本命レース前だからこそ「カーボローディング」、正しい方法を再度確認!
マラソンシーズンも後半戦。東京や名古屋ウィメンズなど、皆さんにとってのシーズンを締めくくる本命レースが近づいて来た方もいるのでは。
フルマラソンレース前の定番になりつつあるのが、“カーボローディング”。フルマラソンのエネルギーを貯蓄するための食事方法として、ここぞとばかりにご飯やラーメン、パスタなどの炭水化物をたくさん摂る方もいると思います。実は、カーボローディングはただ炭水化物を食べればOKという訳ではなく、やり方によって逆効果にもなりかねない“諸刃の剣” でもあります。
大一番となる本命レースで、これまで積み重ねてきたトレーニングの成果を最大限発揮し、自己ベストを更新できるよう、実践を踏まえたカーボローディングのポイントをご紹介します。
カーボローディングとは
カーボローディングとは、ヒトの体内で貯蔵される『グリコーゲン』の貯蔵量を高める栄養的な方法を言います。グリコーゲンは、比較的強度の高い運動をする時に使われるエネルギー源です。理論上、フルマラソンでは通常体内に貯蔵されているグリコーゲン量では不足するため、カーボローディングでレース直前にエネルギーを蓄えていきます。
カーボローディングは“グリコーゲンローディング” とも言われることがあります。“カーボ” は炭水化物の英語表記『carbohydrate』が由来とされています。
トライしてみよう!!
カーボローディングをする際の食事は普段とは違うため、思うように上手くいかない場合もあります。まずは、本命レース前の長い距離を走る練習や大会のときに一度試してみることをオススメします。
その際、チェックしたいのは『どの程度食べて大丈夫なのか 』。普段と違う食事バランスになるので、食物繊維などが不足し、当日のお通じに影響が出ることもあります。「あの食事パターンだと便秘になっちゃうな」というときには、野菜(例えばカボチャやサツマイモといった根菜類)や果物を増やしてみると、炭水化物の量を確保しながら食物繊維も適度に摂れて、お通じへの影響も緩やかになります。
また、カーボローディングにより体重は1~2%の増加が見込まれます。実際に走ってみて違和感があるかどうか試してみてから、本命レースで取り組むようにしましょう!
カーボローディングの3つのポイント
では、実際にカーボローディングは、どのように行っていけばよいでしょうか? 大事な3つのステップを参考にしてみてください。
1.レース1週間前~4日前の間にトレーニングランを
グリコーゲンの貯蔵は『グリコーゲンの消費』があってはじめて起こります。そのために大会の1週間(7日)前~4日前の間に、ある程度の強度のランニングをする必要があります。というのも、
“片脚のみの運動を3日間の高糖質食を摂取すると、運動を行った脚のみにグリコーゲンの超回復(貯蔵)が生じる” Bergström, Jonas, and Eric Hultman. “Muscle glycogen synthesis after exercise: an enhancing factor localized to the muscle cells in man.” Nature 210.5033 (1966): 309.
という研究結果があるように、ただ高糖質食を食べるだけでは効果を得られないのです。レースまで疲労が残らないように、1週間~4日前にレースペースで10km程度走って、しっかりと体に刺激を与えることで、ようやくカーボローディングをする準備が整ってきます。
2.レース3日前~前日まで『ごはん多め、脂肪少なめ』
食事では、どんなものを食べればよいのでしょうか?
現在推奨されている方法は、レース3日前から『高糖質食』=『ごはん多め、脂肪少なめ』を食べ始めることとされています。摂取カロリーは普段とあまり変えることはないため、ご飯などの主食を増やす分、脂肪分の少ない主菜にしていく必要があります。例えば、豚カツやから揚げではなく、親子丼や焼き魚にするといいですね!
また、アルコールの摂取はグリコーゲンの貯蔵を抑制してしまいます。カーボローディングをするときは、少しだけ我慢して、ゴール後に美味しくいただきましょう!!
3.当日の朝は “軽め” のエネルギー補給で
予定通りにグリコーゲンローディングが進んでいれば、当日の朝食は少し軽めでもOKです。
睡眠時に肝臓のグリコーゲンが半分程(グリコーゲン250kcal分の消費)に低下してしまうため、朝食でその補充をする必要があります。このとき、無理して食べ過ぎてしまうと、スタートまでに消化しきれない可能性も出てきてしまいます。消化しきれない状態で走ると、血液の循環が悪くなり、筋肉にうまくエネルギーが行き渡らなくなってしまいます。また、胃に残っていれば逆流して吐き気を催したり、小腸に残っていると下痢や腸の痙攣が起こることもあります。
そのためにも、当日の朝は比較的 “軽め” の食事がベストです。
オススメの朝食例)
・遠征先の場合
おにぎり2~3個+インスタントお味噌汁(コンビニでも準備できますね ! )
・自宅で食事ができる場合
蜂蜜トースト(2~3枚)や焼き餅(4個前後)に茹で卵(又はスクランブルエッグ)と果物1つ
などがオススメです。
4.荷物預け時間のスタート60~30分前の糖質摂取は控えて
「なるべくエネルギーを蓄えておきたい、節約しておきたい」とスタート時間ギリギリまで炭水化物を摂る方もいるかと思いますが……、スタート60~30分前に炭水化物を摂取すると、血糖値を下げるホルモンのインスリンがちょうどスタート時に分泌され、ランニングによるエネルギー消費(=血糖利用)と相まって低血糖(インスリンショック)を起こすリスクがあります。
もし直前まで炭水化物を摂っておきたい場合は、
- スタート1時間前までに摂る→血糖値が落ち着いた状態で走る
- スタート数分前に摂る→血糖値が上がり切る前にエネルギーとして利用してしまう
ことをオススメします。最後の最後は走ることに集中できる状態でいることが、レースでしっかりと走るために大切なことだと思います。当日は慌てず、無理せずマイペースに準備を整えましょう!
さぁ、これでレースは『速く』走れる! ?
ここまでカーボローディングについてご紹介してきましたが、カーボローディングを取り入れることで、速く走れるようになる訳ではありません。車で言う『ガソリン満タン』の状態と同じなので、エネルギーを持続したまま、一定のペースで長時間走り続けることが期待できます。
カーボローディングを含めたコンディショニングはとても複雑で、いつものコンディションと異なる要因にもなります。そのため、事前に試してみて調子が上がらないようであれば、無理をしてカーボローディングをする必要はありません。
大事なことは、怪我を予防しながら、日頃からしっかりとトレーニングを積み重ね、ベストなコンディションでスタートラインに立つことです。どんなことがあっても、ここまで頑張ってきた自分を、仲間を、みんなで褒め称えましょう! そしてまた、新しいステップを踏んでいきましょう! みなさんの活躍を応援しています。
■本命レースの前に合わせて読みたい
「できた!」の達成感をたくさん集めよう!! 初心者ランナーがフルマラソンを完走するコツ – RuntripMagazine[ラントリップマガジン] |
レース当日の腹痛トラブルを回避!! 前日までと当日にすること – RuntripMagazine[ラントリップマガジン] |