【高校球児のための大学野球部ガイド】東京学芸大学野球部キャプテン、マネージャーインタビュー

東京学芸大学野球部のレポート第二弾。前回は中野春樹監督にお話を伺いましたが、今回は飯出圭太郎キャプテン、白澤栄喜学生コーチ、そしてチームを支えるマネージャー村田奈央さん、志太祥子さんに東京学芸大学野球部、大学野球についてお話を伺いました。

キャプテン
飯出圭太郎(いいでけいたろう)4年 捕手 野沢北高出身 A類 社会科専攻
学生コーチ
白澤栄喜 (しらさわまさき)4年 秋田高出身 A類 数学科専攻

チームの中心であるキャプテンの飯出くんと学生コーチの白澤くん。チームの組織、学芸大野球部の特徴、チームの目標などを聞きました。

――まず学芸大野球部のモットー、方針のようなものがあれば教えてください。
白澤「去年の秋にようやく一部に上がったので、今年のチームはまず『一部で勝てる集団になる』ということをスローガンとして掲げています」

――そんな中で現在のチームの強みはどんなところですか?
飯出「まずは投手陣です。下級生のころから経験を積んできたピッチャーが4年生を中心に多くいるというのは強みだと思います」

白澤「新2年生になる選手たちも1年生からマウンドを任せられた投手が多いです。去年の秋も大量失点をするような場面はありませんでした」

――逆に今のチームの課題は何ですか?
飯出「攻撃力ですね。去年は4年生のレギュラーが多かったので、まだ野手は流動的なところが多いです」

――打撃練習前には全員でビジョントレーニングのようなこともしていましたが、あれはどういう経緯で取り入れたのですか?
飯出「バッティング班という担当があって、そのチーフがビジョントレーニングを指導している方と繋がって、一度練習に来ていただいて、みんなでいいなと思った部分を取り入れるようにしました」

飯出圭太郎キャプテン

――ちなみに班は他にどんな班がありますか?
白澤「バッティング以外では内野守備、外野守備、キャッチャー、ピッチャー、走塁、フィジカルとメンタルあわせたトレーニング班、データ班、広報です。兼務しているメンバーもいますけど、基本的に分散しているようにしています」

飯出「キャプテン、学生コーチ、マネージャー、主務などのスタッフはまた別で、全体にかかわるようになっています」

――そういう人事はどうやって決めるのですか?
白澤「新チームになった時に新4年生で話し合ってまずキャプテンを決めます。その後に自分(学生コーチ)と主務とキャプテンの3人で副キャプテンをどうするか決めて、最後に班の構成をどうするか4人で話し合って決めました」

――担当を決める中で揉めたりはしないですか?
白澤「希望がある選手はその意見も聞きながら、調整して決めるようにしました」

――ちなみに今年のキャプテンはどういう経緯で決まったのですか?
白澤「うちの大学は代々、言葉で引っ張るというよりも行動で示せる人がキャプテンになっていて、自分たちの学年ではプレーで去年から引っ張っていた飯出が満場一致という形で決まりました。下の学年に聞いても異論はなかったです」

――キャプテンは背中で引っ張れている感じですか?
飯出「がんばります(笑)」

――それぞれの班のチーフやスタッフはどれくらいの頻度で話し合ったりするのですか?
白澤「大体2週間に1回くらいなのですが、これから合宿や遠征があって、新入生も入ってくる今の時期は決めることも多いので、週1回は話し合っています」

――学生コーチは何人いるのですか?
白澤「2年生以上になると各学年1人ずつ選ぶようにしています。ただ自分の場合は最初から学生コーチ志望で入りました。選手をやりたい気持ちもあったのですが、高校の先輩で早稲田で学生コーチをされていたOBの方に色々と教わる機会があって、ちょっと他人とは違う立ち位置で野球に関わってみようと思って決めました」

白澤栄喜学生コーチ

――二人はなぜ東京学芸大を選んだのですか?
飯出「自分は1年浪人をしているのですが、現役の時は筑波大を受けました。国立で野球もちゃんとやっていて、教員にもなれるというのが理由で、最終的には学芸大を選びました」

白澤「自分は野球というよりもまず教員養成という観点で選びました。あとは地元にいるよりも、色んな人に出会えると思って学芸大にしました」

――学芸大の野球部のカラーはどんな感じですか?
飯出「やっぱり選手主体というのが一番大きいと思います。監督さんにもただ聞くのではなくて、自分たちで考えたうえで助言をいただくような関係性で取り組んでいますし、監督さんも自分たちのことを尊重して接してくれていると思います」

白澤「選手起用や采配についても学生コーチやスタッフから意見をして、最終的に監督さんが決めるという感じです」

――最後に現役の高校球児に大学野球をやることの良さ、メッセージなどがあればお願いします。
白澤「大学になると木製バットになって難易度も上がりますが、それだけレベルも高くなって、そんな中でも一生懸命考えながらできるというのが醍醐味ですね。特にうちの大学は学生主体、選手主体なので、考える機会も多くて、成長の場として良い環境だと思います」

飯出「高いレベルの野球に触れて野球の技術が身につくというのはもちろんなのですが、自分たちはボトムアップで、部員全員でレベルアップしようという方針でやっているので、白澤も言いましたけど人として成長できる機会があると思います。そういう環境で上を目指したい高校生とは是非一緒に野球をやりたいですね」

チームを支える女子マネージャー二人。ともに高校まではマネージャーではなかったそうですが、大学でマネージャーになった理由は対照的でした。

村田奈央(むらたなお)3年 室蘭栄高出身 A類 国語科専攻
志太祥子(しだしょうこ)2年 長岡大手高出身 A類 国語科専攻

――お二人は高校時代も野球部のマネージャーでしたか?
村田&志太「違いました(笑)」

――なぜ大学で野球部のマネージャーに?
志太「特に家族の誰かが野球をしていたわけではないのですが、小さい頃から野球が好きでよくテレビで野球を見ていました。好きだったのは高橋由伸さん(元巨人)です。ずっと野球に関わりたいと思っていたのですが、高校ではテニス部でした。大学に入ってやっと念願叶ったという感じです」

村田「私はそんなに野球が好きというわけではなかったのですが(笑)。もう一人いる同じ学科のマネージャーの子から一緒に行こうと言われて誘われたのがきっかけです。野球を見に行ったことくらいはありましたけど、サッカーよりは好きかな、という程度でした(笑)。高校の頃は陸上部だったので、最初の頃は自分も運動がしたくて仕方なかったですね」

――大学で初めてマネージャーになったわけですけど、やっていて大変なことはどんなことですか?
村田「(マネージャーの)人数がそんなに多くないので、仕事がたまってくるとこなすだけで大変です。あと高校までは自分が選手という立場だったのが、今度は選手をサポートする立場になって、色々と気配りをする必要性を感じることがあります」

志太「グラウンドの中の仕事だけではなくて、部の運営や連盟とのやりとりまでかかわるので、本当に仕事が多岐に渡っていてその点が大変だと感じます。4年生の男子マネージャーと女子マネージャーは本当に色んなことをこなしていて、いつも偉大だなと思っています」

村田「4年生の女子マネージャーの先輩は誰にも言われなくても、みんなが気づかないようなところまで目が行き届いていて、みんなが見ていないところで動いていて凄いです!」

志太「完璧です!」

村田「男子の主務を務められていた先輩は本当に“学芸野球部の顔”という感じで、外部の人と接していて、話をするのも上手くて、本当にすごい先輩二人です」

――逆にマネージャーをしていて楽しいこと、やりがいを感じることはどんなことですか?
村田「試合で特に同期が活躍してくれるとやっぱり嬉しいです」

志太「昨シーズンの秋に一部昇格した試合が一番心に残っています。部活をやる目的は色々あると思うのですが、やっぱり勝つためにみんなでやっているので、『このためにやっているんだな!」という気持ちになりました」

――二人とも将来は教員志望ですか?
村田&志太「はい」

――もし自分に男の子ができたら野球をやってほしいですか?
志太「私はやってほしいです(笑)」

――村田さんはそうでもない?
村田「そうですね(笑)。野球に限らずやりたいことをやってもらいたいです」

――村田さんはそこまで野球が好きではなくても続けられているのはなぜですか?
村田「どちらかというと人との関わりで、自分と関わった人たちが頑張っていて、結果を出そうとしているのを見ていると、そこにやりがいを感じます。それが大学では野球部のマネージャーという形だったということだと思います」

――二人から見て学芸大の野球部はこういうところがいいですというのはどんなところですか?
志太「学生主体で、練習や運営もほとんど学生がやっているところがいいところだと思います」

村田「下級生でも自分の意見を言う場があって、良い意味で上下関係がないです。あと秋に一部に昇格して、より高いレベルを目指してやっているところが良いところだと思います」

――最後に野球をやっている高校球児、女子マネージャーに対してメッセージをお願いします。
村田「マネージャーをやっていなかったら凄く楽ですけど、何もしなくてダメな学生生活だったと思います。マネージャーでもミーティングで意見を求められますし、部を運営していく中で本当に成長する機会が多くありました。学生生活を充実させるという意味でも、自分はマネージャーをやって良かったと思っています」

志太「野球部や学内だけでなく、他の大学の人との繋がりもできて、関係が広がったことが凄く良かったと思っています。大人の方とお話する機会もあって、まだまだなのですが、礼儀やマナーが身についたかなと思っています」(取材:西尾典文/写真:編集部)

「東京学芸大学野球部、選手座談会!」に続きます