【千葉聾】失われたナツタイ代替試合は指導者VS選手!汗と涙のガチ対決
今夏、タイムリーではナツタイに向けて頑張る千葉聾学校野球部の姿を密着レポートしてきた。しかしながら、目指してきた「関東聾学校野球大会」が、新型コロナウイルス感染症の急激な拡大を受け開催4日前に急遽中止に。監督たちは悲嘆にくれながらも「このままでは終われない」とユニークな晴れ舞台を用意した。
悪夢の大会中止……。しかし監督たちは諦めなかった。
新型コロナウイルス感染症が急激に感染拡大するなか、悲しい知らせが届いた。
今夏、タイムリーで密着取材を行っていた千葉聾学校野球部の藤田監督からだ。
「8月2日から行われる予定だった“第70回創立記念関東聾学校野球大会”が本日正式に中止となりました。非常に残念な知らせに、私自身めずらしく凹んでおります」。
日焼け顔で部員を明るく情熱的に指導する藤田監督、チャーミングなキャラクターで愛されるキャプテンとしてチームを引っ張ってきた3年生の大土優凪選手の顔がパッと浮かんで胸が締め付けられる。
しかしながら、先生方は諦めなかった。
6年間野球を頑張ってきた大土選手の晴れ舞台として、本来ならば大会初日の予定だった8月2日にゼットエーボールパークで「千葉聾学校大会〜絆試合〜」を行うことにしたのだ。
「現役選手VS現役顧問のガチンコ対決です。私藤田も投手として出場し本気で完封しようと思っています」。
最後は恩師と勝負だなんて、なんともワクワクする企画ではないか。
野球部以外の職員もサポートに入り、学校をあげて開催されたこの大会は、平日にもかかわらず多くの保護者とOBが駆け付け、本校職員も裏方の仕事やスタンドから応援するなど、最高の雰囲気で行われた。駆け足ではあるが、写真とともに、大会の様子をお伝えしよう。
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指導者チームの先発は藤田監督。初回はテンポ良く三者凡退に抑える。
選手チームの先発は丹野選手。0アウト2、3塁のピンチを招くもクリーンナップを抑え無失点で切り抜ける。

先制点は2回、選手チーム。四番大内選手が放った打球は左中間を破り、ランニングホームランとなり先制。
指導者チームも、4本の長短打を放ち2回に5点を挙げる。その後も試合を優勢にすすめ、5回が終わって9-1と差を広げる。

6回から藤田監督が選手チームの監督として指揮をとる。選手チームは歯車がかみ合うようになり、息を吹き返す。7、8、9回で8点を取り、追い上げをみせる。

最終回、本大会で引退する「大土まで回そう!」と声を掛け合い、2アウトランナーなしから4本の長短打を含む驚異の5連続出塁。
あと一人で大土選手というところまで回ると、ベンチとスタンドは大盛り上がり。しかしながら、最後のバッター2アウト3-2から空振り三振で試合終了。大土選手はネクストバッターズサークルで涙を見せた。

試合後は全員で手話をつけながら校歌斉唱。
監督からのラストメッセージ
最後に、代替試合直前の7月31日に行われた決起集会での藤田監督の挨拶の言葉を「監督からのラストメッセージ」としてここに残しておこう。

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おととい届いた「関東聾大会中止」のお知らせ。
覚悟はしていたものの、とてもショックでした。
昨年の9月。新チームが始まったとき、大土キャプテンに伝えたこと。
それは「逃げる言い訳を作るな。覚悟を決めろ。」でした。その言葉を大土キャプテンは信じてくれて、チームは急成長していきました。いまのチームは間違いなく優勝を狙える「戦う集団」となりました。優凪、今のチームを作ってくれてありがとう。
今のチームの成長には、中学生の急成長が欠かせません。中学生の野球部員たちは、毎日昼休みに練習しています。本当にすごい。よく頑張っています。その中で、陽斗と琴音はレギュラーをつかみ取りました。失敗したら高校生が助けてくれるから、堂々と戦ってほしい。
そして高校生の9名。少しずつ責任感がでてきました。特に、チームの中心であり、チームを引っ張る立場の黎と弘釈。
中学2年生のときからレギュラーとして出場して早3年。今年は間違いなくやってくれることでしょう。期待しています。
高1でレギュラーを掴んだ4人の成長も嬉しかったです。真司、晃希、龍人、隆太。この4人のおかげでチームは強くなっていきました。
野球大好きな優一郎。
野球部を選んでくれた塁。
来偉夢、航世、亜冴飛、雄太、彪太郎、風馬、悠翔、蓮。全員がチームにとって必要不可欠な存在です。この19人が集まったからこそ、今のチームがあります。
8月2日。
このチームの最後の日。
一人一人が全力を出して最高の野球をしよう!
絆野球を魅せよう!
保護者の皆様
コロナ禍の中で、様々な我慢や気遣い等ありがとうございました。
我々のことを信頼してくださり、野球部活動への積極的な御協力に感謝いたします。
8月2日。
我々顧問は、本気で戦います。レクではありません。上手い下手ではなく、本気に挑むことが、選手たちへの教材であり、敬意だと思っています。
保護者の皆様は、ぜひ千葉聾野球部の戦いに熱い声援を送っていただき、我々顧問には励ましの声をお願いします。どうぞスタンドで精一杯応援してください。よろしくお願いします!
野球部監督 藤田正樹
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選手、指導者、保護者。チバロウの躍進を支えた全ての人が笑顔になった。