【履正社】現在の課題は「バッティングの対応力を上げること」
苦戦しながら制した秋の大阪大会
現チームは秋の大阪大会では優勝。近畿大会ではベスト4に進出したものの、大阪大会では苦戦続きだった。4回戦の阪南大高戦では1点差ゲームを切り抜け、4回戦の星翔戦も3−0の辛勝。準々決勝の東海大仰星戦は8回に2点差を追いつきサヨナラ勝ち。「2、3回は負けていますから」と、指揮官も思わず苦笑する秋の戦いぶりだった。ただ「それをラッキーだと受け止めていては甲子園では勝てない。秋に様々なケースを経験できたからこそ、それらを生かす練習をやらないと」と指揮官は語気を強める。
履正社はここ数年、強力打線を看板として勝ち上がってきた。エースの本格派左腕・寺島成輝(現ヤクルト)を擁して16年夏の甲子園に出場した際は2回戦で横浜を相手に下位打線でも長打が飛び出すほど打順に関係なくしっかり振り切るスイングが印象的だった。そして安田尚憲(現ロッテ)を中心に昨春センバツで準優勝した戦いぶりは記憶に新しい。ただ、現チームではバッティングに関してある課題が浮き彫りになっている。
「現チームはバッティングの対応力が低いですね。練習を見ていても好きなように打っている感があるんです。近畿大会の準決勝で大差で負けた原因がまさにそれです。まずチームとしてどうバッテリーを攻めるのか。その場面、場面でこういうことが起きるという想定をした打撃ができなかったんです。個々の能力が高ければそこまでは思わないですけれど、今のチームは前のチームの経験者がいるのに、野球を知らない子が多い。
私はだいたい下級生をまぜてほぼ毎年チームを作って来ましたが、今までは経験者がちゃんと軸になって勝ち上がってきたけれど、今年は経験者がそこまで機能できていなかったんです。ですので、今はバッティングの対応力を上げることが第一です」。

バッティング練習では全員木製バット

バッティング練習を見ていてまず気づくのは、履正社では「カキーン」というバットの金属音は聞こえない。普段から木のバットで打撃練習をしているからだ。
「ただし、1年生は基本的に木で打つようになるのは秋の新チームになってから。ウチでは金属を使うのは入学して最初の数カ月だけです。上を目指す子が多い中、プロ、大学、社会人すべて木のバットで打つことになりますから。お金はかかりますが、将来的なことを考えれば早くから木に慣れておく方がいいかなと」。
普段から木で打ち込むことで、芯で捕らえないと飛ばないという意識がチーム内で一層強くなる。ここに対応力がプラスされれば、現チームも歴代に負けないほどの打撃力が発揮できるのは間違いない。と、同時に今はメンバーを頻繁に入れ替えながらチーム内の競争意識もさらに高まっている。
「8月末に秋の府大会のメンバーを決めて10月上旬まで戦って、近畿大会が決まれば数人メンバーを入れ替えて11月上旬まで戦ってきました。でもこの秋の公式戦が終わるとどんどんメンバーが入れ替わっています。秋にスタンドにいて悔しい思いをした子が伸びてきて、11月の練習試合はスタメン出場もしていました。だから近畿大会までとは戦いぶりも変わってきていますよ」と指揮官。

激しい競争の中で、野球人としてだけでなく社会に出てからも必要な術も身につけられる。野球を続ける、続けないに関係なく、どの方向に向かってもそこで何かを極められる要素を、履正社では2年半をかけてしっかり学ぶことができるのだ。(取材・写真:沢井史)