【サムライの親たち】侍ジャパンの親たちの「子育て」(宇野家/前編)
ヤキュイクでも少年野球向けの基礎知識や練習法で度々登場していただいている、市川シニアの宇野誠一監督。家庭でも3人の息子さんたちとともに野球に取り組み、長男隼太朗選手は昨年まで桐蔭学園のレギュラーとしてプレーし、次男の竜一朗選手、三男の真仁朗選手はともにU12の侍ジャパンにも選出されている。そんな宇野さんに家庭での方針、子育て論などをうかがった。

宇野さん自身は東京都大田区出身。中学卒業後は隣県神奈川の桐蔭学園に進学し、阪神や中日でも活躍した関川浩一さん(現ソフトバンク3軍監督)らとともにプレーした経験を持つ。高校卒業後は獨協大学を経て社会人野球のリクルートに入社。その後ローソン、フェデックスに移籍し、コーチ、監督としても長く社会人野球に携わった生粋の野球人である。
長男の隼太朗くんが誕生したのは宇野さんが31歳の時。当時はフェデックスで監督を務めていた時期であり、乳幼児期はなかなか子育てに関われなかったという。
――普通の仕事をしているだけでもなかなか子どもとの時間をとることは難しいですが、更に社会人野球の監督もされていることで、かなり時間がなかったのではないですか?
「おっしゃる通り平日は仕事が遅くて、長男が小さい頃はまだ監督もやっていたのでなかなか時間はとれなかったですね。オフの日にキャッチボールやバッティングセンターに連れて行くようになったのが野球のスタートだと思います」
――お子さんにはやはり野球をやってもらいたいという思いは強かったですか?
「そういう気持ちは当然ありましたが、子どもの頃は野球だけでなく色んなことをして遊んでいました。3人とも水泳と体操教室に通っていましたし、小学校3年生まではサッカーをやっていました。ただ最後は野球をやるだろうなという漠然とした思いはありましたね。
自分はずっと野球に関わってきましたし、野球からもらったものが大きい。辛いことはもちろん多いですが、それ以上に嬉しかったことが強く印象に残っていますので、子ども達にもそれは体験してもらいたいですよね」
――お子さんが野球をやるようになってから少年野球の指導にも携わるようになったとのことですが、何かきっかけはあったのですか?
「今思うと長男にはよく叱っていたと思うんですよね。まだ5歳くらいの時にバッティングセンターに連れて行って、ボールが怖いから逃げることに対して叱ったりしていました。まだ小さかったので当然怖いですよね。その後、長男が小学校4年生の時に少年野球チームに入ったのですが、そこでも怒鳴られたりしていることが多くて、このままだと野球が嫌いになるなと思ったんです。
リクルートで働いていたときの先輩の言葉なのですが『楽しくなければやったところで知れたもの』という言葉がありまして、野球なんかまさにそうだなと。やらされて上手くなったものと、自分で夢中になって上手くなったのでは全然違います。そういうことを考えるようになって、長男が5年生の時からチームのスタッフとしてもかかわるようになりました」

3年後には次男の竜一郎くん、その4年後は三男の真仁朗くんが誕生。二人とも小学校4年生からは野球を始めることになるが、その背景には父親だけではなく長男の隼太朗くんの影響があったようだ。
――兄弟で同じことをするのを敬遠するケースもありますが、竜一郎くんと真仁朗くんはスムーズに野球を始めたのですか?
「長男の時は叱り過ぎていたというのはあったので、次男と三男については遊びながら色々やったということはあります。あとは長男を見ていたというのは大きいと思いますね。
野球を嫌だった時期もあったかもしれませんけど、地域のチームではいつも活躍していましたし、下の二人はその姿を見て自分たちもああいう風になりたいと感じたところはあったと思います」
――真仁朗くんの話では「兄弟で野球の話をすることはほとんどない」とのことですが?
「どうしてもそれぞれ自分(宇野さん)と話すことが多いので、兄弟同士ではないのかもしれませんね。ただ長男の時は『素振りを何本やれ』みたいな感じで言っていたこともありましたが、途中から押し付けることはやめました。今は主に三男ですが、どんなことをやったのかを確認する感じです。プレーについても同じで、準備が疎かになっているなと感じたらそれを指摘するようなことはありますが、結果が出なかったことに対してどうこう言うことはありません。
あとは、今になって思うんですが、自分も三人の息子と野球を通じて接する中で、『子どもに対してどうやって野球を教えたらよいか?』というのを勉強させてもらった部分は大きいと思いますね」

――先のことを考えて何か気をつけていたこととかはありますか?
「次男は成長が早くて早熟傾向だったので、特に故障には気を付けるようにしていました。早く体が大きくなるとそれだけ力を入れてプレーができてしまうので、とにかく無理をしないようにと。3人の中でも一番マイペースでよく食べてよく寝ていたので大きくなったのかなとは思います」
――野球以外の部分で宇野家の決まりのようなものはありますか?
「朝ご飯をしっかり食べること、晩ご飯ではおかわりをすること。学校の勉強はしっかりすること。ただ点数がどうこうということではなくて、宿題などをちゃんとやるということです。母親はもう少し勉強について言っていると思いますが。
あとはゲームは外へ持ち出さない。そのおかげで全員視力は悪くないです。本と音楽については欲しいものは常に買うことをOKしています。読書することと音楽を聴くことで感性が豊かになるかなと思うのでそうしています」(取材:西尾典文/写真:編集部)