【大阪桐蔭】オフは「自分との戦い」! ポジション奪取に燃える選手たち
大阪桐蔭のオフ期間のトレーニングは、ひと言でいうと自分との戦いが続く。レギュラーが確約されていない中、どれだけ自分を追い込めるか。この時期は仲間のことは忘れて、自分のことだけを考えながら、課題に向き合う。そんな環境下でポジションを勝ち取るために奮闘している2人の選手に話を聞いた。
申原理来は、145キロの速球が武器の右の本格派だ。昨年秋、背番号11をつけて念願のベンチ入りを果たした。だが、調子がなかなか上がらず、登板したイニングはわずか4回だった。
「自分はもともと股関節が硬い方なんです。体が大きいというのもあって、どうしても上(半身)の力で投げてしまっていました。そこを修正する意味でもこの冬は下半身をしっかり作ることが目標です」。
もともと体は大きい方で、入寮当時は体重が90キロあった。体重がランニングなどで夏までに10キロ落ちたが、現在は再び90キロまで戻った。だが、体の使い方がまだまだ備わっていないと自覚している。
この冬は下級生も加わった激しい競争の中、どう自分を追い込むか。ただ、周囲を見渡すと、投手陣はそれぞれタイプが違うことに気づく。
「自分はスピードがあっても(エースの)藤江(星河)のように全身を使って投げられていないんです。この冬は股関節など下半身をうまく使えるようにしたら上半身の力も使えてくると思うので、細かい部分をしっかり見直していこうと思います」。
系統としては、「僕と松浦(慶斗)がパワー系のピッチャーで、関戸(康介)と藤江は全身を使って投げるタイプ」と申原は言う。それでもピッチャー同士でのコミュニケーションは取る方だ。西谷監督は、「自分を高めることだけを考えて、仲間のことを考えずに自己に向き合って欲しい」と話すが、実際は周囲から完全にシャットアウトするほどの雰囲気ではないという。
「ブルペンでもピッチングの話はします。グラウンドではバッテリーで言い合うこともあるし、寮に帰れば雑談もします。ただ、自分が取り組んでいることはすべて教えないです。そこは自分だけが向き合うところなので」。
昨秋はチームの防御率が3点台だった。一昨年春夏連覇した柿木蓮(日本ハム)や根尾昂(中日)らの秋は1点台だったため、まずはそこから投手陣のレベルの違いが明確だった。1年生だった一昨秋、当時、根尾ら引退した3年生と1、2年生で試合をしたことがあった。「自分は3年生のピッチャーの球筋を見たくて二塁塁審を希望してやらせてもらったのですが、柿木さんや根尾さんのボールは小泉(=航平・現NTT西日本)さんの構えたところにほぼボールが来ていました。バッテリーの呼吸がピッタリで、それにも驚かされました。それぐらいのボールを投げられないと抑えられない。自分は柿木さんにすごく憧れていて、投げるだけでなく体のバランスを意識したトレーニングをちゃんとやっていました。自分もこの冬はバランスを意識しながらやっていくつもりです」。
この春は与えられた場面で役目を全うし、自分の名を世に広めるつもりだ。
中学時代はU15日本代表でアジア大会に三塁手として出場経験もある柳野友哉は、169cmと小柄ながらパンチ力のある打撃が持ち味だ。中学時代に自信をつけた打撃力を胸に大阪桐蔭の門をくぐったが「全く力が出し切れていないです」と本人は言う。
もちろん、この冬の課題はバッティングだ。「スイングスピードもそうですが、打つ力を鍛えたいです。あとは練習量が多い中でもしっかり食べること。特に夜ご飯を夜に1000gは食べています。体はもともと大きい方ではないけれど、食べたお陰で体も出来てきました。親には“手だけで振っては打てないので体全体を使って打てるようになりなさい”と言われているので、そこは気をつけたい」。
守備は自信を持ってやれていると自負しているが、二塁手のライバルには加藤巧也がいる。もちろん、レギュラーを取るには負けられない相手だが、ライバルを敵視しすぎず、自分に生かすことは取り入れるようにしている。
「ライバルだからと言って全く話さない訳ではないです。ライバルの動きを見て影響を受けることもあるので良い刺激にはなります」。
練習の虫で、西谷監督は柳野を「チームで1番の努力家」と評する。寮にいても練習したいと思い、部屋ではストレッチなどをしながら体を動かしたりしている。ただ、入学当初はあまりのレベルの高さに練習について行くのが精いっぱいだった。考える暇もなくがむしゃらに頑張っている中、1年生時、春夏連覇を果たした当時の3年生はやはり雰囲気から違った。「キャプテンの中川さん(=卓也・現早大)のミーティングのひと言ひと言でやる気にさせてもらいました。具体的に言うと……たくさんありすぎて(笑)。内野手の3年生にも何かと声を掛けていただきました」。
その当時以来の甲子園となる今春。今度は柳野が成長した姿を当時の3年生に見せる番だ。
「守備では送球の正確さを上げる。バッティングでは力強さを上げたいです。具体的に言うと、弾丸ライナー、球足の速い打球を打てるようになれば。秋は代打で出させてもらって、1打席で、ひと振りで仕留める力、どう打てるかを学びました。春こそはレギュラーを掴んで試合に出たいです」と力強く決意した。(取材・文/写真:沢井史)