巨人・菅野が醸し出す“風格” 貴重な実戦登板を若手捕手の「勉強時間」に

 2年ぶりに巨人担当に戻った。楽しみの一つは巨人・菅野を取材することだった。前回は投手担当。今回は違うのでなかなか取材する機会に恵まれなかったが、3日のヤクルト戦(東京ドーム)後にその機会は訪れた。

巨人の菅野智之投手

 「面白いキャッチャーだと思った」

 試合後、初めてバッテリーを組んだ田中貴の印象について菅野が語った。理由は対青木の配球。初球にシンカーのサイン。これで二飛に打ち取っていた。実は前回2月21日の練習試合(沖縄セルラー)でシンカーを痛打されていた。

 「打たれているのを分かっていてそのサインを出したんだと思う。その考えが嬉しかった」。

 菅野は言わずと知れた球界のエース。一方の田中貴は昨年途中に育成から支配下登録されたばかりの選手。それでも臆することなく、シンカーでのリベンジを目論んだ。試合前には2人でシミュレーション。「すごく僕のことを研究してくれていた」と菅野は感じ取り「今日は(配球を)任せるから」と一任したという。

 今回のバッテリーは正捕手の小林が侍ジャパンに招集され不在だったことで実現した。菅野にそこまで言わしめた田中貴も立派なものだが、開幕前の貴重な実戦登板を若手捕手の「勉強時間」にあてるエースも、さすがだと感じた。開幕前の限られたマウンド。日本球界に復帰した青木に対しても、試したいことはあったはずだ。

 昨季を終え、菅野には「沢村賞投手」という看板もついた。かつてソフトバンク担当をしていたときに取材した斉藤和巳氏(現野球評論家)がそうだったが、報道陣を寄せ付けないオーラを放ちつつある。今季からは選手会長にも就任。名実ともにチームを、若手をけん引する立場にもなってきた。

 今季は2年ぶり4度目の開幕投手が内定している。次回登板以降は開幕を見据えて長いイニングの登板を予定。バッテリーを組むのも開幕と同じ小林になるだろう。開幕の阪神戦は3月30日。菅野がどんな投球を披露するのか、今から楽しみでならない。(川手 達矢)