【八戸学院光星】昔も今もハンデはない!準備と対策でセンバツ優勝を狙う

2018年秋、5年ぶり5回目の東北大会優勝を収めた八戸学院光星。夏の甲子園を経験したメンバー5人を擁し、経験力と総合力で勝ち上がった。自慢の室内練習場で技術を磨き、2季連続出場となるセンバツで初優勝を狙う。

見た瞬間、思わず「すごい!」と声を上げそうになる。広さ60m×40m。一度に6カ所バッティングが可能で、全面を使えば内野シートノックを行える広さだ。八戸学院大と共用する室内練習場は、2014年12月に完成した。全面人工芝のオールフラットな機能性に加え、場所が校舎と野球部寮のすぐ隣という好立地。専用グラウンドが霜雪で使えない12〜3月の間も、ブランクなく技術練習に打ち込むことができる。アマチュア野球界ではトップクラスの室内練習場と言っていいだろう。この日はマイナス気温と降雪のなか、選手たちが声を響かせ、威勢よくバッティング練習を行っていた。

実戦練習だけが、練習ではナイ!

「ハンデなんて言うてたら、その時点で負けですわ」。

東北のハンデについて聞くと、仲井宗基監督はトーンの高い関西弁で笑い飛ばした。大阪府出身。東北福祉大学時代を含めて約30年間、東北の地で生活をしているため、寒さも雪も慣れっこだ。大学卒業後、コーチ、部長を経て2010年に監督就任。2011年は3季連続甲子園準優勝を果たした。就任8年で10度の春夏甲子園出場。通算20勝(10敗)を挙げ、過去10年間の東北勢で最も甲子園勝率の高い監督でもある。

仲井監督が「ハンデはない」と自信を持って言えるのは、立派な室内練習場を持っているからではない。2006年の坂本勇人選手(巨人)、2012年の田村龍弘選手(千葉ロッテ)、北條史也選手(阪神)がいた時代は室内練習場がなかったが勝ってきた自信がある。当時は冬に体育館で基礎練習をしたり、海岸の砂浜を走ったり、雪かきで筋力アップを図るなどの工夫をし、時には50km先の室内練習場を求めて岩手まで遠征したこともあった。
「もちろん、室内があることに越したことはありません。でも、ないならないでできることがある。体育館でのボール取りは細かい動きが身につきます。基本練習がしっかり身につく期間となるのです」と振り返る。

武岡龍世主将(2年)は「実戦練習だけが練習ではありません。冬は冬にしかできない練習があるし、光星の練習は目的意識が高いので不安になることはありません」と言い切る。八戸学院光星の強さは、長い冬をハンデと思わない前向きな思考と、計画的な練習メニューが土台となっている。

U-18コーチを務めた3度とも翌春にセンバツ出場

センバツ出場する今年は、3月の解禁日から甲子園モードに切り替わる。「雪のない福島や北関東に行って土の上の感触を取り戻して行きます。最終調整はセンバツ前に関西のチームとの練習試合。ここで細かい課題を見つけ、修正してから本番。試合前のデータ分析もしっかり行います」。

仲井監督は10度の春夏甲子園出場で一度も初戦敗退をしていない。これまで3度U-18(高校日本代表)のコーチを務めているが、3度とも秋の公式戦に出遅れることなくセンバツ出場を果たしている。このあたりの「準備力」も優秀だ。「行き当たりばったりはだめ。計画的な準備が勝負を決める」が口癖だ。

甲子園常連校となり、甲子園の1、2回戦で勝って喜んでもらえるチームでなくなっている。それだけに「決勝まではまぐれでも行けますが、優勝するのは運だけではできない。今はまだ優勝するための本物の力が足りない。漠然ではなく本気の練習をしなければいけないと思っています」。眼光鋭く、つぶやいた。

「スライドボード」を使っての股関節強化

光星の冬練習はレギュラーと控えを分けず、部員全員が同じ練習を行う。チームの一体感が強まり、モチベーション維持につながっている。
この日は練習の最後に、昨秋から導入した「スライドボード」を使っての股関節強化が行われた。選手全員が専用のシューズカバーを履いて、ボードの上で左右にスピードスケートの動きをする。悲鳴に近い奇声や笑いが起こり和やかなムードに包まれた。
仲井監督が通販のアマゾンで取り寄せたそうだが、適度に流行を取り入れて飽きさせない点も仲井監督らしいアイディアだ。室内の外では、雪かきに汗を流す選手の姿が。雪のない土地から来た選手は初めての作業に「入学したころは寒さと雪にビックリしたけどもう慣れました」と笑顔だった。(取材:樫本ゆき/写真:松橋隆樹)