【近江】苦労する冬場の練習メニュー
01年には県勢初の夏の甲子園準優勝を果たし、今年は春夏連続甲子園出場。夏の甲子園はベスト8。準々決勝で金足農に劇的なサヨナラ2ランスクイズを決められ敗れたが、近江の強さを全国に印象付けた。そんな近江のグラウンドで多賀章仁監督にお話を聞いた。
滋賀県の北東部にある彦根市は、冬になるととにかく天候が猫の目のように変わる。
「午前と午後で天気が全然違うことも多いんですよ」と多賀監督も思わず苦笑いしてしまうほど、冬場の練習はメニューを考えるのに苦悩する。この日も予定していた練習が変更になり、空を見ながら作戦を立てていた。年が明けると積雪もあるため、外での練習もほぼできなくなる。例年は長靴を履いてランニングをしたり右翼奥にある室内練習場でバットやボールを使わないトレーニングがメインの練習となるが、今年に関しては出来るだけ実戦に近い練習を敢行する予定だ。
秋の近畿大会では初戦で報徳学園に敗れ来春のセンバツ出場は厳しいが「今年はバットを振り込んで、振る力をつけていきたい」と指揮官。それだけ、現チームには来夏に向けた期待が高い。
滋賀県内のみならず、京都や大阪などからも甲子園を夢見て近江高校の門をくぐってくる生徒は毎年多い。野球留学に関しては世間的に否定的な意見を唱える者も多いが、多賀監督ははるばる近江にやってくる子たちを心から歓迎している。
「もちろん、地元の子を大事にしたい思いはありますが、県外から甲子園に行きたいと覚悟を決めてやって来る子は、それ相当の気持ちの強さを持っているので練習での姿勢が違います。レギュラーになって試合に出たいという意識が人一倍高い傾向がありますね。ただ、僕が常に勧誘している訳ではないんですが、県外から来てくれる子は過去にウチに通っていた子との繋がりなども多いんですよ」。
15年前に完成したグラウンド後方にある野球部寮は大浴場なども完備され、生活する遠方の選手たちにも好評だ。
ブルーのユニホームに憧れ、毎年他府県から様々な“顔”を持った選手が集まってくるが来年は今年の甲子園を見て大きな野望を抱いた選手がどれだけ集まってくるだろうか。チームは今年の春、夏の甲子園はいずれもサヨナラ負けを喫した。夏の最後の”悲劇のヒーロー“となった現エースの林優樹は、あの試合の悔しさを片時も忘れたことはない。
「今度は自分が投げて、抑えてみんなで甲子園に行きたい」と林はランニングメニューでも率先して先頭に立っていた。林だけではない。女房役の有馬諒も、三塁のポジションからあのシーンを前に呆然と立ち尽くした見市智哉も、隣にいた土田も—。
あと1歩で涙したあの舞台に戻るために、今は全員が同じ方向を眺めながら鍛錬に励んでいる。(取材・写真:沢井史)