【柴田】こうして僕らは強くなった! 東北大会準優勝を勝ち取った練習初公開
昨秋、創部初の東北大会準優勝を果たした柴田。その快挙の裏側には、悲願の甲子園出 場を目指し、質と量にこだわりながら行ってきた練習があった。ある日の練習は、午前中は近くにある仙台大学室内練習場で基礎トレーニング、パーツ練習を行い、午後は山道でのダッシュが行われた。動画とともに冬トレの全貌を紹介していく。
(1)9:00〜 ラダー
全体練習の最初はラダーを使ってのアジリティ(俊敏性)トレーニングから始まる。クイックステップ、クロスステップ、バックスラローム、両足ジャンプなど10種類以上のメニューを行う。
(2)9:30〜 盗塁のスタート練習
アジリティーが終わるとすぐに盗塁のスタート練習に移る。投手を1人置き、セットポジションで投げる投手の足の動きを見て、重心のかけ方や1歩目の速さを反復する。ここまでが柴田流のウォーミングアップ。盗塁の練習を入れる意図は「体を温めるだけではもったいない」から。体育教師でもある平塚誠監督のセレクト。
(3)10:40〜 キャッチボール
上から投げるだけでなく、サイドスロー、アンダースロー、早投げなど。いろいろな腕の角度から相手の胸に目がけて投げる。野手のスローイングを想定したキャッチボール。この後、野手と投手に分かれる。
(4-1)10:50〜 バッティング&ティーバッティング(野手)
手投げで4カ所、13mの近さから投げたボールを打つ。ティーは内角、外角に投げてもらい芯に当てる意識を身に付ける。
(4-2)10:50〜 キャッチボール、遠投(投手)
下半身を意識して、8割くらいの力で正確なボールを相手に投げる。
(5)11:20〜 守備練習
グローブを立ててショートバウンドで捕球するなど、低い重心での捕球を約40分行う。
(6)12:00〜 盗塁練習
約3キロ離れた学校までランニングし自校グラウンドへ。ベースを置いて、3カ所で再び盗塁練習。本塁へのスライディング練習も。
(7)13:00〜 昼食
(8)13:45〜 山道トレーニング
小雪が降る中、学校から4キロ離れた上野山のレジャー施設「太陽の村」までランニング。標高270メートルの山道をダッシュで駆け上がる。舗装されていない土の道を蛇行しながら登り、計12本。「最初は5本も登れなかったが、声を掛け合って励まし合いながら、15本近く登れるようになりました」(平塚監督)。雪で滑りやすくなっているところを避けながら、明るさを失わず、最後まで笑顔でフィニッシュ。学校までは再びランニングで帰る。
(9)16:00〜 選手ミーティング
終了後、解散。
雪の中の山道トレ。風土に合わせたパーツ練習「自主的に考え、量が質を生むような練習を」

柴田のウォーミングアップには、必ず盗塁練習が含まれている。0.1秒でも速くスタートが切れるように、と目と身体に感覚を染み込ませているという。「ピッチャーの癖を読むのも慣れが必要ですからね」と平塚監督。足の速い選手だけでなく、全員が先の塁を貪欲に狙う意識が徹底されていた。キャッチボールや、守備の捕球練習についても、様々な体勢から正確なボールが投げられるような練習が行われていた。実戦を想定した動きを身に付けさせたいという平塚監督のこだわりが随所に見えるパーツ練習だった。
短時間練習がフィーチャーされる昨今だが、柴田の練習は決して短くない。「投げる、打つ、捕るーー。野球というスポーツは、練習量でうまくなるスポーツだと思うんですよね。量が質を上げるといいましょうか。長距離走にしても、時期を決めてやることが必要だと私は思っているんです」と平塚監督。それでも「やらされている練習」にはならないよう、この日の山道トレーニングは選手たちに何本走るかを決めさせた。「12本で行きましょう!」。遠藤瑠祐玖主将(2年)やムードメーカーの市川爽(2年)が率先して声を出す。強い代は自主性も高い。東北大会を経て、練習に対する意識がより高まったという。
平塚監督から「こんな古風な(山道)練習をしているところ、他にありますか?」と聞かれた。東北の冬は長く、寒い。練習では雪や凍結との共存が常だ。日の入りも早く、あっという間に暗くなる。だが、そんな厳しい風土の中で、互いに声を掛け合いながら行われる練習を見ていて、都会にはできない良さもあるなと感じた。これも高校野球の魅力だろう。「東北大会では試合に出てない子が、試合に出ている子の力を引き出した。そういうところがこのチームの強みなんだよね」。人生で壁にぶつかったとき、仲間と走ったこの山道トレを思い出してほしいと思った。
新型コロナウイルス感染症の影響で、今年の冬練習は例年通りとはいかないが、身体から湯気を出しながら走る選手を見て感じたのは「公立の柴田が東北大会で準優勝したのは、運だけではない」と言うことだ。努力に裏付けされた、質の高い練習があったからだ。「練習は嘘つかない」。平塚監督は令和の時代も、この言葉を大切にしている。
リポート第3回 谷木亮太投手インタビュー&選手座談会 に続く
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