「野球の技術と身体の使い方教室」レポート(2)

2月9日、ヤキュイクでも以前登場していただいた「NPO法人日本少年野球研究所」の佐藤洋さんと、その佐藤さんが現役引退直後から交流のある110mハードル元日本代表の平岩時雄さんが講師を務める「野球の技術と身体の使い方教室」が埼玉県川越市で行われた。開催当日は小雪がちらつく生憎の天気だったが、40名近くの選手、指導者が参加。その様子を佐藤さん、平岩さんの解説を交えながら3回にわたってレポートする。

柔らかい捕球動作のポイントは「小さく前へならえ」

前回の「レポートその1」に続いて佐藤さんによるボールの捕球動作の解説。まずは二人一組で向かい合い、転がしたボールを捕球するところから始めたが、旧来の日本の野球の教え方はグラブを捕球する側の前に向けて立てて構え、右手で蓋をするというものだという。そして佐藤さんの話では、この捕球方法は確実に動きが硬くなるとのことだった。

一方でアメリカや中南米の選手の捕球動作は柔らかいとよく言われるが、一番の違いはボールを待つときの腕の使い方だという。グラブの面を前に向けるのではなく、「小さく前へならえ」のように両手を軽く前に出してボールを待つことで、両腕に力が入らずに楽に使えるようになるのだ。

分かりやすく見せるためにグラブを外して素手で受けたり、大きさのあるバスケットボールなどで実戦したが、確かに両手を前に軽くそろえた方が柔らかさが出るのは明らかだった。

佐藤さんは現役時代から旧来の教え方に疑問を持ち、外国の選手の動きや日本人でも柔らかい動きをする選手を見るうちにこのことに気付いたと話してくれた。それまでのやり方、考え方を鵜呑みにせず、常に疑問を持って取り組むことの重要さがよく分かる捕球練習だった。

体の真ん中にグラブとボールを収める

転がしたボールを両手の力を抜いて柔らかく捕球する練習の後に行われたのは、その後の送球動作について。まずは前から軽く投げたボールを歩きながら捕球し、グラブを体の中心に収めてから投げるというものだった。

これも佐藤さんの解説によると、以前から日本で教えられていたものとは違うという。昔は捕球したらグラブを投げる方の手(右投げなら右手)の方に持ってくると教えられていたが、そうするとグラブを横に移動させる分だけ動きが大きくなり、投げる動きにもぶれが生じやすいというのだ。
そうではなく最も安定している体の中心にボールを受けたグラブを収め、そこからなるべく体の近くで腕を振ることで送球は自然と安定するようになる。

これはゴロを捕球してからの動きでも同様で、まずは佐藤さんのスクールに通う中高生が実演を見せたが、全員がグラブを柔らかく使って体の中心に収め、スムーズに送球動作に入っていた。

体の真ん中にグラブとボールを収めると腕を引く動きが小さくなる分、ボールの勢いが出せなくなるのでは? という疑問が出てくるが、そこでポイントになるのがステップと下半身の使い方だ。ゴロを捕球する前に一瞬の“間”を作り、そこから前に移動しながら捕球して送球動作に移ることによって、上半身の力を使わずにスムーズに速いボールが投げられるようになるという。

バッティングでもあらゆるボールに対応したり、遠くに飛ばしたりするのには“間”が重要だと言われるが、守備の動きでも同様のことが言えるだろう。

「レポートその3」ではフットワークの練習、トスの柔らかさを出すための練習などをお伝えする。

(取材・動画:西尾典文/写真:編集部)