雄星、OP戦初黒星も夢見心地 イチがフライ処理「幸せだなあ」

 ◇オープン戦 マリナーズ0―8ロイヤルズ(2019年3月2日 サプライズ)

イチローが右翼を守る中で力投する菊池(撮影・会津 智海)

 18歳差の初共演が実現した。マリナーズの菊池雄星投手(27)が2日(日本時間3日)、ロイヤルズを相手にオープン戦2度目の先発。マイナー契約で招待選手のイチロー外野手(45)と初めて同時に出場した。菊池は3回を2安打2失点、「7番・右翼」のイチローは2打数無安打ながら、いずれも順調な調整ぶり。ルーキー左腕がマウンドで見せた一つのしぐさが、レジェンドの心をつかんだ。

 三塁のカバーへ走りながら菊池は思った。「凄く幸せだなあ」。3回無死一、二塁。ギャラガーが右翼へ平凡な飛球を打ち上げた。約50メートル先で、憧れのレジェンドのグラブに自分が投げた球が収まった。マウンドに戻りながら、イチローに向かって帽子のつばを触り、頭を下げた。

 「僕はしたつもり」と、勇気を出して試みたアイコンタクト。残念ながらプレー後に投手を見ないイチローは気づかなかったが、これを伝え聞くと感心。「余裕だね。そりゃあ、ちょっと面白い。そんなセンスあるんだ。そりゃあ、可愛いね」。時間差はあったが、27歳ルーキーから45歳へ、その思いはしっかり伝わった。

 待ちに待った登板。「オープン戦だけど、マリナーズに決まってからこの瞬間を楽しみにしていました。一生の思い出になると思います」。3回2失点で敗戦投手になった菊池だが、内容は濃い。

 2回まで完全投球で、3回をわずか39球。79%にあたる31球がストライクと制球が安定し、予定の50球を大幅に下回った。「カウントを整えることに関しては、凄く良い形でつくれている」。反省は追い込んでからの精度だ。3回にハミルトンに許した適時二塁打は「ちょっと膨らんだ」と右打者の膝元へのスライダーが、やや甘く入った。

 1死球も最速94マイル(約151キロ)の直球を武器に3奪三振。スコット・サービス監督は「ずっとここ(メジャー)にいるような雰囲気」と称賛。「見たいな」と話していたイチローは「安心感あるんじゃないの。うん。どれでもストライクが取れそう。ピッチャー有利のカウントに持っていくテクニックが相当高い」と分析した。

 帰宅前。クラブハウスの外で偶然、2人は出くわした。菊池は直立不動で「お疲れさまです」とペコリ。そこで数時間前に送った「メッセージ」への返事が、イチローから届いた。「帽子に手をやったんだって?余裕だねえ。俺、守っているときはピッチャーの方を見ないから」。ルーキーは笑顔で最敬礼。最後まで夢見心地だった。