【立正大立正】甲子園優勝、プロ野球経験のある監督が目指すチーム作り
一昨年の明治神宮大会で二度目の日本一に輝くなど、東都大学野球の中でも存在感を示している立正大学。一方でその付属校である立正大立正は甲子園出場もなく、東京都の中でも目立つ存在ではなかったが、2017年秋の都大会、そして昨年夏の東東京大会でベスト8に進出するなど近年着実に力をつけてきている。そんな立正大立正の2月の練習を取材した。
うちはうちのやり方が必要
立正大立正を指導するのは今年で37歳の内田和也監督。日大三では3番、センターとして活躍し、近藤一樹(現ヤクルト)、都築克幸(元中日)、原島正光(元日立製作所)らとともに3年夏には甲子園優勝を果たしている。その年のドラフトでは4巡目で指名されてプロ入りし、ヤクルト、西武で6年間プレーした。引退後は教員資格を取得し、リトルシニアなどでも指導。2014年4月から立正大立正に赴任し、2016年秋から監督に就任している。
日大三と言えば東京はおろか全国でも指折りの強豪である。そんなチームで主力を打ち、プロも経験している内田監督から見て赴任当時のチームはどう見えたのだろうか。
「高校で指導する前に中学でも見ていたので、レベルについてはそこまで低いとは思いませんでした。やっぱり高校生なので中学生に比べればしっかりできるなと。ただ、最初に非常勤講師で採用されて、ちょっとチームを見てくれと言われてグラウンドに行ったら、サッカーボールが落ちていて、野球部はそれで遊んでいました。それを見てその日はもういいかなと思ってそのまま帰ったのを覚えています(笑)」
強豪校やプロ出身の監督が就任すると、自身の経験からそれまでのチームのやり方をガラッと変えて一気に強化が進むことは珍しくない。しかし内田監督は日大三と同じやり方でチームを強くしようとしているのではないという。
「(日大)三高は設備も指導者も能力のある選手も全部揃っている環境です。そこでやってきたことをうちがやろうとしても全部が中途半端で消化不良になるので、うちはうちのやり方が必要だと思います。ただ選手に関してはおかげさまで年々部員も増えています。あと雪谷や城東のような都立の強い学校の併願として考えてうちに来てくれる選手もいる。こんなレベルの選手が来てくれるのかと思うこともありますね」
できる範囲内で最大限の効果を出す
部員数は現在2学年で73人。これは都内の学校でも有数の多さである。元プロの内田監督がいるということで選ぶ選手もいるそうだ。しかし練習環境は決して恵まれているわけではない。学校は都営浅草線の終点である西馬込駅から徒歩数分の都心にも近い場所にあり、学校に隣接するグラウンドは十分な広さはなく、他の部活とも併用である。ネットも硬式野球をやるには十分な高さがないため、バッティング練習もバックネットに打つ形で行っている。
しかし内田監督が話すようにその環境を嘆くことはなく、できる範囲内で最大限の効果を出そうとするのが立正大立正のスタンスだ。取材日も自転車で20分程度の距離にある大田スタジアムで練習する班と、こちらも同じ程度の距離にある東京明日佳病院でトレーニングを行う班が学校とは別に練習をしているという。
東京明日佳病院で理学療法士として勤務している栗田聡氏はドラフト1位で広島に入団した元プロ野球選手。故障によりプロでは結果を残すことができなかったが、その経験を生かして理学療法士となった経歴を持つ。内田監督がヤクルトに在籍していた時に球団のフィジカルディレクターを務めていた縁もあって、今では選手をカテゴリーごとに分けて週に4回は栗田氏のもとでトレーニングを行っているという。これは内田監督の持つ繋がりの大きな強みと言えるだろう。
「選手時代の繋がりと、たまたま近くの病院にいらっしゃるという縁からお世話になっています。去年の夏投げていた谷口(尚也)というピッチャーが上(立正大)でも続けるんですけど、入学してきた時はひょろひょろでした。それでも栗田さんのところで見てもらって、体の使い方を覚えれば必ず良くなるからと言われて、3年生の夏には140キロを超えるまでになった。うちのような環境でも効率良くやれば、ちゃんと伸びるということは間違いないと思いますね」(取材・分/写真:西尾典文)