【八千代松陰】19時完全下校でも2年連続プロ輩出!狙うは3度目の甲子園

学校創立間もない1980年春、そして多田野数人(元日本ハム)を擁した1998年夏と過去に二度の甲子園出場を果たしている八千代松陰。一時はなかなか上位進出がかなわない時期もあったが、2018年春は県大会ベスト8、そして昨年夏の千葉大会では決勝進出するなどここ数年再び勢いを取り戻しつつある。また清宮虎多朗(2018年楽天育成1位)、長岡秀樹(2019年ヤクルト5位)と過去2年間は続けてプロ選手も輩出している。そんな八千代松陰の2月の練習を取材した。

どうなりたいのか、何を目指すのかを伝える

八千代松陰を指導するのは沖縄出身の兼屋辰吾監督。沖縄尚学では正捕手として3年春、夏の甲子園に出場した経験を持つ若き指導者だ。高校卒業後は筑波大に進学し、リードオフマンとして活躍。卒業後に八千代松陰中学の監督を経て、2017年春に高校の監督となった。監督となってわずか3年で二人のプロ選手を輩出したことになるが、何か特別な指導をしていたというわけではないという。

「自分が赴任した時に清宮は既に2年でしたから入学した時のことは分かりませんが、上背はあってもまだまだ自分の体もボールもコントロールできていないという印象でした。投手の指導については自分もまだまだ勉強中ですし、一緒に学びながら取り組んでいったら伸びていってくれたという感じですね。
長岡も守備は少し上手いなという感じでしたので1年秋からレギュラーで出ていましたけど、まさかプロにという印象ですね。2年の11月に怪我をしてしばらくフルに練習できない時期があって、その時期に逆に体が大きくなりました。まさに怪我の功名ですね。清宮も長岡も自分でコツコツできるタイプだったというのは共通点ですかね。二人に限らずですが、こちらから事細かく何かを教えるというわけではなく、どうなりたいのか、何を目指すのかということを伝えてやるようにしています」

昨年夏はノーシードながら4回戦でAシードの専大松戸を破って決勝進出も果たしている。惜しくも21年ぶりの甲子園出場はならなかったものの、激戦区千葉で大きな爪痕を残した。しかし兼屋監督は昨年と同じやり方でオフを過ごしているわけではないという。
「去年のチームも夏の大会前に手応えが凄くあったわけではありません。一生懸命やる選手達は多いですから、それまでにやってきたことが大会中に上手く自信に繋がっていったという感じですね。だからといって去年と同じことをこの時期にやろうということはないです。逆に固定したやり方は持たないようにしています。去年のチームと比べて今年はどうとか、そういう話も極力しないですね。たまに出てしまう時もあるかもしれませんけど(笑)」

ただ長く練習するのではなく効率的に

私立高校である八千代松陰だが野球部員は全員が自宅から通っている。また進学にも力を入れている学校であり、練習時間も多くとれるわけではない。そんな中でなるべく選手自身が意識して取り組むようにしているように心がけているそうだ。
「ウエイトトレーニングに関しては一年を通してやっています。冬の間は少し出力を大きくするようなメニューを増やすという感じですね。トレーナーの方に月に2回、定期的に来てもらって取り組んでいます。今年のチームは体格的に少し小さい選手が多かったので、12月はあまり走らずにまずはしっかり体を大きくしてバットをしっかり振ろうということをやっていました。1月からランニングを少し増やしましたね。体重は月に1回測定して、ウエイトの数字もまとめて張り出しています。そうすることで体重や色んな数値が話のネタになりますし、選手自身も意識するのかなと。寮生活ではないので、毎日管理したりすることまでは難しいですから、定期的にという感じですね。

平日の練習も16時くらいに始まって19時完全下校。グラウンド整備なんかを考えると2時間半できるかどうかというところです。だから効果を出すためにどうやって時間を使うかということはよく言いますし、さっきも言ってきたところです。アップも全体で時間をかけてやるということはなくて、その日の練習に合わせて各自でやって、すぐに練習スタートという感じです。でも今は野球界全体として、ただ長く練習するというよりも、効率的にやろうという流れにはなってきていますよね」(取材・文/写真:西尾典文)
 
*後編では具体的な練習内容についてレポートします。