制限時間7時間なら7時間楽しむ……「速く走ったらもったいない」マインドの旅ランガール・福田萌子さん
(文 東 麻吏 / 写真 Eliana)
旅先で朝のランニングをしたことはありますか? 見知らぬ土地を知る楽しさとランニングをする楽しさが混ざり合い、よりいっそう爽快な気分になるというランナーも少なくないはず。
旅の観光とランニングを一緒に楽しむことを“日常的に”行っているのが、モデルの福田萌子さん。プレイベートで時間があれば、海外に行くという旅好きのランガール。
福田さんのスタイルの良さ、美しさはさまざまなメディアで目にするとおりですが、その内面の美しさにも魅力と輝きを感じます。“走ること”と“暮らすこと”を分けて考えない彼女のライフスタイルについて、お話をうかがいました。
旅先のランニングは一石何鳥? 走ることはいいことだらけ
もともと運動が好きで、クラシックバレエを嗜み、バレトン(バレエのメソッドで筋肉を整えるワークアウト)のインストラクターでもある福田さん。ジムでの運動もしていましたが、6年前くらいから外で体を動かすようになったのだそう。
「いろんな所に行けるのがランニングの良さですよね」
文字通り“足を延ばせる”のがランニングを好きな理由の一つ。好奇心旺盛な福田さんは、自分の世界を広げていく活動に魅力を感じています。
それが海外になれば、自然に『知らないところを見て回る』ことに。
「コペンハーゲンやザルツブルグなどヨーロッパの街だと、10km走れば街中を見て回れるんです。自分で走るから土地勘もつく。走って下見をしちゃうんですよ。ランニングを終えシャワー浴びてから、見つけた可愛いカフェに戻ってコーヒー飲んだり。旅先でのランは一石何鳥もあります。
子供のころから機会に恵まれ、旅が大好きに。世界遺産を巡ったり、歴史を知るのも好きという。旅先のランは、家族との朝散歩が原点。
「中高生のころ、家族で旅行すると必ず朝に散歩をしてました。それが今はランニングに。走るとより広い範囲に行けるので、いろんなことを知れますよね」
「とにかく、知らないことを知るのが好き!」と素直に話すまっすぐさ。その感受性が、福田さんが見る世界をより美しくしているように思えます。
涙が出るほど美しい風景。日常での小さな変化。同じように愛おしい
「今までの旅ランで印象的だったのはギリシャのサントリーニ島。エーゲ海に浮かぶ島で、空と海の青に真っ白な建物が映える美しい島です。夕日が世界一きれいに見える場所として有名。マジックアワーのグラデーションが美しくて……。でも、朝焼けもとてもキレイ。真っ白の家が朝陽でベージュから赤に染まっていく光景は美しすぎて写真に撮っても写らない。
『ああ、なんて美しい世界にいるんだろう。ここで走っている私、幸せ……』と涙が出ました」
絶景と呼ばれる場所で、体を動かす。鼓動を感じ、ここにある“自分”を感じること。
「自然の中で体を動かすことが好きなんです。美しい世界の中を走り抜けるって最高に気持ちがいい。
そこに立っているだけでも気持ちいいかもしれないけれど、走っていると自分で『生きている』と感じますよね。自分の体調もわかるし、よく腕や脚を動かせているな、とか。自分の体を見つめるというか、そういう時間でもあると思います」
自分と外的世界のかかわりを、走ることでより強く感じ、その喜びに身をゆだねられる瞬間。旅先でのランニングの醍醐味なのかもしれません。
ただ、どこか遠くに行かないとそれを味わえないわけではない、のだそう。
「日々の朝ランでも、いろんなコースを走って、知らない場所を見て回ることも。いつもと同じコースでも、四季折々の変化を味えます。もうすぐ葉っぱが落ちるな、とか、その中を走りたいな、とか。冬になったら、寂しげな感じはするけど、冬らしさを感じる。芽吹きを見ると春の訪れを感じますよね。
自然だけでなく、街中も日々変化があります。新しいカフェやショップができたら、あのコーヒーショップまで行こう、と走ってみます」
ものさしは「速さ」だけじゃない。みんながもっと自由に走り出せたらいい
自然の中だけでなく、街にも生きている姿を見出し、ランニングを通して楽しんでいる福田さん。走ることがライフスタイルに溶け込んでいます。
「だいたい朝5〜6km走り、今日なにしよう?って考えます。自転車に乗ったり、水泳したり。何にもない日は、20kmくらい走ろうかな? どこまでいけるかな?と考えます。休日に友人と『どっか行こう! 』が、走っていくという感じ。走ることと、遊ぶことや暮らすことを分けなくていいと思ってます。
朝、ワークアウトして、友達とお茶して、そのあと行きたかったお店に行って……というのを、そのまま走ってやっちゃえばいい。自由度が広がりますよね」


福田さんは“速く”走ることよりも、“楽しむ”ことを大切にしています。先日のベルリンマラソンでも、ナンバーカードをつけたままコーヒーショップに2回立ち寄り、コース近くの教会まで足を延ばして見て回ったそう。
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「海外マラソンは、観光地を回れるのも魅力ですが、ボランティアスタッフの方々との交流や、大会運営の様子など、現地の文化も一緒に知ることができるんです。私の出身の那覇マラソンも沖縄の人たちのホスピタリティを感じながら走れます。
制限時間が7時間あったら、7時間楽しみたい。もちろんタイムを追求するよさもありますが、せっかく道路を封鎖して、いつもは走れない場所で走れるのに、速く走ったらもったいない。笑」
とはいえ、寄り道をしても5時間程度でフルマラソンを走り切れる走力があるからこそ。走りを楽しむためにトレーニングをするのだそう。
“速さ”というものさしだけではない、走ることの価値を多面的に見ている福田さんは、“こうあるべき”を軽々と飛び越えます。
「マラソン大会に出ると言ったら、『何km走るの?』『どれくらいのタイムで?』と聞かれるよりも、『何を見に行くの?』という質問される方が、私はしっくりくるんです。
シューズに関しても、私は初心者向け、中級者向けを考えず、シンプルにデザインがかわいくて、形が好きなので履いています。
『こうじゃないといけない』は、なくていいかなと。これから走り始める人にも、やってみたいと思った気持ちを尊重してほしいし、自由を阻害してほしくないと思っています」
自分の体を移動させて見る世界を広げること、いくつものとらえ方で走る楽しみを拡張していくこと。それをナチュラルに体現している福田さんのボーダーレスな姿に触発され、いろんな人のランニングの世界が広がっていきそうです。
福田萌子(ふくだ・もえこ)1987年、沖縄県生まれ。モデル・タレント・リポーター。雑誌や広告でのモデル、沖縄出身で地元のテレビ番組リポーターなどでも活躍。アディダスグローバルアンバサダーであり、『adidas MeCAMP』captainも務める。バレトンインストラクター。ランニングのほか、ロードバイク、ヨガ、登山などのアクティブな活動をしつつも、お琴や華道の日本文化も嗜む。
・好きなシューズ
Road:SOLAR boost/Race:adizero japan/Trail:TERREX (All adidas)・ウォッチ
GARMIN:トライアスロンなどの大会のみ(普段はなし)・好きなランニングコース
外苑前の銀杏並木〜赤坂御所一周〜代々木公園を抜けた先のカフェ までのコース。・好きな音楽
小鳥のさえずりや朝日の燃える音、雨や風の音。街の活気溢れる人の声も好き。