【報徳学園】大角健二監督|せンバツ準決勝、勝っても残った後悔
昨年と今年の選抜では2年連続で準優勝を果たし、またエースの今朝丸裕喜投手が阪神にドラフト2位指名されるなど、ここ数年は着実に結果を残している報徳学園。前編では大角健二監督に指導者となった経緯、若い頃の失敗などを聞きましたが、後編では今年のセンバツ大会のことなどを聞きました。
全部を一人で見ることからの脱却
大角監督がコーチとして母校の指導を始めたのは23歳の時。それから部長を経て2017年に監督となったが、就任当初はコーチ時代からの癖が抜けない部分もあったという。
「どうしても自分で選手を鍛えなければいけないという意識が強かったと思いますね。今思えば自分が鍛えていたというのも勘違いなんですけど、監督になってからもしばらくは全部を自分で見ないといけないと思ってやっていました。ただそれだと他の指導者がいる意味がないですし、全部を自分でやるのは不可能ですよね。だから徐々に部長、コーチに任せていって、自分はその確認をする。そういうスタンスに変えていったという部分はあります」
投手の指導を行っている磯野剛徳部長に夏の甲子園の時に投手育成についても話を聞いたが、「体作りが8割、技術が2割」という指導で、選手の成長の邪魔をしないことを心がけていると話していた。投手に限らず、あれもこれも指導者が選手に対して教えようとし過ぎることで、逆にマイナスになる部分も多く、そういった点から脱却したというのも結果に繋がっていると言えるのではないだろうか。
秋は県大会で既に敗退していたということもあるが、5チームに分けて部内で紅白戦を多く行っており、選手起用なども投球回数や打席数に偏りが出ないことを考慮に入れながらも、部員たちに任せているという。一方でトレーニング指導についてはしっかり管理しており、そのバランスが上手くとれているかを指導者がチェックできるようにしているとのことだった。
選抜準決勝、勝っても残った後悔
前編ではレギュラーメンバー以外にも区別なく全力で指導するスタイルは昔から変わらないと話していた大角監督だが、その根底にはやはり選手に成長してもらいたいという気持ちがある。
「今年の春の選抜、準々決勝で今朝丸(裕喜)が大阪桐蔭を一人で抑えて勝ちました(4対1で勝利)。ずっと間木(歩)と2人で競い合って来たので、準決勝は間木が先発して中央学院を相手にしっかり抑えてくれていました。2点リードして9回二死からツーベースを打たれて二・三塁になった。一打同点の場面。そこで迷ったんですけど今朝丸に交代して、最終的に抑えて勝ちました。ただ準々決勝は今朝丸が一人で投げ切ったということもあって、間木も次は自分の番だという気持ちが強かったと思うんですよね。あそこで間木に任せて抑えて勝っていたら、もっと成長の機会になったのかなという気持ちはあります。だから試合が終わってからは間木にもそう言って謝りました。ただ、間木も選抜前に自分の不注意で足首を怪我して、それで出遅れたというのもあるんですけどね(笑)」
試合に勝っても選手の成長の機会を奪ってしまったという点で後悔しているというのが、大角監督の考え方をよく物語っている。
報徳学園は野球部専用のグラウンドはなく、他の部活と共用で練習を行っており、それも伝統になっているという。環境面ではたしかに恵まれない部分はあるかもしれないが、高校で勝つだけでなく、その先を考えた指導が根付いており、それが近年の好結果とOBの活躍に表れていると言えそうだ。(取材・西尾典文/写真・編集部)
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