球児「今を生きる、これが自分のテーマ」 若手に伝えたい「本当のプロ」の姿
【本紙評論家 キーマン直撃 オレがキク 2】阪神・藤川球児投手(38)が、本紙評論家の大野豊氏に守護神を目指す今季に懸ける思いを語った。また、唯一と言える個人の目標には生涯防御率1点台を設定。若手の壁になるのではなく、挑戦する姿を後輩たちに示す1年とすることを誓った。
大野 キャンプも半ばまできた。(連投だった)16日のブルペンも見せてもらった。元気だね。フォームのタイミングを意識して投げていたように見えた。
藤川 途中からはそうしましたね。上半身の力を抜いて下半身主導で。マウンドも今年から少し硬くなったので。どうしても最初は上半身に頼りがちになって、下が合ってないなということで。ちょっとレストを取って、一汗かいたぐらいで力を抜いて、下半身だけ力入れて最後の腕を切るときだけっていうところは意識しました。
大野 硬いマウンドはメジャーでも経験済みだが
藤川 抵抗感は自分だけではなくて、投手陣全体にちょっとありますね。ただ、東京ドームもマツダスタジアムもナゴヤドームもそうだし。どこの球場も環境が同じになるのはピッチャーにはありがたいことなので。少しは慣れていかないといけないので、チャレンジですね。北京五輪の時もマウンドが硬くて大変だったですからね。それよりもマシですけど。跳ね返りは感じない。
大野 年齢を重ねるにつれて下半身の使い方、粘りが重要になってくるね
藤川 下半身はこの前のクール(第3クール)はノックを1時間受けたり。結局、昨年ぐらいから、ゴロを受ける形とか、股を割って捕るとか、本当に単純な作業が増えてきましたね。
大野 単純というけど、それが基礎体力であり、下半身強化につながる。投球にも生きてくる。今年で39歳。歳で野球をやるわけではないが、投手陣の中でどういう存在でありたいか
藤川 若い選手に寄っていくという考え方はもちろんありますし、そういう時間は(若手との)プライベートの時間をたくさん作っているんですけど、グラウンドに出た時は本当のプロでありたいので。その姿を見せたい。このチームは昨年最下位だったし、彼らに対して、まだまだ俺の方が力が上やろと誇示することはまずないですね。自分が向かいたいのは、打ちのめされましたけど、アメリカに向かった時のように、ですね。ドリスと勝負しているわけではない。相手チーム、11球団のクローザーを見て、自分が一番になってやると。そうすることで、若い選手は勝手に引き上がるじゃないですか。自分のチームで低い争いをしない。
大野 それはすごく大事なことだよね。
藤川 大野さんもすごい成績を残して、ものすごく練習して、先発もやって。相手チームを倒す、それを見せるからこそ、年齢は関係ないと言える。それを自分のチームでだったら、自分がいない方が若手は伸びるかもしれないっていう発想にこの2年間ぐらいは実はなっていたんです。自分の本当の力を問うなら、もう一回、独立リーグでプレーして、自分で1人で、自分の中で勝負できますし。
大野 成長したね。今の若い選手は積極的に聞きにきたりするのかな
藤川 今は多いですね。ずっと話しますね。そういう姿をクラブハウスで見てたら、今度は(他の選手が)自分も、となる。みんなが順番でね。同じ日ではないですけど、みんな見てますね。
大野 違う意味でのパフォーマンスを見せたいというのが球児の立場であってね。その部分を力のない、実績のない選手がそれを真似してほしくない。
藤川 その辺は、やっぱり自分のことを若い時から見ている裏方さん、スタッフとか、タイガースのOBで川藤さんもいますけど。たくさんの方が自分がどういう風に若い時から成長してきたか見てきてて。もちろん、矢野監督もそうですよね。監督からしたら、若い選手にチャンスを与えること、信頼してあげることで、能力が花開く。良いボール投げてるのに花が開かないのは、たぶん半々ぐらいで。やっぱり首脳陣の方も勝ちたいし。そこにとらわれすぎると…。だったら抜てきしてあげたらいい。だから、僕がセットアッパーにいると、能見さんもいる、桑原もいる、抜てきしようがない。だったら、外国人がクローザーをやっている。僕はそこにかかっていって、セットアッパーを空けてあげようと。辞めるんだったら別。辞めるのか、チャレンジするのかですね。
大野 実戦登板も始まってくる。
藤川 おそらく最初投げた時はそこそこ芯に当たると思うんですよ。ブルペンの18・44(メートル)という距離で練習しているので。それがいざ、バッターが立ってきての時間が、ある程度欲しいですね。この調整期間は、ある時から確実に必要なんだなと(思った)。このゾーンに投げたら打たれる。逃げるのか、もう一つ段階を上げるのか。これは見てる人には分からないんですけど、焦らずに全体を少し見ていただいて。自分の最終目標はチームが勝つことなので。見てる人にプロってすごいなと思ってもらいたいし、その代表でありたいし。菅野というピッチャーの素晴らしさもあると思うけど、広島で言えば津田(恒実)さんの生き方というか。凄いストレートという。そういうものもプロ野球は大事ですし。それで成績をしっかり出す。みんなが野球がうまい(だけ)では…夢のある世界としては、果たしてそれで、というのも感じるし。やるならとことん突き詰める。いろんなところで、僕も変化球うまくなりたい、7割の力、10割の力で(投げ)分けてと思いましたけど、魅力って自分で求めるものじゃない。
大野 数字は置いておいて、この時期は体を作って、最終的には持ち味であるストレートに磨きをかけて。
藤川 それでね、今の若いイケイケの選手を打ち取っていきたいですね。(他球団の主力も)子どもの時に僕らを見てた選手になってしまっているので。大野さんも経験あると思いますけど“昔は昔は”というのを絶対に言わせない。今を生きる、これが自分のテーマだし。ユニホームを着るのはそういうことだと思う。
大野 今の時代の中での球児の姿。この歳で、この時期にこれだけのボールを投げられる姿をしっかり見せて。その中でこのキャンプしっかり過ごして欲しい。シーズンに入ったら甲子園。地元で勝たないといけないよ。
藤川 僕はカープにやり返さないといけないので。みんな持ってますよ。絶対に広島にやり返すと。それがこの1年なのかは分からないですけど。球団からしたら、何年かかけてでもやり返してやろうと思ってますよ。
大野 俺のイメージではカープも3、4年前は決して強いチームのイメージはなかった。それで若い選手がグッと伸びてきて。そこに黒田とか新井がいて。そういう中でチームができてきた。阪神はそれを3、4年遅れて追っかけてきてるのよ。それが今年なの。ということは、球児が黒田の立場よ。球児の存在がチームの教材になるという立場でシーズンを迎えて欲しい。