【市立松戸】朝隈智雄監督|その選手に上手くはまるトレーニングを見つける
公立高校ながら瀧本将生(21年ソフトバンク育成11位)、広瀬結煌(24年ソフトバンク育成4位)と近年たて続けにドラフト指名選手が出ている市立松戸。プロ選手誕生の背景や、チームとして大事にしていることなど、朝隈智雄監督に聞きました。
その選手に上手くはまるトレーニングを見つける
市立松戸は他の強豪校のように中学時代有名だった選手が入学してくるわけではない。瀧本も広瀬も高校で大きく伸びた選手だが、そこまでに至った経緯を朝隈監督に聞いた。
「瀧本は不器用だったんですけど、体が細長いわりにバネがあって、筋肉がついてくれば楽しみだなという印象はありました。それで色んな方の話を聞いて、特にトレーナーの高島誠さんから『クリーンと投げるボールの相関が強い』ということを教えて頂いたことをきっかけに、陸上の砲丸投げでインターハイ優勝経験のある知り合いにクリーンだけを教えに来てもらったり。それが瀧本には上手くはまりましたね」
クリーンとは全身の力を使ってバーベルを床から引き上げて肩に乗せる動作のこと。クリーンをやるためにデッドリフトやスクワットを行い、それによって全身の筋肉が上手くついてき、ボールが強くなっていった。
「ボールが強くなったことで、色んな大学に練習参加させてもらえて、プロのスカウトの方の目に留まることになりました。元々、指のかかりの感覚が良くて、縦のスライダーが特徴的で、そこも回転数を見ながら磨きをかけたことで評価してもらったと思います」
朝隈監督の話を聞くと、元々持っていた素質に上手くはまるトレーニングを見つけて、それが実を結んだことがよく分かる。ただこれはあくまでも一例であり、全ての選手に同じように当てはめているわけではない。打撃指導を例に以下のような話もあった。
「打撃でも日本の伝統的なボールとの距離をとって、上から振り出してライナーを打つというスタイルもあります。逆にオリックスの杉本(裕太郎)選手のようなスタイルもあります。どちらのやり方でも結果を残していることは確かですよね。だからある日は伝統的なスタイル、次の日はフライボールで言われるようなスタイルを全員でまずやってみるということを行っています。前者の方がしっくりくる選手もいれば、後者の方がしっくりくる選手もいる。そこはそれぞれ本人が気持ちよく振れる方を選ぶように言っています。それぞれのスタイルで大成してくためのポイントもあるので、そこをこちらも勉強して、それをチェックしていくという感じですね。たまにインコースとアウトコースでスタイルが違うハイブリッドみたいな選手もいるので、それも見極めながらやっています」
チャレンジする背中を押すのも監督の役目
今年ドラフト指名を受けた広瀬についてもそんな中で上手く持ち味を伸ばしていったという。
「入ってきた時は身体も小さかったんですけど、どんどん大きくなって力をつけいきました。特にホークスからはスローイングを高く評価していただきました。パラボリックスローという上に向かって投げる練習をやると、多くの選手は親指の方が負けてカーブ回転するんですけど、広瀬はそれがなくて指のかかりが良かったんです。その感覚がより良くなって、強さも出てきたというのは大きいですね」
ある先輩との出会いも広瀬には大きかったのだと続ける。
「2学年上に、現在は東日本国際大でプレーしている齋藤颯太という、意識が高くてどんどん成長していた選手がいました。大学でも下級生で試合に出て頑張っているのですが、彼を間近で見ていたというのも広瀬にとっては大きかったと思いますね」
名前の挙がった齋藤以外にも大学で野球を続けている選手は多く、そのことも現役の選手にとって刺激となっているようだ。前編で監督に求められる役割というところで進路ということもあったが、その点も大事にしているという。
「なるべく卒業後も野球を続けることは推奨しています。まずは本人の意向を聞いて、希望の大学があれば必ず連絡をするようにしていますし、本人に合いそうな大学を紹介します。チャレンジする背中を押すのも監督の役目かなと思っていますので。広瀬についても自信がついてきて、プロに見てもらいたいという希望があったので、ソフトバンクには瀧本の時の繋がりもあったので連絡して見に来てもらいました。東日本国際大の齋藤もそうですね」
今の中学生や保護者は進路のことを気にするケースも多いという。そういう意味でも市立松戸が選ばれる理由の一つとなっていると言えそうだ。
最後に朝隈監督が選手に必ず伝えていること、市立松戸を検討する中学生に対して求めることも聞いた。
「競技への愛、野球への愛は前提条件として持っていてほしいというのはありますね。野球への思いがあって、上手くなりたいという気持ちがあればいくらでも伸びると思いますし、そういうチームでありたいと思ってやっています」
取材当日の練習も指導者からの指示がなくても選手が動き、何かあるとアドバイスを求めに来るというシーンが多く、自ら上達しようという選手が多いように見えた。そういう環境だからこそ、この短期間でプロに2人の選手を輩出し、大学で続ける選手も増えていることは間違いないだろう。また市立松戸が千葉県内で強豪を破り、2人に続く選手が出てくることも期待できそうだ。(取材・文:西尾典文/写真:編集部)
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