【龍谷大平安】原田英彦監督「じゃあ俺がキャプテンになってやらんと」

この夏「甲子園100勝」という偉業を達成した強豪・龍谷大平安高校(京都)。チームを率いるのは自身も同校OBの原田英彦監督。そんな原田監督に今回は昨今の少年野球人口の減少やこの夏高校野球ファンを驚かせたイメージチェンジの秘密などを語っていただいた。

現在は昔に比べると子どもが低年齢化していると言われている。考え方も幼いため、体作りもそこに落として進めないといけない。なので、やれやれ…というよりも、目の前にいる教え子を何とかしてやらないといけない。そう腹をくくったのが今夏の指揮官だった。

「コイツらカワイイなぁという感覚になってきて、今年の夏はじゃあ俺がキャプテンになってやらんといけないなと思うようになったんです」。

グラウンドでも練習でも厳しい表情しか見せない監督が、自ら「この夏は俺は壊れる」と宣言して選手と同じ目線になり、勝てば選手の前で「お前ら最高だぜー!」と叫ぶ姿は今夏の甲子園でも話題になった。

この掛け声はディズニー映画「タートルトーク」内でクラッシュというカメが発するのだが、ここのところ余計なことを言わずに静観していたスタイルを一新し、親しみやすいディズニーの一幕を借用することを決断した。

「これには意図があるんです。今夏は甲子園に行って、どうしても甲子園100勝をしたいというのが一番でした。前のチームはリーダーがいなくて結果も思うように出ない中、もうこうするしかないと。最初は“俺が壊れる”の意味を選手らはよく分かっていないみたいでしたが、実際にこのスタイルにすると選手らがついてくるようになったんです」。

監督がキャプテンになる!?

監督がキャプテンになる。普通ならなかなか出来ないことだ。でも、その覚悟を悟ったナインがついて行こうと心をひとつにできたのは、やはり指揮官の熱い心意気だった。今夏は甲子園に行く。その思いを常にナインにぶつけてきたことで、彼らも「今の自分たちのままでは甲子園に行けない」という危機感が宿ったのだろう。

ただ、指揮官はこんな本音も明かす。
「毎年でも甲子園に行きたいですし、勝ちたいです。負けることほど悔しいものはない。でも、高校野球で勝つことより、彼らにはその先の人生もある。この高校野球を通して自立してもらうのが一番の目的だから、自立して、その次が甲子園やと思っています。入学して最初に保護者の方にもそう言います。そしてお母さん方にも“一緒に自立しましょう”と。今は何でも学校任せになっている中、親御さんも共に自立してもらいたいですね」。

甲子園で100勝を挙げてきた歴史の中には、原田監督の強い信念がある。そしてこれからも歴史はさらに刻まれていく。(取材・写真:沢井史)