子どもの能力をさらに引き出し、自立する力が身につく野球教室|POCARI SWEAT presents. 仁志敏久の野球愛教室(第1回)

2月下旬、「私生活での取り組みこそ、野球に大きく影響する」と語る仁志敏久さんが講師を務める『POCARI SWEAT presents.アスリートに学ぶ!一流学 仁志敏久の野球愛教室(主催:BASEBALL GATE)』が開催されました。全3回で行われるこの野球教室では、技術面を教わるだけではなく、保護者の方と協力して普段の生活のなかから子どもたち自身の能力や行動力を高めるプログラムを行います。その第1回の様子をレポートします。

純粋に野球を楽しめるチーム『小金原ビクトリー』

今回、野球教室を受けるのは千葉県松戸市を拠点に活動する『小金原ビクトリー』。
今年で創設50周年を迎えるチームを指揮するのは年代別代表チームでのコーチ経験もある高橋雄太監督です。
高橋監督は「勝利だけを目指すのではなく、野球の楽しさを味わって欲しい」と語るとおり、グラウンドではプレー中のミスにもコーチの厳しい指示が飛ぶことはなく、子どもたちが前向きに野球を楽しめる環境が整っています。

試合前の確認を行う高橋監督


野球教室当日、練習試合が組まれていた小金原ビクトリーのもとを仁志さんが訪れました。仁志さんが見守るなか、小金原ビクトリーは初回に先頭打者ホームランで先制し、幸先よくスタートしたものの、相手チームの強力打線に捕まり、2-9で敗戦。仁志さんは試合の様子をスコアにつけながら、プレー中の子どもたちの様子やベンチの雰囲気、ピッチ全体に目を配ってその様子をメモに取っていました。
高橋監督は試合を振り返り、「いつもとは違った緊張感のなか、練習の成果を存分に披露してくれた」と笑顔で語っていたこともチームの雰囲気を表す印象的なシーンでした。

試合後にはポカリスエットで水分補給


良かった点・悪かった点を子どもと一緒に考える

昼食を終え、午後からは座学の時間がスタート。
仁志さんは子どもたちに練習試合で良かった点や上手くいかなかった点を『振り返りシート』に書いてもらい、優しく問いかけながら試合を振り返っていきます。『振り返りシート』には、良かった点をさらに良くするにはどうすればいいか、反省点を克服するにはどうすればいいかについても、子どもたちが自分で記入します。


「ライト前のフライを取れなかった」という反省点を聞いた仁志さんは、「ボールを追っている時、落下位置のアドバイスとか、周りから声は聞こえた?」と質問。はっきりと思い出せないでいると、「周りはきっと声掛けをしていたと思うんだけど、本人に届いていないと意味がないよね」と全体に語りかけ、「自分がボールを取る側だった時に、どういう風に声をかけてほしいか考えて、次に同じようなプレーが起きた時は、相手のことを考えて声掛けしてみよう。それが本当のチームワークだと思うよ」と本人だけでなく、チームでも改善できることを、具体的にわかりやすく説明していました。

子どもたちの発言を否定することなく、彼らの考えを最後まで聞いてくれる仁志さんに、最初は緊張していた子どもたちも自ら手を挙げて、発言する変化が見られました。

積極的に発言する子どもたち


このように技術面ではなく、野球をする上での心構えや他者を思いやる気持ちを持つことが重要だと語る仁志さんには、野球を通して人生に役立つ考え、行動する力を子どもたちに身につけてほしいという想いがあるのでしょう。そこで子どもたちとある約束をします。

「今はやっていないけど、普段の生活のなかで、自分一人でできることを考えてみよう」という問いかけに、‟朝は自分で起きる”‟着る服を自分で用意する”‟食べた食器を片付ける”などと答えた子どもたち。仁志さんと子どもたちが結んだ約束は、その言葉を明日から守って生活しよう、というものでした。
けっして難しいことではありませんが、今まで保護者に頼っていた習慣を自分の力でできるように、徐々にシフトするためのアイデアでした。

子どもの話に耳を傾ける仁志さん


保護者の我慢が子どもの自立に繋がる

そのあとは保護者の方々との座学を実施。
保護者にも普段の子育てに関して、『振り返りシート』を記入してもらい、「ここで発表してくださいとは言わないので、自分のなかの整理に使ってください」とアドバイス。
そして「いままで指導してきた子どもたちを見ていて、グラウンドでの様子から大体の私生活の様子がわかります」と話し始めた仁志さんは、「普段から保護者が先回りして、準備してもらっている子は、グラウンドでもぼーっとしていることが多い。保護者として先回りして見守ることはもちろん必要ですが、先回りをして指示をすることで、子どもたちが元々持っている自分で考えて行動する力を奪っていることもあるんです」と今回の野球教室の目的でもある自立について、語りました。

 

子ども中心のチームを目指して

今回はまず、仁志さんの伝えたいことをチーム全体に浸透させる機会となりました。チームがより良く変わっていくためには、子どもたちの成長が不可欠です。そして、その成長は野球だけではなく、今後の人生で役立つはずですし、もしかしたら保護者の意識の変化にもつながるかもしれません。

第1回を終えて、「高橋監督を中心とした良いチームですが、さらに子どもたちが自ら中心になるようなチームに変わっていければ、さらに良くなると感じた」と仁志さん。
高橋監督は「自立は野球だけでなく、他のスポーツをやっている子たちにも大事な要素だと思います。子どもの教育における一番大事な部分をどう伸ばせるか、私たちも楽しみながら見守っていきたいと思います」と感想を話しました。

 


第2回の野球教室では、仁志さんがチームの練習に参加し、技術面の指導も行います。そして、実際に子どもたちとグラウンドに立つことで仁志さんが感じたことや、1回目からの子どもたちの変化について、レポートしていきます。
(第2回のレポートは3月中旬の掲載予定です)

(取材:編集部、写真:小倉直樹)


野球愛教室 ダイジェスト


仁志 敏久 プロフィール

常総学院高校では甲子園準優勝1回含む3年連続出場。その後、早稲田大学から日本生命へとキャリアを積み、1995年ドラフト2位で読売ジャイアンツに入団。主に二塁手として、華麗な守備と俊足強打でファンを魅了。4年連続でゴールデングラブ賞に輝いた。2007年に横浜ベイスターズに移籍し、2010年には米独立リーグでもプレー。2010年に現役引退。
引退後はメディアでの解説・評論活動を中心に活躍の幅を広げ、2013年からは侍ジャパンの内野守備・走塁コーチやU-12の監督を務めた。1971年10月4日生まれ。