野球が大好きになる!「埼玉baseballフェスタin川口」

1月26日、埼玉県川口市で「埼玉baseballフェスタin川口」が開催された。埼玉西武ライオンズ、埼玉アストライア、川口市野球連盟の共催によるイベントだ。

「野球離れ」が深刻になる中、埼玉西武ライオンズは、埼玉県内で野球普及活動を展開している。これまでもアカデミーなど少年野球チームで少年たちの指導を行ってきたが、普及活動はそうした事業とは一線を画し、野球を知らない子供に絞り込んで活動をしている。2017年には女子プロ野球の埼玉アストライア、独立リーグの武蔵ヒートベアーズ、ソフトボールの戸田中央総合病院メディクスと連携し、埼玉県内で未経験の子どもに野球を普及する「PLAY-BALL!埼玉」プロジェクトを発足した。

埼玉県川口市は古くから野球が盛んな土地柄だったが、サッカー人気もあり、ここでも野球競技人口の減少が深刻化していた。川口市野球連盟は、「川口市野球人口増加プロジェクト」を発足し子供たちに野球に興味を抱いてもらうための活動を開始。昨年も埼玉西武ライオンズとともに小規模なイベントを実施したが、今年は市内全域に呼び掛けて、大規模なイベントを実施した。

会場は埼玉アストライアの本拠地である川口市営球場。朝10時の開場前には、球場周辺に親子連れの長い行列ができた。参加資格は幼児から小学校6年生まで。ただし野球未経験者に限る。
イベントは、川口市野球連盟が行う当日自由参加の体験イベントと、当日申し込みの埼玉西武ライオンズ、埼玉アストライアのコーチ、選手による「初めての野球体験教室」の2つに大別された。

当日自由参加の体験イベントはストラックアウト、スピードガン計測、ホームランチャレンジ、サークルベースボール(試合形式)、さらに幼児向けの運動プログラムも用意された。

イベントはスタンプラリー制になっており、競技への参加を申し込むと参加カードにスタンプを押してもらえる。子どもたちは、スタンプをコレクションしながら次々と体験を楽しんだ。
ストラックアウトは、テレビでもよく見られる的当て。子どもの体格に合わせて、投げる距離を調整し、ボールを投げる楽しみを実感した。

スピードガン計測は、子供だけではなく大人も参加できる。腕自慢のお父さんがジャケットを脱いで腕試しをするシーンが見られた。

またホームランチャレンジは、外野フェンス沿いにホームベースが置かれ、子供たちがボールを打つ。野球の魅力の一つである「フルスイング」の楽しさを実感した。

サークルベースボールは、近年、「川口市野球人口増加プロジェクト」が力を入れてきた簡単な野球型ゲームだ。子どもたちに投げる、打つ、走るという野球の基本的な面白さを実感させるものだ。グラウンドには夢中になってボールを追いかける子供たちの声が響いていた。

さらに、運動プログラムでは、巨大なビニールボールを転がしてドッジボールの球を当てあうゲームが行われた。これは一見、野球とは関係がなさそうに見えるが、明治期には「打球鬼ごっこ」と翻訳されたこともあるなど、野球の動きと関連性が深い。こうした幼児向けの運動も「野球好き」へのアプローチとして有効ではないかと思われた。

それぞれの体験の指導、サポートは川口市内の少年野球チームに所属する中学生が担当した。ホームランチャレンジでは子供たちが打った飛球がフェンスを越えると「いいねー!」と大声をあげて子供とハイタッチをしていた。
このイベントは、未経験の子どもたちにとっても楽しかっただろうが、サポートをした選手たちにとっても貴重な経験になったはずだ。
球場の入り口では、川口市内の28の少年野球チームがチラシを配っていた。自分たちを指導してくれたお兄さんと同じユニフォームを着たいというニーズも確かにあるのではないか。

グラウンド中央で行われた「初めての野球体験教室」は、埼玉西武ライオンズの石井丈裕、宮田和希の両コーチが講師となって進められた。

両コーチはボールの投げ方、受け方、バットの振り方などをわかりやすく説明。野球未経験者向けのプログラムは、2017年に始まった「PLAY-BALL!埼玉」などのイベントを通してすでに十分に練り上げられている。子どもたちは、コーチの指導を受けているうちに、自然に「野球の動き」が身についていった。
若い宮田コーチは、大きな身振りで子どもたちにボールの投げ方などを指導した。終始笑顔で、コーチ自身が楽しそうに始動をしている。子どもたちに接するには、こうした気配りも重要なことだ。
石井コーチは、1992年には沢村賞に輝いたライオンズのレジェンドだ。その立派な体格は、今でも存在感が抜群だ。子どもたちの後ろにはスマホで石井コーチを撮影するお父さんたちの姿があった。
最後には川口市のゆるキャラ「きゅぽらん」も加わって記念撮影が行われた。

「初めての野球体験教室」のプログラムは約1時間、これを終えた子供たちはその後、ストラックアウト、スピードガン計測など当日自由参加のイベントを体験することができる。
これまでの体験会は、複数のイベントに参加しようとすると、待ち時間ができることが多かった。
しかし、中央で2回行われたライオンズ主催の体験教室以外は、子供たちはいつでも自由に体験イベントに参加できるので、待ち時間が少ない上に、いろいろな体験を順番は関係なく選択できる。「今度は何をやろうか」と子どもたちもワクワクするし、非常に良いシステムではないかと思われた。グラウンド内では、ちょっとした野球のテーマパークのような賑わいが創出された。

参加者は約1000人。インフルエンザが流行している中だったが、球場は一日中子どもたちの歓声が響いていた。
午後からは川口市内のSKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ 映像ホールで、川口Baseballサミットが行われたが、この模様は稿を改めて紹介する。

(取材・写真:広尾晃)