西岡の新たな挑戦 原点にある泥くさいストーリー
ナイターが終わり、深夜12時ぐらいになると、いつも駐車場に姿を現した。昨季限りで阪神を自由契約となり、BCリーグ栃木の入団が発表された西岡は当時21歳ぐらいだった。
千葉マリン(現ZOZOマリン)の関係者駐車場。狭い日本には不似合いなほど大きなアメ車に乗り、エンジンとともに音楽を鳴り響かせていた。
こちらもプロ野球の球団を担当したばかり。担当していたロッテの選手が全員帰るまでは球場を離れなかった。最後に帰るのは、西岡か小坂が多かった。
とにかく鼻っ柱の強い印象だ。コメントはいつも強気で、「やられたらやり返す」といった気概を感じられた。細身な体にはバネが詰まっていて、自慢の俊足だけでなく、甲子園でスピードガンで140キロを計測したことを覚えている。
茶髪のイケメンで、若い女性から人気はすごかった。球団イベントのディナーショーで失神するファンもいたほどだ。ブレークした05年にチームは日本一に輝いた。ワイルドな見た目や行動も注目された。
それでも活躍する選手には、必ず共通点がある。毎日のように遅くまでバットを振っていた。一塁ベンチ裏の素振り用ルームで、ネットに向かってボールを打った。照明が消えたグラウンドに打球音がこだまし続けた。
高橋慶彦コーチといつもマンツーマンだった。若者らしい美学なのかもしれない。努力している姿を見せるのは、あまり好きではなかったように感じた。ただ、個人練習は欠かさなかった。
時には気合を入れるために、ばっさりと髪を刈って周囲を驚かせた。見た目と正反対なスピリットも持っていた。
そんな西岡も34歳。大阪桐蔭出身で、後輩の根尾、藤原が今春注目を集めている。高校時代は、憧れていたPL学園から誘われず、その反骨心を持ってプレーしたと聞いたことがある。BCリーグ栃木に入団するニュースには少し驚いたが、そんな挑戦も似合うような気がした。メジャーに挑戦した経歴もあるが、彼の原点には泥くさいストーリーもある。(記者コラム・横市 勇)