【大阪桐蔭】再び頂点を目指す!オフ期間の取り組みとトレーニング
大阪桐蔭はきっと豪華な施設があり、他にはないすごいトレーニングをしているに違いない。 世間的には、ほとんどの人はそう思っているのかもしれない。だが、実は大阪桐蔭の室内練習場は縦25m×横12mほどの大きさで、全員が入って一斉に体を動かすことは不可能な広さだ。そのうえ、豪華なトレーニング器具がたくさん置かれている訳でもない。そんな大阪桐蔭のオフ期間の練習、トレーニングを取材した。
練習メニューはいたってシンプル。かつ、地道にコツコツと重ねる内容となっている。
取材に訪れた日はちょうどテストが終わり、朝から練習を行う日だった。9時からランニングを開始し、アップ後にまず3000m走で選手らは汗を流した。
「普段、ウチはあまり長距離を走りません。冬の練習は土台作りみたいなもの。テーマとしては個々のレベルアップという感じになります」。
西谷浩一監督は、冬の練習を“競争の時期”と位置付ける。
「ウチは今、40人ほどの部員がいます。秋の大阪大会は20人がベンチ入りして、どうしても公式戦期間中は20人の練習がメインになるんです。メンバー外の子らも練習はしていますが、メンバー入りの選手優先になるので、公式戦が終われば、秋に練習できなかった子も含めて、ベンチ入り、ベンチ外関係なく、横一線で競争させるんです」(西谷監督)。
明治神宮大会に出場した場合はまたスケジュールは変わるが、11月上旬には近畿大会が終わる。その途端に大阪桐蔭は毎年恒例の対外試合ラッシュが始まるのだ。
「例えば、去年の秋だと(公式戦全てを終えた)11月5日から(対外試合可能な)30日までの間に24試合を行いました。学校が終わってからの平日も含めてです。近くの学校さんに試合をお願いしたり、チームを2つに分けて1日に2試合することもあります」。
そうやって対外試合をこなしていくと、新たな気づきも生まれる。日々の練習の中に埋もれていて、試合をしながら成長し一気に伸びた1年生も過去には多く、チームの活性化にも繋がる。
12月に入ると野球界はシーズンオフになる。その対外試合を踏まえて、冬はどう過ごしていくのか、個々それぞれの課題が明確になっているはずだ。
「冬に関しては個の強化。個の強化ができないとチームがこじんまりとしてしまうので。今はチームのことは考えなくていい。そういう気持ちで冬の練習に入ります」(西谷監督)。
今年に関して言うと、昨季1年間は春も夏も甲子園に出られず、悔しさしかなかった。その悔しさに直に触れている1、2年生が何を感じているかだ。その上での競争は、例年以上に激しくなるかもしれない。
「誰がレギュラーになるのか楽しみですね。誰がスタメンになるのか、その試合の時の調子によって変わります。今年は特に確定している選手が少ないです。毎年チームのカラーが違うので、毎年チームに足りないものが何かを考えながら冬の練習メニューを考えますが、今年のチームは走力が足りないので、走塁練習に重きを置いてはいます」。
この日は3000m走後、ノック、ケースノックを行い、個々の守備の課題に向けての個人練習に選手は励んだ。その後、フリーバッティングなどを行い、グループを二つに分けてのトレーニングが始まる。
その、トレーニングのひとつが「TRXトレーニング」だ。実はこの冬から大阪桐蔭で導入されたもので、ウエイトトレーニングだけではなくて可動域を広げたり、関節などの柔らかさを取り入れることができるトレーニングだ。特殊な器具は使わず、チューブやロープなどを使う。普段はピッチャーがやることが多いが、この時期は時間を割って全員が参加している。
「トレーニングでベンチプレスを上げてガンガン筋力をつけるのではなく、すべてを野球に繋げないといけないので、トレーニングもバランスが大事。体の上下のバランスなど個別性を出すようにしています」と西谷監督。新しいことにもどんどんチャレンジしながら、令和の時代も新たな伝統を築いていく。(取材・文/写真:沢井史)