「事故に遭ったからこそ自分の人生を」運動神経抜群だった岩崎玉緒さんの絶望と希望

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ヨガのインストラクターとして、サップヨガの伝道師として、多方面で活躍している岩崎玉緒さん。

海をこよなく愛するサーファーであり、サップ(スタンドアップパドルボード)のバトラーであり、トライアスリートであり、ランナーでもある。

岩崎さんは、自らの可能性を信じて前に進むことで、そして、様々なコミュニティの人と接することで、自分の世界を広げてきた。

彼女のどこまでもポジティブな生き方は、多くの女性の憧れにもなっているが、ここに至るには、ある大きな分岐点があった。

ある日突然、青空のように広がっていた未来が閉じられる

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子供の頃から運動神経抜群という人がいる。岩崎玉緒さんは、まさにそんな女子だった。

ハンドボールで、高校時代に国体で全国優勝を経験し、名門・日本体育大でも、1年生の時から中心選手として活躍。アスリートして第一線でやってきた自信は、岩崎さんの大きな支えになっていた。

大学卒業後、岩崎さんはインターンシップでカナダへ。日本の文化を伝えるボランティアの教師として1年間、現地の小学生と交流した。

充実した日々を送っていた彼女に、霹靂(へきれき)が襲ったのは、帰国まであとわずかという時だった。自転車に乗っていた岩崎さんは、あろうことか右折してきた車に巻き込まれてしまったのだ。2週間、集中治療室に入らなければならないほどの大きな事故だった。飛ばされた時、腕で顔を守っていなければ、命も危なかった。

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身体能力に恵まれ、若く健康に満ち溢れていた彼女は、下半身の感覚を失う。医師からは「左足が動かなくなる可能性がある」と告げられた。どこまでも青空のように広がっていたはずの可能性が、突然閉じられてしまった絶望感……岩崎さんは「死にたい」とすら思った。

あれから15年--。当時を振り返ってくれた岩崎さんの瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。

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一時はパラリンピック選手の道を模索した岩崎さんだったが、リハビリを続けていくうちに、足の指が動くように。そして、8カ月後には、なんとか一人で歩けるようになった。こみ上げてきたのは、感謝の思いだった。

「両親やサポートしてくれた周りの人のおかげで、新しい人生をもらった気がしたんです」

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岩崎さんは、「新しい人生を大事にしよう」「事故に遭う前よりも、しっかり生きていこう」と決意する。ただ、気持ちの整理と心のリハビリが必要だった。彼女は、まずインドへと向かう。治療を担当してくれた医師の家族がインド人の有名なヨガの先生で、影響を受けたのだ。

インドでは、ヨガの奥深さに触れた。

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「行くまでは、ポーズを極めるのがヨガだと思っていました。もちろん、ヨガにはいろいろなスタイルがありますが、ヨガの本質は精神性にある。ただ座って瞑想しているだけでも、いろいろな感情が湧き上がり、エネルギーを感じるのがヨガだと思うようになりました。ヨガのインストラクターになってからも、生徒さんの内なるものを引き出すよう、努めています」

事故に遭ったからこそ、自分の人生を生きたい

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インドから帰国後、バックパッカーとなって世界中を旅して回った。新しい人生を始めるには、まだ時間が必要だった。

これまで35カ国以上を旅し、現在でも1年の半分は活動拠点の湘南を離れている。岩崎さんにとって、旅はエネルギーの源だ。旅先では必ず走っているという。ハワイ島、サンフランシスコ、バリ……、海外で走った場所は枚挙にいとまがない。

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「車移動ではなく、自分の足で走ると、その土地がよくわかりますし、そこで暮らしている人からパワーをもらえるんです」

バックパッカーの旅を終え、「とにかく働かなくては」と正社員として航空会社に就職する。客室乗務員としての仕事は楽しく、安定した会社に不満はなかった。だが、次第に「これでいいのか……」と考えるように。そして、周囲からの反対もある中、ヨガのインストラクターとして生きていく決意をした。

「あの事故に遭ったからでしょうね。事故に遭ったからこそ、自分の人生を生きたい、と。会社に守られていると、それができないと思ったんです」

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はじめはフリーランスでやっていく厳しさを味わったが、少しずつ軌道に乗せていった。やがて、全国の野外イベント、国内外のヨガリトリートの講師を務めるようになり、ヨガモデルやヨガ本の監修など、活躍の場を広げていった。

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また、7年ほど前に『Stand Up Paddle(SUP)』に出会い、日本のSUP YOGAの先駆者に。現在も普及活動に情熱を注いでいる。今年4月には、ヨガやSUP YOGAインストラクターのポジショニングを向上させるため、人材派遣会社を立ち上げる予定だ。

自分の可能性を信じ、自分が本当にやりたいことを実現してきた岩崎さん。「もし事故に遭っていなかったら、どうでしたか?  」と問うと、こう答えてくれた。

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「事故に遭わなかったら、命に対してここまで深く考えなかったかもしれないですね。今ここに生かされているのは当たり前ではないし、命があって健康な身体や愛する人が側にいることも奇跡。周りの人の支えや繋がりがあって今がある。そのことに心から感謝できるようになりました。そして、どんなに辛いことがあっても生きてさえすれば何とかなる。だから明日死んでも想い残すことがないように愛情を注ぎ、夢と情熱を持って生き抜きたいし、人に何を思われても“自分らしく”前を向いて歩んでいこう!そう思えるようになったんです。これも事故があったからこそと、今では感謝しています」

ランをしながら、頭に浮かぶことを整理する

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岩崎さんは朝、辻堂の海岸沿いを30分から40分走ることをルーティンにしている。葉山や鎌倉でトレランを楽しむこともある。岩崎さんにとって、ランは考える時間だ。

「『走っている時は無になる』と言う人もいますが、私の場合は、走っているといろいろなことが頭に浮かんでくるんです。走りながらそれを整理しています」

砂浜をよく裸足で走っているという。「走った距離以上に負荷がかかるので、トレーニングになりますし、何よりも気持ちいいので」

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オリンピックディスタンスのトライアスロンの大会に出場したこともある岩崎さんは、いまなお、現役のアスリートだ。SUPのバトラーとして世界大会にも出場。「トレーニングを積み上げたチャレンジは、自分を高めてくれる」と話す。

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サーフィン歴も長い。初めて波に乗ったのは、事故のすぐ後に訪れたインドのゴアだった。湘南に居を移して12年。「海はわたしの先生」と言う。

「激しい波にもみくちゃにされた時は、生かされていて良かったと思いますし、気持ち良く乗れた時は、自分が自然の一部に感じられます。波って、人生と同じでコントロールできないんです。だから、波も人生も、自分でコントロールしようとしなくてもいい、『Go with the flow』 力を抜いて自然体でいれば行き着くとこに流れつく。あとは自分自身を信じること、そう考えているんです」

彼女の可能性への挑戦は、もちろん、まだまだ続く。

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「これからの仕事の展望は、ヨガ講師の育成と日本から海外へ発信していくことを考えています。それと、女性が元気になる活動ができれば。私は、ヨガ、サーフィン、SUP、SUP YOGA、トライアスロン、ランニングと、様々なコミュニティに身を置いているので、これらを生かしながら、クロスオーバーするコミュニティを作りたいと思っています。1つのことに集中して取り組む人に、新たなことに挑戦するキッカケをつくることで世界が広がり、気付きや学びが得られると思う。人と人とが繋がり、生きる喜びやエネルギーを感じられる、人生がより豊かになる時間や空間をシェアリングしていきたいと思っています。」

岩崎さんならきっと、実現するに違いない。

Tamao×Runtrip マインドフルネスリトリートを開催!

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グローバルに活動のフィールドを広げ、独自のスタイルでランニングを楽しむ岩崎さん(Tamao)とRuntripがコラボレーションし、マインドフルネスリトリートを5月に開催する。
マインドフルネスとは“今この瞬間に意識を向ける”ということ。南国Hawaiiの地で、ココロもカラダも開放し、自身に意識を向ける、本当の自分に出会うワークショップ。岩崎さんの無条件の愛に包まれながら、ヨガ、ランニング、ハイキングなどのアクティビティを通じて、改めて自分らしさを見つける旅に出てみてはいかがだろうか。

【Tamao×Runtrip マインドフルネスリトリート】
〜心の断捨離!自分らしさを見つけるディープなハワイ6日間の女子旅〜

南国ハワイで”本当の自分と出会う”6日間。
ハワイの自然を満喫しながら、Morning Rutripやヨガ、サーフィンにハイクも楽しみます。
メインコンテンツは、マインドフルネスの“心の断捨離”ワークショップ(WS)”
 毎回キャンセル待ちが出るほど人気を集めるWS。
Runtrip編集部の石塚がRuntripを担当するこの機会にぜひ。

【開催日程】
2019年5月9日(木)~5月14日(月) 4泊6日

【おすすめポイント】
●女性限定の定員13名のツアー!
●ランやヨガ、そして夜のマインドフルネスワークショップでリフレッシュ!
●自然あふれるマノアの滝、『ヨガフェスタ in Hawaii』の朝ヨガも楽しめる

ツアー詳細はこちらから

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岩崎玉緒〇いわさき・たまお(Tamao)1982年生まれ。海をこよなく愛するサーフヨギーニ、パドラー、ライフスタイルアドバイザー。自然やスポーツと調和のとれた生き方を追求するライフスタイルと活動は、全国のナチュラル思考の人たちから熱い支持を受けている。現在は、全国の野外イベントや、国内外のヨガリトリートの講師を務める傍ら、ヨガモデル、ヨガ本や雑誌の監修など、幅広く活動。一方で、SUP YOGAの日本のパイオニアとして、普及活動に注力している。株式会社BEACHTOWNのディレクター、材木座テラスにあるヨガスタジオgypsea by HONEYのプロデューサー(現在も)を経て、今年4月に自身の会社を設立。中学、高校はハンドボール選手として、全国トップレベルでプレーした経験を持ち、今もヨガ講師として最前線で活躍しながらも、トライアスロンやSUPの国際大会に出場するアスリートでもある。
HP: https://www.tamaoyoga.com

(写真 Eliana