【高校球児のための大学野球部ガイド】日体大硬式野球部・辻コーチインタビュー

昨年は2人の投手がドラフト会議で上位指名を受け、今年のチームも主戦である北山比呂投手、吉田大喜投手がドラフト候補として注目を集めている。 そんな日体大の投手陣を指導する辻孟彦コーチに高校球児に向けてお話を聞きました。

高校時代の実績は考えずに見ている

ーー昨年ドラフトで指名された松本投手(西武)、東妻投手(ロッテ)、今年ドラフト候補の北山投手、吉田投手と近年好投手がどんどん出てきていますが、辻コーチが大学生を指導されている中で大事にしていることはどんなところですか?
辻「高校野球はまずみんな甲子園という目標に向かってやっているじゃないですか。大学野球ももちろんリーグ優勝、日本一という目標はありますけど、それだけじゃなくて個人それぞれがどう成長するかということをより考えるべきだと思うんですよね。それに2年生になれば20歳にもなって大人になる。大人である以上、自分をしっかり確立しないといけないし、自分で自分の責任を取らないといけない。だから自分でやるべきことを考えて、自分で練習をして、自分で伸びなさいという話はしていますね。
あと1対1の会話も大事にしています。ちゃんと自分の良さ、課題を僕に伝えられるようにしなさいと。高校生までは監督やコーチの話を聞くことが中心ですけど、対話をしながら成長していくのが大学生だと思います」
 
ーー高校生をスカウティングする役割もあるとのことですが、辻さんが投手を見られるときにどういうところを注意して見られていますか?
辻「まず高校の時点での実績は考えずに見るようにしています。所属しているチーム、背番号も考えずに真っ白なユニフォームだと思って見ます。自分が高校で実績がなかったからかもしれませんね。既にプロに行けるようなレベルに達していて、本人もプロに行きたいということであれば無理に声をかけることはしません。次にいいところを見るようにしています。色んな方と話していても欠点の話が多いんですよ。でも大学は成長できる場所ですから、それが直ればもっと良くなるわけじゃないですか」
 
ーーコーチとして指導するうえでもまずは良さに目を向けますか?
辻「そうですね。その選手の良いところを伸ばすためには、ここを直した方がいいよね、というアプローチです。ここがだめ、あそこがだめと言ってその欠点を直したとしても、良いところが伸びてなかったら成長しているとは言えないじゃないですか。良いところだからこそその子の軸としてもらいたいというのもあります。意外に本人も自分の良さに気づいてないんですよね。
北山(比呂)なんかエースじゃなかったこともあって自信がなさそうだったんですけど、高校時代にうちと練習試合で投げた時から凄くいいものを持っていました。あと選手も自分の長所を伸ばそうというとモチベーションも上がりやすいんですね。得意なことを更に伸ばそうとするわけですから。だから入ってきた選手にはまずその選手の良いところを言うようにしています。自分の良さを本人が知るところからがスタートですね」

自分の目標の芯となる部分を持つことが大事

ーーご自身の中日でのプロ生活は3年間と短かったですが、選手としての未練はありませんでしたか?
辻「(引退する前に)社会人からも声をかけていただきましたし、正直かなり悩みました。怪我が原因ではなくまだ普通に投げられていましたから。でもこの投げられる状態で大学生を指導するというのは強みだなと思ったんですね。昨日も遠投してたんですけど、やっぱり難しいなとか自分でも感じられるので(笑)。選手と同じ立場で考えて、悩めるというのはありますね」

ーーTwitterで色んな選手からの質問なんかも受け付けていらっしゃるのを拝見しましたが、あれはご自身からやろうと思って始められたんですか?
辻「色んな意見があると思いますけど、僕はみんなで教え合って、みんなで上手くなればいいと思うんですよね。高校野球ではなかなか難しいと思いますけど、大学ってそういう役割もあると思うんです。だから高校生でも他の大学の選手でもどんどん聞きたいことがあれば聞いてくださいということでやっています。結構多く動画が送られてきて、こっちも勉強になって面白いですよ」

ーー最後に現役の高校球児に対して大学野球の良さ、大学で野球を続けるうえでのアドバイスなどがあればお願いします。
辻「高校野球ってどうしても短いですし、さっきも言いましたけど甲子園という目標が大きいじゃないですか。だから短期間で成果を出さないといけない難しさがある。でも大学野球は期間も長いですし、自分で考えて練習できる時間も長いと思うんですね。だからこそ自分の目標の芯となる部分を持つことが大事じゃないでしょうか。そういう芯がある子はこちらが何か言わなくても自分で取り組みますし、伸びます。せっかく大学まで野球をやろうという気持ちがあるなら、ぜひそういう目標の芯を持ってやってもらいたいですね」(取材:西尾典文/写真:編集部)