【準硬式】教えて準硬式野球!日大の選手、コーチに聞きました!(後編)

日本大学準硬式野球部の杉山智広コーチ、井上絢一朗選手へのインタビュー後編です。前編では準硬式を選んだ理由、硬式とのプレーの違い、普段のスケジュールについて聞きましたが、後編では更に踏み込んだ話をお届けします。

細かい話ですが、日本大学の場合、厳密に言うと準硬式野球部は体育会ではなく違う組織に属しているそうです。

杉山「自分が選手だった頃は準硬式野球部も体育会に所属していて、選手のための寮もありました。それが平成24年に体育会から大学本部の学生部に移管されまして、そちらの公認団体という形に変わりました。そこからスポーツ推薦の制度もなくなりましたし、大学の寮からも出ないといけなくなったんですね。外部企業が運営している学生寮を推奨はしているんですけど、そこではなくてアパートを借りている学生も多いです」

井上「自分も最初はその寮に住んでいましたけど、2年生になった時に出ました。自分のように地方から出てきている学生は最初の1年は住んで、2年目からは自分で部屋を借りるということが多いですね」

杉山「今度の4月に入部予定の1年生を加えると部員数は80人を超える予定です。推薦はなくなりましたけど、幸いなことに日大は付属、系列の高校が多いので半分くらいはそこから来てくれます。ただ、最初から準硬式を目指してというケースは少ないので、同じ高校の先輩、後輩の繋がりで話をして知ってもらうということを地道にやっています」

日本大学準硬式野球部の杉山智広コーチ。高校時代は日大三でキャプテンとして甲子園優勝を経験

大学の硬式野球部の場合、春と秋にリーグ戦があり、春は全日本大学選手権、秋は明治神宮野球大会への出場を目指すという形になっています。一方の準硬式はどのような仕組みになっているのでしょうか?

杉山「準硬式も春と秋にリーグ戦があるのは硬式と同じです。関東ではリーグが5つあるんですが、リーグ戦の上位2位に入った10チームと関東選手権の11チームがプレーオフを行って、勝ち抜いた5チームが夏に行われる全国大会(全日本大学準硬式野球選手権)の出場権を得られます。それとは別に春のリーグ戦が始まる前に関東にある約70チームが一部、二部関係なく出場する関東選手権というのがあります。この関東選手権に優勝したチームも全国大会に出場できるんですね。だから関東からは合計6チームが全国大会に出られることになります。秋はリーグ戦で上位に入っても全国大会はないのですが、関東の社会人準硬式チームの上位と争う大会があり、その優勝を目指す形ですね」リーグ戦や全国大会は伝統もあり、形式も決まっているが、試合方式についても柔軟に考えられる点も硬式とは違いがあるそうです。

杉山「今年で始めて3年目になる新人戦に関しては我々連盟の理事が学生に自由にやっていいよという形で任せて、井上はその実行委員長なんですね。もちろん何でもOKではなくて、学生から上がってきた企画を確認はします」

井上「昨年までの二回の大会はトーナメント方式でしたが学生が取ったアンケートを見ると出場機会が少ないと言った声が多くありその声に応えようと実行委員同士で話し合いを重ね第3回大会は方針を変える方向です。12チームを4チーム×3グループに分けてリーグ戦をやれば、最低3試合はできるので今年からそうする予定です!」

杉山「スポンサー企業もついてもらっています。また、その企業の方がうちの練習を見た時にこれだけ部員が多くて、高校時代にもレギュラーじゃなかった選手がいる中で、試合に出られない選手が多いのはよくないんじゃないかという声もありましたね。6月にやるんですけど、入学したばかりの1年生にもチャンスを与えるという意味で良い機会だと思いますね」

井上「運営する側に回って大変なことが多いですが野球の技術では学べない多くのことを学ぶことができています」

お話を聞かせてくれた井上絢一朗選手(新3年・捕手・佐賀商)

ちなみに全日本大学準硬式野球連盟は硬式の大学野球連盟とは全く別組織であり、学生野球憲章の縛りを受けることもないそうです。プロ・アマの縛りもなく、現役のプロ野球選手や指導者が教えることもルール的には可能なんですね。
そんな環境だからこそできることを杉山コーチは考えて実際に実行しています。近年は東都大学準硬式野球連盟としてインドネシアに遠征して野球教室も実施。更に夢は膨らんでいるそうです。

杉山「今も全国の準硬式野球部の部員は約1万人いるんですね。結構な数ですけど、まだまだできることはありますし、常にやりたいことを考えています。今、全国大会は各地区で持ち回りなんですけどこれを甲子園でやれないかと思っているんですよ。それを連盟に提案しました。これが実現すれば高校で甲子園に出られなかった子たちの意識も準硬式に向く確率は上がりますからね。いつか実現させたいと思っています」

最後に硬式という選択肢もある中で、準硬式を選んで良かったこと、また準硬式野球部ならではの魅力について聞きました。

杉山「準硬式の場合、ほとんどの大学は監督、コーチはいても普段の練習は学生だけでやっています。そういう意味では学生が自分たちでチームを作り上げることができる部分が多いと思います。キャプテンが社長、副キャプテンが常務や専務、総務が経理みたいな感じで会社を経営するのと近いところはありますね。高校野球や環境が整っている硬式の大学野球では経験できない、自分たちで組織を作っていくことができる。
日大の場合は、そういう経験もしながら野球でも日本一を目指せるというのは大きいと思いますね。正直野球のプレー面で大きく変わることはないです。ただ今言ったようなことに魅力を感じられる学生はぜひ準硬式も考えてもらいたいですね」

井上「杉山さんの話にもありましたけど、監督、コーチに言われてやるのではなく、自分たちで考えてチームを作れる、その中で日本一を目指せるというのは大きいと思います。高校時代に目指して届かなかった全国大会、日本一を自分たちの力で叶える。それが今の目標ですね」

まだまだ一般的な認知は低い準硬式野球部ですが、二人の話からはそういう状況の中で何とか準硬式を広げようという強い意欲がヒシヒシと感じられました。二人のような指導者、部員が増えていけば大学で野球を続けようと考えている高校球児の選択肢として、準硬式が今よりもメジャーになる日も近いのではないでしょうか。

(取材・文:西尾典文/写真:編集部)