【創志学園】底上げ図る冬、「西だけのチーム」と言わせない!

最速149キロ右腕、2年生エース西純矢を擁して甲子園を沸かせた2018年の夏。あれから4ヶ月が立ち、チームは西はどんな冬を迎えているのだろうか? 12月の半ば、岡山県赤磐市にある創志学園のグラウンドに足を運んだ。

岡山駅からほど近い学校からバスに揺られること約1時間。赤磐市にあるグラウンドはかつて系列校の環太平洋大が利用していた敷地で、隣には大学が使用しているサッカー場、サブグラウンドまである広大な広さを誇る。このグラウンドを本格的に使うようになったのは昨年から。それまでは学校近くの県営球場などを転々としながら練習してきた。

グラウンドに到着するとランニングやストレッチといったアップが始まり、キャッチボール、そして班に分かれた練習が始まる。長澤宏行監督は夙川学院(兵庫)の女子ソフトボール部監督を務めたのち、神村学園(鹿児島)野球部監督として03年センバツで準優勝を果たした経歴を持つ。その後、環太平洋大の監督を務め、10年より創志学園野球部の監督に。創志学園では春夏計5度チームを甲子園に導いた。神村学園では1年目にいきなり全国準優勝、創志学園でも就任1年目にセンバツ出場を果たすなど、“勝たせる力”を浸透させるのがとても早い指導者でもある。

“勝たせる力”を浸透させる早さにも定評がある長澤宏行監督。

まず、グラウンドで目についたのは道具を丁寧に並べられている光景だ。グローブや皮手袋、スパイク…。一列にキレイに揃えられているのは長澤監督の思いそのものだ。「まずはこういうところからピシッとしていかないとね」。

どれだけ力のある選手でも、道具の使い方は同じだ。指揮官からすれば野球を教えるのはもちろんだが、野球で教えることもたくさんある。モノがあふれるこの時代、どうしてもモノに対する感謝の気持ちや存在の大きさをないがしろにしがちだ。そのため、道具に対する扱い方の大切さも常に説いている。
「どこの学校の監督さんもそうだと思いますよ。野球から何を学ぶのか。野球から教えてもらうことはたくさんあるんです」。

1人の投手では勝てないことを痛感した秋

2018年の夏の甲子園では最速149キロのストレートに加え、毎回の16奪三振を奪うなプロ注目の的となったエース西純矢。

取材に訪れた時はちょうど12月半ば。週末は朝から晩までみっちり練習と向き合うのだが、冬練習として特別なことはやっていない。広い敷地を使い、グループに分かれた選手たちがノックやバッティングを行う。グラウンドでの練習を終えると、夕方に学校近くのトレーニング施設に移動し、筋力トレーニングに励む。トレーニングが終わるのは夕刻を過ぎた頃。だが、とにかく練習場から練習場への移動時間が長い。真冬になると高台にあるグラウンドは一時的に使用できない時があり、その際は学校周りの施設を使いながら練習を重ねていく。

昨夏の甲子園では西純矢投手を擁し、初戦で優勝候補の呼び声が高かった創成館に7−0と完勝した。17奪三振をマークした西純矢投手は夏以降、熱い注目を浴びるようになったが、西の実力が傑出しているからこそ、新チーム作りには細心の注意を払った。
「西と対等な立場の先輩や同級生がいれば話は別ですが、1人だけ抜けているから、どうしても西ばかりが目立ってしまいますよね」。

長澤監督は“西だけのチーム”になるのはどうしても嫌だった。そのため他の選手に奮起を促しつつもチームの底上げを図った。そんな中、秋の大会が始まり、県大会の準決勝まで勝ち進んだが、ライバル校からはやはり西が徹底的に研究されていた。西自身の投球幅を広げるためにスライダーを封印させるなど、試合ごとにテーマを与えながら何とか勝ち進んできたが、強力打線を従える岡山の強豪を抑えるのは並大抵なことではない。
秋の県大会は夏の大会のような打ち合いの試合も多く、1人の投手では勝てないことをあらためて思い知らされた。(取材・写真:沢井史)