「三者三様でも願いは1つ」杉山晃基、望月大希、小孫竜二(創価大)【Future Heroes Vol.1】
これまでも小川泰弘(ヤクルト)、八木智哉(現中日スカウト)池田隆英(楽天)、石川柊太、田中正義(ともにソフトバンク)ら多くの好投手をプロ野球界に輩出してきた創価大。今年はドラフト指名が期待される4年生投手が3人も在籍している。同大学で3投手が同時に指名されれば昨年の東洋大に続く快挙となるが、現在の思いや将来の展望などを聞いた。
この3人の中で、実績で頭ひとつ抜けるのは杉山だ。最速154キロのストレートにキレの良いフォークやスライダー、ツーシームを織り交ぜる投球でドラフト上位候補に挙がる。
東京新大学リーグで1年春から登板機会を得て、2年春から積み上げた白星は「18」を数える。その間の黒星はわずかに1つのみ。「内容の濃い3年間でした」と振り返るように豊富な経験を重ね成長を続けてきたが、昨年は大きな悔しさの残る1年となった。
春は5勝でリーグ優勝、秋は3勝でリーグ2位ながら代表決定戦を勝ち抜き全国大会に駒を進めたが勝利を掴めず。春は初出場の宮崎産業経営大に7回途中5失点、秋は1回戦を勝ち上がってきた関西国際大に6回4失点。ともに走者を背負った要所で本塁打を打たれた。それだけにセットポジションでの威力を落としている原因ともなってい右足(軸足)が早く折れることなど課題を明確にしてオフシーズンを過ごしている。取材当日のブルペンでの投球では両コーナーの低めに威力・キレともに十分な球を次々と投げ込んでいた。ドラフトへの思いを尋ねると迷いなく「1位で行きたいです」と即答。
年間を通した個人目標は「コンディションに合った投球ができるようにしたいです」と、厳しさの増すリーグ戦、そして昨年悔しさを味わった全国大会での変わらぬ好投を誓った。
小孫は遊学館時代に甲子園に出場。九州学院戦に先発し9回5安打3失点完投でチームを勝利に導き、続く東海大相模戦も先発したが、4回途中8安打6失点でその後全国制覇を果たす強打線に飲み込まれた。「今思えば負けた東海大相模が優勝してくれて良かったです」と、カラッと笑うように前向きで明るい性格は人を惹きつける。
だが、この3年間は「自分の力を出せませんでした」と悔しそうに振り返る。1年春から登板機会を得ながらも3勝以上を挙げたのは2年春(3勝)と3年秋(5勝※最多勝)のみ。最速150キロのストレートやスライダーなどの変化球に加えてフィールディングも器用で総合力は高い。指導20年を超える佐藤康弘コーチは「変化球はすべて良いし、フィールディングはこれまでの創価大で見てきた投手で一番かもしれない」と太鼓判を押す。それだけに変化球ではできているヒップファーストのフォームでストレートも投げることや、帽子の裏にも「攻」の文字を入れているように「受け身になってしまうことがある」という精神面を見直し、今季の飛躍を目指す。
身長186センチの長身を生かした角度とキレのある最速146キロのストレートを投じるなど、3人の中で最も恵まれた体格の望月は昨秋の終盤に台頭した。2人と同じく1年春から登板機会を得ていたが、右ひじの故障などもあり3年間のリーグ戦5勝と未完の大器だった。
そんな中、昨秋の明治神宮大会出場をかけた関東代表決定戦の上武大戦で鮮烈な好投を見せる。6回途中からマウンドに上がると、角度ある球を強気で投げ込んでいった。8回に1点こそ失うが、延長10回のタイブレークでは3人の打者全員を外野フライに打ち取ってゲームセット。「初めてやりました」と笑う両手でのガッツポーズをして、仲間たちと喜びを分かち合った。
ここで掴んだ自信をもとに、今季は調子の波を少なくし年間を通した好投を見せていけば、目標とするプロ入りも十分視野に入ってくるだろう。
岸雅司監督は「三者三様。みんな群れすぎることもないし、それでいて仲も良い」と3人を評し、当人たちも「刺激となる存在」とそれぞれを認め合う。スリーショットの撮影時には、それぞれがいじり合って笑いの絶えない和やかな雰囲気だった。
ライバル意識は強く持ちながらも今年一番の目標は「日本一」と口を揃えた。三者三様の輝きを放てば、創部史上初の快挙も夢ではない。
文・写真=高木遊
小孫試合写真=馬場遼