【木更津総合】五島監督「コツコツやった軟式出身の子が伸びてくるのが楽しみ」

激戦区千葉にあって2016年から3年連続で夏の甲子園出場を果たしている木更津総合。チームを指導する五島卓道監督は暁星国際時代も含め多くの選手をプロ、社会人、大学球界に送り出している。そんな五島監督に高校野球で伸びる選手の特徴などについてお話を聞いた。

一球目から打ちにいける子は貴重

――監督が多くの選手をご覧になってきて、こういう選手が伸びる、選手のこういうところを見ているといったポイントはどんなところでしょうか?
「こちらからすると、それはちょっとやり過ぎだろうというくらい気持ちが全面に出てくる選手の方がありがたいですね。プレーにしても意見を言うにしても、多少横着でもこちらが手綱を締めないといけないくらいの選手がいい。とにかくやる気を見せてほしい。意欲が出ないのを引き出す方が大変です。
『三度の飯より野球が好き!』くらいの選手がやっぱり伸びると思います。ただなかなかそういう選手は少ないです。怒られることを恐れているような選手がどうしても多いですね」

――プレーの面ではどんなところに出てきますか?
「まず怒られることを怖がっている選手は一球目から打ちに行けませんよね。それをなかなか打ちにいけるようにするのは難しいです」

――大阪桐蔭の西谷監督も一球目から打てる選手を評価すると言っていますね。
「そうそう。打ちにいける子は貴重です」

――体力面などはどうですか?
「中学校の部活も制限が厳しくなって長く練習できない。硬式のチームも週末だけとなると技術面が優先される。体力作りばかりになると野球が面白くない。だからなかなか厳しい面が多いですよね。高校に入ると毎日練習もあるし試合も多いですから、それに慣れるまでにどうしても時間はかかりますね」
 
――先ほど「三度の飯より野球が好き」くらいの気持ちが大事とのことでしたが、小中学生の間に野球が好きになるためにはどうすれば良いと思いますか?
「野球の楽しさは試合に勝つことが一つと、あとはやっぱりできなかったことができるようになるという部分だと思いますね。どちらかというと後者が大きい部分を占めると思います。
(グラウンドでは内野陣が逆シングルでの捕球を練習していて)今やっている逆シングルで捕ることもそうですね。あと何のためにその練習をするのか、できるようになるとどうなるのか、それを伝えることが大事だと思いますし、うちは伝えるようにしています。あとはそれを試合で実感できた方がいいですよね。なるべく多くの選手が試合に出られるようにするということが必要だと思います」

――指導者の立場として大事だなと考えられることはありますか?
「一つ言えるのは『平等論』ですかね。レギュラーと控えの選手全員を同じように試合に使うというのは現実的には難しいですけど、チャンスを与えるということは必要だと思います。一回チャンスを逃したとしても、できるだけまたチャンスを与える。そうすればやっぱり全員に納得感がありますよね。
手前味噌で申し訳ないですけど、自分が木更津総合に来てから20年間途中で辞めた選手はいません。うちは人数もそんなに多くないですし、試合に出られる機会も十分ありますから、そういう面はあるのかなと思いますね」

時間をかけて身につけた選手は強い

――監督が最近印象に残っている選手ではどんな選手がいましたか?
「去年のチームのキャプテンの比護(涼真)っていう子は強烈でしたね。横須賀から2時間半かけて通っていました。とにかく野球が好きで、一人で声を出し続けている。試合には出られなくても2年からベンチ入り。それだけ周囲も認めているんですよね。そういう選手がいるといいチームになります。スマートな選手が多い中でそれだけ自分を主張できるというのは貴重ですよね」

――木更津総合は最初に夏の甲子園に出た時(2003年)は全員が軟式出身の選手だったと聞きました。硬式出身、軟式出身で違いなどはありますか?
「最近は硬式が多いですけど、うちは毎年ベンチ入りの5人くらいは軟式出身がいますね。軟式出身の子はどうしても伸びてくるのが遅いというのはあります。3年生の5月から6月の夏にギリギリ間に合うくらいのタイミングということが多い。そこまで待たないといけない難しさはありますけど、コツコツやった軟式出身の子が伸びてくる楽しみもあります。時間をかけて身につけた選手は強いですから。またうちはそういう子がよくいて、話としても受け継がれていますから、ある意味そういう伝統になっている部分はあるかもしれませんね」

――高校野球を続けるうえで、こういう部分を大事にしてほしいというものがあればお願いします。
「さっきも言いましたけど、無理に周りに合わせようとしなくてもいいから、どんどん主張できるようにしてほしいですね。大人や指導者は他の子と違うとどうしても抑えようとしがちですけど、そういう子の方が楽しみがあります。謙虚さも大事ですけど、スポーツなので前に出る姿勢は持っていてほしいですよね。根拠のない自信を持っていることも大事で、その時は下手くそでもできると思ってやっていればそれが実現することもありますから。指導者もそれを我慢して見てあげることじゃないでしょうか」
 
貴重なお話、ありがとうございました。

(取材・写真:西尾典文)

五島卓道監督プロフィール

1954年岐阜県出身。関高校から早稲田大を経て川崎製鉄神戸で内野手としてプレー。暁星国際の監督時代は小笠原道大選手(元日本ハム、巨人、中日)を指導。1998年に木更津総合(当時木更津中央)の監督に就任し、9度の甲子園出場を果たしている。