【石岡一】甲子園初出場!公立高が強豪私学と互角に戦う術(後編)

今春のセンバツでは強豪盛岡大付(岩手)に対し、初出場ながら臆することなく戦った石岡一。野球部の4割が実習で野菜の栽培などを学ぶ園芸科、剪定(せんてい)技術などを学ぶ造園科の生徒だ。部員全員が揃いにくいというハンデを乗り越え、今回の21世紀枠に選出された。センバツの熱気冷め止まぬ、5月のグラウンドを訪れた。

効率性を重視したグループ練習と毎日の補食

石岡一の校舎はJR常磐線石岡駅から徒歩5分という好立地にある。水戸市から約30分、土浦市から約15分という利便性も良く、各学年8クラスと県立高としては生徒数も多い。野球部も3学年合わせて75人が在籍している。

だが、人数が多くなるということはその分スペースが必要になる。設備が整う私学と比べると、野球部に割かれたスペースは十分とは言えないかもしれない。普通科と造園科や園芸科の授業が終わる時間は異なるので、平日練習ではいくつかのグループに分かれ打撃や筋力強化などに取り組む。全員自宅からの通いの生徒であるため、練習時間は限られる。学年に関係なくグループを作り効率性を上げざるを得ない環境なのだ。

平日の16時半を過ぎたグラウンドでは、アップをそそくさと終えた選手たちが黙々とバッティング練習を行っていた。他にもグラウンドの脇ではティーバッティングや筋力強化、体育館の端ではゴザを敷いて体幹トレーニング。投手陣は取材当日陸上部がオフということもあり、陸上競技場を借りて走り込みを行い、ローテーションに分かれてブルペンで投げ込みをする。

声出しをする選手はほぼいない。「特に現3年生はおとなしい性格の子が多いです」と林部長が語るように、グラウンドでは大学野球のように、各グループ淡々とメニューをこなす姿が印象的であった。また、後輩たちは先輩に萎縮することなく「ここを鍛えるためにはどうすればいいですか?」「ちょっとフォームを見てください」と積極的に話しかけけていた。そんな光景を見ると、チームの風通しの良さを感じた。

辺りが暗くなり始めると、マネージャーがお椀山盛りの卵かけご飯を選手に振舞う。川井監督が赴任してから始めた食トレの効果は絶大なようで、今では強豪私学の選手と比べても肉体面で劣ることはない。

無失策を目指す守備練習

日が落ち始めた18時頃。職員会議を終えた川井監督がグラウンドに降りてきた。ナイターの照明が点灯し、バッティング練習の鳥カゴを片付けられると、内野手のノック練習に移る。指導者が2人しかいないため、ノックを打つのは選手だ。スローなテンポで行われるが、川井監督が選手一人ひとりのプレーを見てアドバイスを送る。

簡単なゴロだからこそ、足の運び方やスローイング動作を丁寧に行わなければいけない。現役時代は2年生ながら竜ケ崎第一の正ショートとして、甲子園であの松井秀喜氏と対戦経験のある川井監督。選手に身振り手振りで教える姿はまさに内野手のお手本である。

全体のノックが終わった後に、動きが気になった選手とマンツーマン指導することもしばしば。チームは昨秋の県大会でも、センバツでもエラーが失点に繋がってしまった。『無失策』を目指すチームにとって守備力強化は夏までの最重要課題なのかもしれない。

技術と体力を養うハードな走塁練習

カラダづくりに専念する1年生は早めに解散となり、練習の最後は走塁練習となった。一塁から二塁まで最短で走るよう川井監督がベース付近ギリギリに立ち、選手の走り方をチェックする。ベースを踏むのではなく、ベースに触れる感覚と、二塁ベースに向かうまでの理想的な角度を覚える。(練習後半は白線を引き、わかりやすくレクチャー)

この練習は走塁だけではなく体力強化も兼ねている。動画をよく見るとわかるが、走り終わった後にすぐさま腹筋や腕立のトレーニングが課されている。選手は時にうめき声をあげながら自分の身体に鞭を打っていた。

最後は二塁ベース上でのシャッフル練習。シャッフルとは足を交差させず横に進むサイドステップのことである。第2リードを取る時やオーバーランをしてスピードを緩めながらストップする時に使う走塁技術だ。シャッフルのポイントはバッターのインパクトのタイミングに着地を合わせること。

川井監督の手拍子に上手く合わせてスタートを切る。地味な練習だが、スタートの反応を良くすることができれば半歩、1歩の差が試合で如実に表れる。リズムが合わず良いスタートを切れるまで続く。

追い込み期間ということもあり、練習が終わったのは20時頃。川井監督が夏までに鍛える「心の粘り」が満載のハードな練習メニューだった。(取材・撮影:細川良介)