準硬式がSDGs参加。3000人で取り組む「古グローブ」の再利用

「準硬式からSDGsの意識を拡げよう」。2030年までの国際共通目標であるSDGs(継続可能な開発目標)に、準硬式が積極参加する。自宅に眠っている野球グローブの再利用をフックに、国連サミットが掲げる17の目標に意識をつなげようという試みだ。文武両道を掲げる学生たちが、野球の向上と社会貢献の両輪で準硬式を盛り上げる。

SDGs(エスディージーズ)の取り組みが野球界に広がっている。東京六大学連盟(硬式)の少年少女野球教室や、バットフォーエバー(アオダモ保護活動)、新潟地区学童軟式野球大会のポリオワクチン寄付などがその例だ。関東地区大学準硬式連盟でも2日、学生が主体となった活動を行うと発表した。第一弾は「使わなくなったグローブの回収と再利用」。加盟73校、約3000人の部員に呼びかける。


再生されたグローブを手に使い心地を確認する学生委員長の梅田智司さん(創価大・3年)。

広報委員長の小柳あい花さん(専修大・4年)は「文武両道を目指す準硬式野球部がSDGsに参加するということは、学生たちの主体性を養う意味でとても貴重な機会だと思います。所属する大学の選手から責任をもってグローブを回収し、未来のプレーヤーに新たな思いをもって繋いで行けるように責任をもって活動していきたいと思います」と意欲を語る。


「文武両道」を理念に掲げる準硬式野球。4年間の大学野球の中で社会貢献も同時に行っていく。

■再生されたグローブは途上国支援や、子どもたちに活用

深刻化している子どもの野球離れ。「野球はお金がかかるもの」というイメージが拭えないところも原因の一つだ。牛革の高騰で野球グローブの価格が値上がりしている実情もある。「使えない・使わなくなった」グローブを選手から回収し、修理してよみがえらせ、トライアルで野球を始めたい子どもに提供したり、野球物資が不足している途上国へ送ってはどうか? そんな声が学生の中から挙がった。


アメリカで作られた合皮グローブ。環境問題、動物愛護の観点から、世界で研究が進んでいる。

この思いに賛同したのが、東京・大田区でグローブの再生事業を行っている「グローバルポーターズ株式会社」だ。修理業18年の経験を持つ代表取締の米沢谷(よねざわや)友広さんが学生と連携して、2030年までに1000個のグローブを再生させることを目標に掲げた。元高校球児でもある米沢谷さんは「選手にとって、思い入れのあるグローブは捨てることができず、眠ったままになっていることが多い。連盟からお話を聞き、知名度がまだ低い準硬式の学生と一緒に活動していきたいと思いました」と話す。同社は合皮を使った代替グローブの開発も同時に行っており、環境問題、リサイクル活動を長期的に努めていく予定だ。関東連盟では今後、金属バットの再利用についても考えていく。野球の魅力と価値をSDGsの観点から変革し、拡げていく。
(取材・文/樫本ゆき)