【立正大立正】オフ期間は練習の最初に「12分間走」。その目的とは?
まだ甲子園出場がなく、東京都の中でも目立つ存在ではなかった立正大立正だが、2017年秋の都大会、そして昨年夏の東東京大会でベスト8に進出するなど近年着実に力をつけてきている。そんな立正大立正の2月の練習レポート後編です。
オフ期間はトレーニングを多めに
昨年夏の東東京大会ではベスト8に進出するなど、元ヤクルトの内田和也監督のもとで着実に力をつけている立正大立正。十分ではないグラウンドを補うために近隣の大田スタジアムや、内田監督の選手時代の繋がりから実績のあるトレーナーのもとでトレーニングを行うことによってレベルアップを図っている。これは取材当日に限った話ではなく、日常的に行われているとのことだ。平日に全員が揃うことはなかなかないという。だからこそチームとしての意識統一を図る点で工夫は必要になってくる。
3月のシーズンインを前に、内田監督はチームの方針を資料にまとめるということもしていた。またいわゆる“野球ノート”は運用していないものの、試験期間で全体練習ができない時には選手全員が現在のチーム状況、自身の強み、アピールポイントを書くという試みも行っている。
「別々に練習しているとどうしても一緒のチームという一体感が薄れてくることもあるので、どうやって戦っていくかということをまとめてみました。また選手がどんなことを考えているかということも書いてもらいましたが、個性が出て面白いなと。こういうことをやって動機づけをしていくことも大事だなと考えています」
ちなみに取材当日に学校のグラウンドに残っていた選手は約30人。この日は全校で試験があったということもあって、13時半には授業は終了。14時に練習開始となったが、学校の慣習で試験のある日は17時下校となっているという。普段の授業がある日は更に練習時間も短いそうだ。ただそんな中でも何か特別なことをやろうという意識はないと内田監督は話す。
「12月から1月のオフ期間はトレーニングを多めに行って、2月からは実際のプレーを多くするという感じですかね。ただ野球の練習って何か特殊なものがあるわけではないと思うんですね。(高校野球には)100年以上の歴史があって、誰も知らない練習みたいなものは今の時代ではないのかなと。あらゆる練習があって、その中でどの練習をいつのタイミングに組み合わせていくか。そういう意識でやっています」
「気持ちの部分が目的」の12分間走
この日もキャッチボールの後は実際のボールを打つバッティング、トスバッティング、ゴロ捕球から送球までの守備練習と三班に分かれて20分ずつ練習を行い、その後は80メートル、50メートル、30メートルのダッシュを2本行って終了という内容だった。
実際のボールを打つバッティングをする選手に対しては内田監督があらゆる投手のボールを想定してノックバットを動かして、それを素振りするということは行っていたが、確かに何か特別なことをしているという感じは受けなかった。
選手達からもオフ期間だから何かを追い込むというような雰囲気は漂ってこなかった。出身である日大三高とは全く違うやり方という内田監督の話の通りである。しかし一点だけ自身の高校時代の練習と重ねている部分もあるそうだ。
「高校時代の練習で一番印象に残っているのは強化合宿期間ですね。朝5時半くらいからスタートするんですけど、少しでも準備する時間を短くしたいといって、同期のキャプテンは夜にユニフォームに着替えてから寝ていましたから(笑)。最初に12分間走があって、小倉監督に一周差をつけて抜かないといけないというのがあって、これが一番つらかったですね。今は監督も年配になってきたので二周差をつけないといけないらしいです。この12分間走だけはうちもこの時期練習の最初にやっていて、ポジションを争っている選手を競わせたりしています。(フィジカル的な)トレーニングというよりも、気持ちの部分が目的で、トレーナーの方にも『これだけはやらせてほしい!』とお願いしています」
限られた環境でも効率的な練習を行ってレベルアップを図る。しかし効率化のみにこだわるのではなく、一部は選手の気持ちを引き出すような練習も行う。練習自体の内容に特別なことはなくても、内田監督の話と取り組みには非常に一貫性が感じられる立正大立正の練習だった。このやり方で更に上を目指してどこまでいくことができるのか。今後の戦いぶりにも注目したい。(取材・文/写真:西尾典文)