イチロー、雄星は「日本で一番いい左投手」 対戦にワクワク

 ◇マリナーズ・春季キャンプ(2019年2月17日)

ストリックランドの投球で打撃練習しファールするイチロー(撮影・会津 智海)

 マリナーズとマイナー契約で招待選手のイチロー外野手(45)は、キャンプ2日目となった17日(日本時間18日)、同僚投手相手のライブBP(実戦形式のフリー打撃)に臨んだ。メジャー投手の生きた球を体感するのは昨年5月2日アスレチックス戦以来291日ぶり。練習後には、西武から新加入の菊池雄星投手(27)と談笑し、期待のルーキー左腕との「対戦」に思いを巡らせた。

 気温12度の寒さの中、人一倍離れていた実戦への感覚を取り戻す作業を、一歩進めた。イチローは通算253試合に登板している速球派の救援右腕ストリックランドを相手に打席へ。7球のうち1回だけスイングし、ファウルだった。あくまで目慣らしの機会だ。

 「別にどうってことないですね。僕、(ライブBPは)嫌いですから、元々。今年も嫌いです」。会長付特別補佐への就任前日、昨年5月2日のアスレチックス戦以来291日ぶりに大リーガーの球を打席で見ても、思いは変わらない。

 しかし、練習後のクラブハウスでは、それまでのストイックな姿とは一変。優しく声を掛けた相手は菊池だ。「雄星!いつBP(ライブBP)投げるの?」。直立不動で「あさって(19日=日本時間20日)です」と答えた左腕に、こう返した。

 「どうなのかな?打席に(自分が)立つのかな?見たいな、ブルペンも見たい。だって日本で一番いい左投手だからね」

 驚きと喜び。恐縮しきりの菊池はとっさに言葉が出ず、慌てて両手を四方八方に振り、“ボールがどこに行くか分かりません”とジェスチャーした。それでも、聞きたいことが「山ほどある」と思いを募らせてきた18歳上の大先輩に、意を決して質問をぶつけた。

 「イチローさん、ボールなんですけど、親指を掛けるところがどうも…(滑ります)」。グラブを磨いていたイチローは手を止めて助言した。「それ、よく分かる。シアトル行ったら大丈夫。アリゾナが(乾燥した気候で)異常だから」

 期待と不安が入り交じったルーキーの悩みに殿堂入り確実のレジェンドが共感し、悩みを解消すべく後押し。2人の間に、ほほ笑ましい空気が流れた。

 通常のフリー打撃では前日同様に7割程度の力で25スイングし、柵越え2本を放ったイチロー。3月20日の日本開幕戦に向けて調整は順調だ。2日後にライブBPに初登板する菊池と「対戦」するかは決まっていない。ただ、実現すれば日本No・1左腕の生きた球を体感でき、実戦勘を取り戻す場となる。