主将として殻を破り、さらなる高みへ 森下暢仁(明治大4年)【Future Heroes Vol.3】
いつものように淡々とした口ぶりだが、その言葉一つひとつにかつてないほどの熱がこもっていた。
最速154キロのストレートにカットボール、カーブ、チェンジアップを投げ分け、今年のドラフト上位候補にも挙がる明治大のエース・森下暢仁。今季は主将として伝統校をあらゆる面で牽引していく覚悟だ。
★侍入りは既に3度
これまでの野球人生で、国内外問わず多くの経験を積んできた。大分県大分市に生まれ小学3年の頃から「周りのお兄ちゃんたち」と一緒に野球を始めた。大東中時代には全国大会に出場。
大分商では高校3年夏に大分大会準優勝で甲子園出場ならず(※)も、侍ジャパンU-18代表に選出されオコエ瑠偉(楽天)、清宮幸太郎(日本ハム)らとU-18W杯を戦い決勝まで駒を進めた。
※1年夏は甲子園でベンチ入りも出場機会なし。
そして明治大入学後も1年春から登板機会を掴むと、2・3年時には侍ジャパン大学代表として日米大学野球に2回出場し、ユニバーシアード、ハーレムベースボールウィークでは優勝に大きく貢献している。
その一方で歯がゆさが残るのが東京六大学リーグでの実績だ。リーグ戦通算9勝は、森下が1年時のエースで通算23勝を挙げた柳裕也(中日)ら過去の明治大のエースたちと比較すると物足りなく映る。また、昨年は春秋で通算7勝を挙げたものの、終盤に痛打されるケースが多く、4季続けて優勝を逃している。
★「主将になって大正解」
これまでを振り返り「まだまだな大学3年間です」と表情を変えずに森下は話す。
「1、2年は怪我が多くて、昨年は怪我なく1年間投げ抜けたのでそれは良かったと思います。でも、結果がすべての世界で終盤に打たれることが多かったので、そこは良くなかったです」
この冬はランメニューだけでなく内野手の特守にも連日入り下半身を強化。そこにはチームを引っ張る姿を見せる意味合いもあった。
「やっぱり自分だけのことじゃなくて、チーム全体をまとめないといけないので何事も率先してやらねばと思っています」
こうした姿勢に善波達也監督は「ここ数ヶ月の姿を見ると主将に任命して大正解でした。人への伝え方とか取り組む姿勢などすべてが本当に変わりました」と目を細め、賛辞を惜しまない。
今春の目標を森下は「リーグ戦優勝のためにエースとして1回戦は全部獲りたいです」と迷いなく言い切った。高い素質と豊富な経験を持ち合わせた森下が殻を破り、どんな姿を見せてくれるのか。春の開幕が待ち遠しい。
文・写真=高木遊