【市ケ尾】平野遥大主将|理想と現実の最適解。「創部初のベスト8入り」を目指すチームのまとめ方

今や神奈川の公立校屈指の実力校へと変貌を遂げた市ケ尾。47人の部員を束ねる平野遥大主将に、文武両道の市ケ尾を選んだ理由、「野球だけをやりにきた選手は少ない」野球部でどこを目標にしているかなど、話を聞きました。

「甲子園出場」を目標にしない理由

市ケ尾の平野遥大主将は菅澤悠監督のことを「考える力を引き出してくれる監督です」と即答した。「練習においても、たとえば今日は雨が降っていたので課題メニューを選ばせてくれました。中学野球部のときは、ここまで考えて行動することはなかったです」。市ケ尾の練習スタイルに、満足感や充実感を得られていることを実感しているそうだ。

市ケ尾高校に入学したきっかけは、中学校の先生の勧めだった。最初は市ケ尾野球部の存在は知らなかった。中学顧問の話を聞いたり、自分で調べていくうちに、野球部が神奈川でベスト16入りするレベルだと知る。「ここで高校野球をやりたい」と思った。そこから学力を向上させ、受験に合格。今は文武両道、学校行事も参加して、思い描いていた理想の学校生活を送っている。

「もし受験で落ちて私学に行っていたら、その高校では野球はやっていなかったと思います。市ケ尾だったから、今がある。自分の生活の8割くらいは、野球のことでいっぱいになっています」と笑顔で話した。

47人をまとめる主将についてもやりがいを感じている。目標は「創部初のベスト8入り」。現実的な目標設定をする理由についても説明した。

「市ケ尾野球部は目標に対する取り組み方を大事にしているチームです。それで、これはちょっと現実的な言い方になってしまうんですけれど、自分たちは公立校での野球を選んでいるので、野球だけをやりにきた選手は少ないんです。その中で目標を『甲子園』とすると、現実から離れてしまう。じゃあ自分たちはどこを目指すのか? となったときに、先輩たちが越えられなかったベスト16を超えたい、という目標になったのです。自分は高校野球がやりたくて市ケ尾に来たけれど全員がそうではないので」

 

平野主将の言葉から「甲子園出場」を目標にしない理由が理解できる。では主将として、どのようなことを心がけているのか。
「小、中もキャプテンをしていたのでチームをまとめた経験はあります。いろんな意見を持った選手がいることは理解して、その中で同じ方向を向くように話し合っています。完全下校が19時で、私立のように長く練習ができるわけではないので、限られた時間の中でどうやるかは常に考えています。勝ちをあきらめているわけではありません」

平野主将が入学した時、菅澤監督から「この代が監督としての最後の年になるかもしれない」という説明があった。公立高校の教員には任期がある。この言葉を聞き、自分たちも先生と同じ気持ちで〝執〟大成の3年間にしようと思ったという。

現実と理想の最適解で掲げた「ベスト8」という目標。2025年秋の神奈川大会3回戦で横浜隼人に勝ち、秋のベスト16入りを初めて達成した。春までに「考える野球」をより深化させ、来春そして夏は創部初のベスト8をつかみ取る。(取材・文・写真/樫本ゆき)

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