目線をあげる!! “マラソン大会で最高の写真を撮られる方法”を担当者が明かす
マラソン大会に出場したランナーが完走後に楽しみにしているものといえば、完走メダルや完走証、レース後の乾杯、そして“写真”。一般市民にとって身近になる以前、マラソンは競技スポーツの色合いが濃く、そこで撮影される写真はアスリートのためのものでした。
スポーツ写真サイト“オールスポーツコミュニティ”を運営する株式会社フォトクリエイトは、プロスポーツ以外の現場にもカメラマンを起用し、多くのランナーたちに写真を提供し続けてきました。あらゆる現場で撮影をしてきたオールスポーツの看板カメラマンである杉本宏貴さんと営業部長の金成知さんに、これまでを振り返っていただきながら、“最高の一枚を撮影してもらうポイント”について伺いました。

東京マラソンで感じた“シャッターズハイ”
現在は、オールスポーツの看板カメラマンとして、シャッターを切り続けている杉本宏貴さん。杉本さんは、20年以上前から様々なスポーツシーンの撮影現場に足を運び、アトランタ、長野、シドニー、アテネオリンピックでの撮影も経験しているベテランカメラマンです。
その後、杉本さんは2002年に創業した株式会社フォトクリエイトの創業時から契約カメラマンとして在籍。全国各地のマラソン大会など、多くの現場を経験してきました。そんな杉本さんにとって、思い出に残っている大会とは。
「ある年の浜松シティマラソンで土砂降りに襲われて……。走っているランナーもそうですが、撮影機材のトラブルなどでとても大変だったんです」
しかし、大会後、杉本さんが撮影した写真を購入したランナーから、オールスポーツのサイトに以下のようなコメントがありました。
「悪天候でキツかったんですが、そんななか完走できて、その状況で撮影された自分の写真を買うことができて、とても嬉しいです。これをモチベーションにして、これからも走ることを続けていけそうです!」

杉本さんは「写真はその人の人生に関わっているということを強く感じました」と話します。
あらゆる人にとっての写真の価値を再確認。様々な大会での撮影を振り返り、東京マラソンを初めて撮影したときにはまた違った気持ちになったとのこと。
「次々とやってくる大勢のランナーの“ボリューム感”はそれまで体感したことがなかったんです。(休みを挟みたくても)カメラを降ろしたら撮り逃してしまうんじゃないかと思い、撮影のペース配分がわからなかったです。この時、ランナーズハイに似た“シャッターズハイ”のような感覚になっていました」
杉本さんのようなベテランカメラマンにとっても、東京マラソンの規模は他の大会とは桁違い。長時間の連続撮影に備えて、前日から水分コントロールをして、防寒にも念を入れて撮影に臨むそうです。杉本さん自身はマラソンを走ることはないそうですが、撮影の現場を通してランナーを敬うようになったといいます。
「そもそも、5, 6時間も走り続けるのはすごいと思います。トレイルの撮影では“よく、ここまで来られましたね!撮影していただきありがとうございます!” と、選手から激励されることもあります。長時間の撮影では、いかにポジティブに仕事に臨む姿勢を保つかが大切ですが、その一言だけでもすごく励みになりますね」
ランナーに刺激を受けて自らもマラソンへ
学生時代にサッカーをしていた営業部長の金成知さんは、当時サッカーをしている自分の写真がなかったと話します。金さんはフォトクリエイト入社前、2007年開催の東京マラソンの見学へ。厳しい雨のなかで行われたレースでキビキビと撮影するカメラマンを見て衝撃を受け、オールスポーツのサービスの魅力を感じたといいます。現在は営業部長として多くのスポーツ現場に足を運んでいます。
「私自身撮影はしませんが、営業担当として撮影現場に行きます。主催者と撮影場所についての調整から、実際の撮影現場でランナーとのコミュニケーションなどを行っています。いわゆる“声出し”です」

オールスポーツのサービスは撮影した写真を販売するだけでなく、より良い表情でランナーが写真に写るように、ランナーとコミュニケーションを取ることも含まれています。営業チームのメンバーは声出し以外にも風船を上げたり、旗を振ったりしてランナーにアピールをしています。金さんは、その過程でランナーに刺激をもらい、いつの間にか自分もマラソンに挑戦していたと話します。
「ランナーの皆さんとコミュニケーションを取っていると元気をもらえるので、いつの間にか自分もマラソンを走るようになって、入社後、フルマラソンに5, 6回挑戦しました。皆さんはレースの苦しい場面でも、楽しそうな顔で生き生きとしています。だからこそ、自分もやってみようと感じます」
フォトクリエイトの社員のマラソン大会への参加は強制ではないそうですが、それでも社員の1/3ほどがフルマラソンに参加しているそうです。
良い写真を撮影してもらうための“ポイントと方法”
ランナーの皆さんがより良く写真を撮影してもらうためのポイントと、その具体的な方法について杉本さんと金さんに伺いました。
大切なポイント
・写真を撮られることに慣れている人や表情が豊かな人は、写真写りが良い
・撮られることへの“意識”を持つだけで、写真の雰囲気はポジティブになる
・写真はカメラマンの技術だけで完成するものではなく、ランナーに“意識”を持ってもらうことで一緒に作りあげるもの
ランナーは、撮影ポイントでカメラマンを見つけたら、カメラマンに写真を撮ってもらうという意識を持つことが大切です。カメラマンとともに良い写真を作り上げるという意識があればパーフェクト。その意識が、表情や視線の変化を起こして、総じて写真のクオリティが上がります。
具体的な方法
【目線を上げる】
大切な要素は“目線の高さ”です。カメラ目線でなかったとしても、目線の高さが上がることで視線や顔つきが大きく変わることが多いです(左よりも右の方が目線が高い)。
【長くポーズをとる】
キツくても、カメラマンの前を完全に通り過ぎるまで長めにポーズをとることを意識しましょう。カメラマンがシャッターを切る前にポーズを解いてしまうランナーが意外に多いそうです(ゴールでは時計や足元に目を落としてしまう人が多いので、フィニッシュ時はポーズを取ったまま、ゆっくり走り抜けるのがベスト)
【金さんのアドバイス】
「それぞれの撮影場所によってランナーとカメラマンとの距離感が違うので、カメラマンを見つけたら(ランナーが思っている以上に)できるだけ長めにポーズとって欲しいですね。とにかく、それが良い写真を撮影できる確率を上げるコツの1つです。カメラマンの横を通り過ぎるぐらいまでがベストですが、その意識を持っているランナーは意外に少ないんです」
【杉本さんのアドバイス】
「カメラマンは背景に東京タワーなどの名所を入れて撮影することもあるので、人が多い集団で走っている時は横にずれるよりも前のランナーとの距離を少し開ける方が良いです。そして、長めに意識的にポーズをとっていただけると嬉しいです。その時に、視線を上げるだけで写真はすごく良くなりますし、表情を意識してもらえれば、さらに良い写真になります」

東京マラソンのような都市型マラソンでは、集団がバラけやすい後半に多くのカメラマンを多く配置しているそうですが、それでも30km以降は集団で走るランナーが多く、上記のポイントが大切です。今後は、マラソン大会での写真が“あって当たり前”から、“さらに良いものを共に作っていく”という時代になるでしょう。杉本さんは以下のように話します。
「マラソン大会の現場は、ランナーとカメラマンがお互いにリスペクトできる瞬間があるので、良い現場だと思います。10年以上、市民ランナーを撮影してきましたが、今でも感動を再発見することがあります」
写真写りが良くなれば、その写真を購入したくなります。大会に出る楽しみが1つ増えることで、走ることへの充実感が高まり、結果的にランナーの生活の質も向上していくことでしょう。皆さんもぜひ、次のレースからカメラマンを見つけたら目線を上げて、満面の笑みをできるだけ長くキープしてみましょう!
今シーズンも、杉本カメラマンは都市型マラソンを担当予定。今まで良い写真を撮ってもらったことがないという方も、レースを楽しみながら最高の一枚をカメラマンと作りあげましょう!