日本ハムのドキュメンタリー映画から“見える”先を見据えた挑戦のスタンス
転がるように東京ドームを飛び出した。タクシーをつかまえ、運転手に行き先を告げる。「六本木まで、とにかく急いで向かってください!」。先の見えない不安な日々が始まった瞬間だった。
17年前の2002年。24歳だった記者はプロ野球記者1年目で東京が本拠地だった日本ハムを担当していた。初めてのキャンプ取材を何とか乗り切り、オープン戦がスタートして数日が経った3月某日。一部で「本拠地の札幌移転」が報じられたことを知り、オープン戦の取材を行っていた東京ドームから六本木にあった球団事務所に急行した。報道陣が球団幹部に説明を求めたが、一部で極秘で動いていた案件でもあり歯切れは悪い。寝耳に水だった選手や関係者からは「本当に移転するの?」と逆に質問されることも多かった。右も左も分からず、さらに「本拠地移転問題」という大きなニュースも抱えた新米記者は、ただただ戸惑うばかりだった。
数日前、札幌市内の映画館で2月15日から限定公開されている日本ハムのドキュメンタリー映画「FIGHTERS THE MOVIE~Challenge with Dream~」を鑑賞した。移転構想発覚から2年後の2004年に「北海道日本ハムファイターズ」が誕生し、その後も常に「挑戦」するスタンスで球界に新風を吹き込んでいる球団、チームの歴史が存分に分かる内容。球団OBのダルビッシュ有(カブス)、大谷翔平(エンゼルス)ら超大物も出演している。2016年に14年ぶりに担当に復帰した記者にとっては、プロ野球記者として駆け出しだった頃の懐かしい記憶が鮮明によみがえるなど楽しめた。
当初は公開期間が2月15日から28日までだったが好評につき北海道で8つ、関東、関西でそれぞれ1つずつの映画館で今月7日まで延長公開され、今後さらに期間が延長される可能性もある。すでに今月7日から10日までの4日間、北海道夕張市などで開催される「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019」でも特別上映されることが決まっている。
同映画で監督を務めた事業統括本部の小崎将史氏(39)は「先人たちが作り上げたもの、そしてファイターズの未来志向を表現することはできたと思います」と言葉に力を込める。23年には北海道北広島市内に開閉式で天然芝の世界基準の新球場が誕生する。目先の利益ではなく、10年、20年先を見据えた挑戦のスタンスは、今後も不変だ。(記者コラム・山田忠範)