『監督からのラストレター』天理高校/中村良二監督

甲子園を目指してひたすら頑張ってきた3年生たちをそばで見てきたからこそ、2020年の大会中止を告げる際、涙もろい中村監督は込み上げてくるものを抑えることができなかった。しかし、3年生たちは憧れの舞台がなくなっても独自大会を全力でプレーした。そんな彼らの姿はまさに「万里一空」だった。(書籍『監督からのラストレター』から引用)

万里一空!やり切った君たちに幸あれ

万里一空……目的、目標、やるべき事を見失わずに励み、頑張り続ける事。
2020年のようなシーズンは誰もが想像もしていなかったですね。高校野球の長い歴史でもありませんでした。

憧れの甲子園球場でプレーする事を夢見て、高校入学時から沢山の事を犠牲にし、ただひたすら夢の舞台「甲子園」でプレーする為に頑張ってきた3年生。私たち指導者はそんな頑張りをずっと傍で見てきたからこそ、君たちの言葉では言い表せない想いが伝わっていました。しかしこれも現実。オリンピックが延期となり、日本、いや世界中のスポーツ競技ができなくなりました。

勝敗を決せず、夢の舞台「甲子園」を諦めないといけない想いは計り知れません。
でも夏の代替試合が全国で開催され一生懸命にプレーする君たちはいつもの君たちでした。まさに「万里一空」!

私の持論ですが「苦しい環境でこそ人は育つ」と考えています。2020年はまさに「苦しい環境」でした。だからこそ「育つ」、「強くなれるチャンス」です。これまでとは全く違う生活様式の中、前向きに捉えれば物の見方も考え方も変えられる。

今までと違う事にもチャレンジできる環境を自然が作ってくれました。
最後までやり切った3年生諸君は様々な成長の中、特に精神面が強くなっているように思います。人は苦労した分、幸せが訪れます。苦労ばかりではありません。苦労した経験を糧にし、これからは幸せが訪れるように頑張ってください。そして「周りの人から同情される自分」ではなく「周りの人が応援したくなる自分」になってください。

これからの人生、まだまだ続きます。自分自身が人生の主人公です。悔いのない人生に、そして幸せな人生にしてください。

天理高校
硬式野球部監督 中村良二

※書籍の内容と一部異なる場合があります

天理高校

1900年創立、01年野球部創部。春は97年、夏は86年、90年と日本一3回を誇る強豪。ラグビー、柔道なども全国レベルで五輪メダリストも多い。主なOBに西浦直亨(ヤクルト)、中村奨吾(ロッテ)、太田椋(オリックス)など。