【駿台学園中】「守備時間は短く、攻撃時間は長く」重視するのはテンポの速さ
今年の夏に広島で行われた「第40回全国中学校軟式野球大会」でベスト4まで勝ち進んだ駿台学園中学軟式野球部。そんな強豪チームを率いる西村晴樹監督が重視するのがテンポの速さ。テンポを速くすることのメリットなどについてお話を伺った。
――駿台学園中の練習や試合を見ていると、ひとつひとつのメニューの切り替えや攻守の切り替えがとにかく速い。試合においては、1球の間が6秒ぐらい。中学時代に、こうしたスピードを身につけるメリットはどこにあるのでしょうか。
西村 中学時代に、速いテンポで野球をすることが当たり前になれば、高校で戸惑うことが少なくなると思っています。テンポの速さに急かされる中でも、次のプレーに対する準備をしなければいけない。短い時間の中で何を最優先に考えるか。日頃の練習から、優先順位を考える習慣が身につくので、高校でもレギュラーで出場できるOBが多いのではないでしょうか。
――卒業生は、どこの高校に行っても活躍しているイメージがあります。西村監督が、テンポに目を付けたのはいつ頃からですか。
西村 自分が高校生(二松学舎大付高校)のときです。市原(勝人)監督がテンポを重視する野球をしていて、イニングの表と裏を5分で終わらせる「5分間ゲーム」をひたすらやっていました。5分で終わらせるには、テンポを速くせざるをえないわけです。
――「5分間ゲーム」とは、面白い試みですね。
西村 駿台学園中でも、ずっとやっていますね。そもそも、東京都の場合は、1試合1時間50分の時間制限があり(*軟式野球連盟主催試合に限る。以前は1時間40分制だった)、だらだら試合をしていたら時間で打ちきりになることがあるのです。「守備時間は短く、攻撃時間は長く」が、勝つための鉄則になります。
――駿台学園中は守備のボール回しをしないですよね。
西村 時間がもったいないからです。野手がボールに触れない、リズムを作れないというデメリットがあるかもしれませんが、ずっとそのスタイルでやっているので、子どもたちも慣れています。アウトを取ったあと、ポジションに戻るのもとにかく速くして、無駄な時間を作らない。ピッチャーには投げ終わったあとには、「キャッチャーに背を向けないように。すぐにボールをもらいなさい」と言っています。
――打つほうでは、ファーストストライクから積極的に振っていく攻撃野球が目立ちます。
西村 これも5分間ゲームから来ていることです。バットをなかなか振れない選手であっても、5分間ゲームをやれば、積極的に振るようになります。振ることによって、バッティングがよくなっていく。状況はその時々によって変えていて、たとえば「カウント2ボール1ストライク」など、1球のストライクで追い込まれる状況を作れば、さらに振るようになります。
状況によってテンポを変える
――テンポを速くすることに頭がいきすぎて、試合の流れが崩れてしまうことはありませんか。
西村 新チーム当初は、「とにかく速く」からスタート。攻守交代の目安は、60秒ぐらいです。そこから、状況を見ながら、テンポを変えることを教えていきます。速いスピードを経験しておけば、そこから緩めることはできるので。
――たしかにそうですね。
西村 三者凡退であれば2分30秒、ノーアウトから出塁を許したら5分00秒、1アウトからの出塁であれば4分40秒といったように、その状況によって、守備時間の目安を伝えています。1点を失うようなイニングであれば7分以内。ランナーが出たときは、意識的に時間を使っていくように指導しています。
――1球1球の間合いを長くしたり、タイムを取ったりできるわけですね。
西村 あとは、ベンチからのサインで時間を調整します。キャッチャーに送る配球のサインをあえて長くすることによって、時間は作れます。
――なるほど、ベンチからサインを出す狙いはそういうところにも出てくるわけですね。
西村 また、守備のテンポは、攻撃との絡みもあり、ピッチャーが何アウト目で終わったかによっても変わってきます。
――どういうことですか?
西村 3アウト目がピッチャーだった場合は、そのままの速いテンポで守備を始めても、失点はほとんどしません。緊張感が高まったまま、ピッチングにのぞめるからです。注意したいのが、2アウト目がピッチャーで次のバッターでチェンジ、あるいはピッチャーが塁上にいるときに3アウトになるときです。慌ただしい感じでマウンドに上がるので、このときはゆっくりしたリズムで守備を作っていくようにさせています。
――2アウト目がピッチャーだった場合、次のバッターには待たせますか。
西村 状況や打順にもよりますが、基本的には2ストライクまでは「待て」ですね。ピッチャーを休ませるようにします。
――中学時代からこういうことをしておけば、試合の流れを読む力もついてくるでしょうね。
西村 はじめは速いテンポについていくのが大変でしょうけど、それが当たり前になれば、余裕を持ってプレーができるようになるはずです。