ブラジル帰りの阪南大・垣下監督、初の1部采配に意欲
ブラジルで指導者をしていたという異色の経歴を持つ監督が、自身初の1部リーグ戦に臨む。近畿学生野球連盟の阪南大・垣下真吾監督(27)は「毎日、僕の方が勉強させてもらっていますよ」と笑う。
岐阜県出身で中学時代はスキーと野球の二刀流。高校は遊学館(石川)に進み、同期の三木亮(現ロッテ)らと甲子園を目指した。日体大4年時には控え投手として全日本大学野球選手権で4強入りに貢献。高校野球の指導者になりたいと教員を考えていた時に、大学の先輩の黒木豪さんから国際協力機構(JICA)海外協力隊を紹介された。
「ブラジルに2年間行けて、野球を教えることができるぞ――」
大学卒業後、すぐ教員になれる保証がなかったため、社会勉強の意味も含めて行くことを決意。南米大陸のほぼ中心に位置するクイアバで少年たちに野球を教えることになった。言葉が通じないという困難はあったが、身ぶり手ぶりでコミュニケーションを取るうちにポルトガル語をマスター。当初の期限を1年延長して、17年7月に帰国した。同年秋に、知人を通じて阪南大の監督をやってみないかという打診があった。
「こんなチャンスを逃したら後悔すると思って飛びつきました」
17年秋季リーグ戦で2部降格が決定した後の12月、26歳の若さで就任。日体大の同期で、徳島県内で教員をしていた竹田幸成さんをヘッドコーチとして誘い、18年4月から二人三脚で指導することになった。
選手が伸び伸びとできる環境づくりを心がけている。初采配の18年春季リーグ戦では、ミスした選手が指導者の顔色や反応をうかがうことが多かったからだ。
「ウチの選手は、相手じゃなくて自軍のベンチと戦っている感じがしました」
怒ることが好きじゃないという監督の考えは、普段の練習にも反映される。発生したミスを指摘することがあっても、怒声が響くことはない。
「“楽しさ”と“おちゃらけ”の一線は引いてほしいと思います。昨年の秋に勝てなかったら、私のやり方が批判されたんでしょうけども」
18年は春、秋ともに2部優勝。秋は大阪観光大との入れ替え戦を制し、3季ぶりに1部へ復帰した。
岐阜から石川、神奈川、ブラジル、そして大阪。流浪ともいえる野球人生について「自分にとってのキーマンとなる方がいたから」と運命に感謝する。「まだ(繁華街の)難波に行くのは怖い」と冗談めかす青年指揮官が、大学野球のナンバーワンに挑戦していく。