【キャプテンに聞きました】大阪桐蔭｜薮井キャプテン「心で野球ができるチームになるのが目標」

今年の大阪桐蔭のキャプテンを務めるのが、昨秋は背番号が２ケタだった薮井駿之裕主将。「ずっと大阪桐蔭に憧れていたんです」と話す、地元・大阪府摂津市出身のキャプテンは、昨秋は主にベンチから試合を見つめてきた。そんなキャプテンに話を聞いた。

先輩・根尾からのアドバイス

入学した頃は、周りの同級生が全国大会や日本代表など名前を知られているような選手ばかりで圧倒された。
「自分がどれだけ食らいついていけるかだと思った。この３年間は死ぬ気でやるしかない」。
まず、周りを見るようにした。そして自分が実際に何をできるかを考え、いいと思ったことはどんどん試して取り入れられるものは取り入れた。

何よりのお手本は当時の３年生だった。入学して２週間、ポジションが同じだった根尾（昂＝現中日）にどうしても聞きたいことがあった。
「シート打撃で守らせてもらっていた時、高校に入学したばかりだったので高校生の打球に追いつけなかったんです。どうやったら追いつけるようになるのか尋ねました」。

すると、根尾から言われたのは、小、中学時代から指導者に言われていたことと同じだった。

「１歩目を大事にすること」

頭で理解できても、体で表現することはなかなか難しい。
「だから、まずは先輩の動きを目で見て勉強しました」

１年秋からは本格的にメンバー入りへの争いが始まり、気持ちだけでは負けないようにした。試合では初球から積極的に振った。練習は早い時は５時くらいから朝練に出て、回数をきちんと決めてバットを振り続けた。自分を追い込み、激しい競争を勝ち抜こうと努めたが、なかなか結果に結びつかない。
「自分はあまりうまくない。ミスも多いんですけれど、どれだけちゃんと切り替えられるか。早く切り替えないと置いていかれると必死でした」

昨夏、大阪大会の準々決勝で敗れた後、キャプテンに指名された。
「このチームは夏までの経験者が多いのに自分でいいのかと思いました。ただ、プレーで引っ張れる選手はたくさんいるので、自分はそれ以外の部分で引っ張れたら」
と主将としてやり抜くことを覚悟した。

プレー以外の部分でどれだけチームの役に立てるか

グラウンドに来るのはいつも１番。食事では嫌いなものをちゃんと食べる。整理整頓や片付けなど、人として当たり前のことは当たり前のようにこなした。
「チーム全体で盛り上げる選手が少ないので、自分が盛り上げ役になること、プレー以外の部分でどれだけチームの役に立てるかだと思いました。自分たちの学年は23人いて23通りの考えがある。全員の考えを反映させることはできないので、副キャプテンを務める数人の選手に自分の考えを伝えて、そこから徐々にチームに浸透させるようにしました」。

大阪桐蔭はミーティングをこまめに行いながらチーム作りを進めるが、学年ごとのミーティングも行う。３年生だけのミーティングでは、試合経験がある者が積極的に話し、色んな意見がある中でどれをチームに取り入れるべきかを考えて、自分がチーム全体に伝えるようにしている。大会になるとそのミーティングの頻度は３日に１度。副キャプテンとのミーティングは毎日行い、意見交換をしている。

ただ、昨秋の戦いはチームとして悔しさしか残らなかった。
「日本一を目指していたのに最後に負けた試合（近畿大会決勝・天理戦）は点差が開いて不甲斐なさを感じました。夏の経験のある者が、あの悔しさをどう生かすかがテーマだったのに…。その悔しさが薄れていったんじゃないかと西谷先生に言われました」。

ミスをしてもどれだけ自分に厳しくできるか。ポジションごとで話し合いを重ねた課題だ。そのため、冬の練習ではノックでもバッティングでも“粘り”にこだわる。
「アウトになる時でも簡単に終わってしまうことが秋は多かったので、粘り強さをどこまで発揮できるか。この冬はプレーでの心の粘りをつけたいです。心で野球ができるチームになるのが目標です」。
薮井主将の生き生きとした姿が、チームに活力を与え、そして大阪桐蔭をどう変貌させていくのか。秋からスケールアップした姿を春に披露するために、今日も薮井主将を筆頭にナインは厳しい練習に向き合っている。（取材・文・写真／沢井史）