップを行っているグループがあり、午前中に行われる資格取得対策の講習に参加する選手たちは、サイドでティーバッティングを行っている。ティーバッティングで使われていたコの字型ゲージは神谷監督の発案によるもので、他の学校も次々と採用しているとのこと。
朝のバッティング練習が終わるとすぐにグループに分かれて試合形式の実践練習が始まる。試合では各打者の成績を加点方式で点数をつけ、それをチームで共有し、選手全員の投票によって大会のベンチ入りメンバー17名を選出するという。「あとの3名だけは監督・コーチでポジションの偏りを確認したり、チームの雰囲気を上げる元気のいい選手を選んだり」とここでも選手主体のチーム運営が徹底している。
一方でクロスフィットと呼ばれるサーキット形式のトレーニングに取り組んでいるグループは、毎日変わるトレーニングメニューを確認しながら、時間や回数によって体を追い込んでいた。
一つ一つのエクササイズは短くても集中してできることや、トレーニングメニューが毎日変化するので同じ部位に大きな負担がかかりにくく、飽きがこないこともそのメリットとして挙げられる。
「クロスフィットを続けることで選手たちの体にも変化が現れ、疲労からの回復力が高まった」
と神谷監督は話す。
全体練習ではクロスフィットをメインに行うが、これ以外にも必要な選手はウエイトトレーニングなどに自主的に取り組んでいるという。
試合形式の実践練習ではベンチからの声も大きく、ヒットでランナーに出た選手は積極的に次の塁を狙っている。これも加点方式によりシングルヒットよりもツーベース、スリーベースの方が点数が高いためだ。欲張って次の塁を狙ってたとえアウトになったとしてもここでの減点はない。
「こうした試合の中での“暴走”練習も行っています。どのぐらいでセーフになるのか、アウトになるのかは繰り返し経験して覚えることが大切。美里工業は積極的な走塁を評価されることも多いですが、特別なことをしているのではなく、実践あるのみです」。
試合形式の練習では塁間にはさまれる挟殺プレーや、次の塁を狙ってアウトになるケースもたびたび見られたが、明確な意図のもとに選手たちは時に“暴走”となる走塁を行っていた。