未就学児、小学校低学年向けの継続的なベースボールスクール|ベイスターズの取り組み
横浜DeNAベイスターズは、未就学児、小学校低学年向けに野球の楽しさを体験させる普及活動を展開しているが、そうした活動を通じて野球に興味を持った子供たちのために、「横浜DeNAベイスターズベースボールスクール」を開講している。
神奈川県下に7つのスクールを開講
これは1回完結型の野球教室参加者からの「野球の基礎技術を継続して指導してほしい」という声を受けて事業化したもの。
DeNAの選手OBがコーチを務め、直接指導。野球の基本技術を通年のカリキュラムで総合的に学べる。また、野球の基礎技術の習得だけでなく、基礎体力の向上、運動神経の発達を促すことも目的にしている。
スクールの心得は、
べ ベストプレー
イ いつも明るく、元気なあいさつ
ス 進んでやろう、道具の手入れ
タ 楽しさは、ルールのもとに
―
ズ ずっと忘れぬ感謝の気持ち
幼児の遊びのレベルから無理なく「スポーツ」を習得するカリキュラムが組まれている。
現在、神奈川県下に横浜南校、横浜中校、横浜港北校、横浜都築校、横浜金沢校、横浜鶴見校、川崎富士見校の7つのスクールが開講されている。
未就学児や小学校低学年の子供向けのスクールも

NPBの他の球団でもこうした小学校向けのスクールは開港されているが、DeNAの特色は、未就学児や小学校低学年の子供向けに継続的なスクールが開港されていることだ。
横浜南校。横浜鶴見校では小学1年生から、横浜都築校、川崎富士見校では年中から通うことができる。
従来の未就学児、低学年児童の「体験教室」から一歩踏み込んで、子どもたちを「野球好き」にするカリキュラムが組まれているのだ。
またそれぞれの年代には経験に応じてビギナークラス、レギュラークラス、アドバンスクラスなどクラスが設けられ、段階を踏んで野球を学ぶことができるようになっている。
スクールはいずれも平日週1回、授業が終わった夕方から行われる。冬季には屋内で開講されるスクールもある。2018年度の応募は締め切られている。
非常に人気は高く、キャンセル待ちが出ている学校もある。
「横浜DeNAベイスターズベースボールスクール」の講師陣には、
鈴木尚典、加藤政義、島田直也、大原慎司、秦裕二と、ベイスターズで活躍した有名選手も含まれている。彼ら一流の野球人が直接子供を指導するのも大きな人気となっている。
体験会の盛り上がり

10月1日、川崎市の富士通スタジアム川崎で、新規開講する横浜DeNAベイスターズベースボールスクール「川崎富士見校」の体験会が行われた。この地は旧川崎球場。横浜DeNAベイスターズの前身である大洋ホエールズの本拠地だった。横浜市以外で初めて開講されるベースベールスクールでもある。
午後4時、受付に就学前の幼児と父母が集まった。第1部は就学前児童の体験会。約20人の幼児を前に、コーチ陣が丁寧に指導をする。
バッティング練習では、鈴木尚典コーチがお手本を披露する。スタンドで見守るお父さん、お母さんが一斉にスマホを向ける。子どもたちはコーチがトスするボールを打っていく。
次にストラックアウト、今、子どもの投擲能力が急速に衰えているといわれている。投げ方がわからないレベルの子もいるが、コーチは根気よく教える。そして的に当たったら必ず褒めている。
さらに5つのパイロンにボールを置いていくフィールディングドリル、バレーボールを持ってリレーをするマーカー走リレーとプログラムは進んだ。幼児には結構な運動量だ。適宜水分補給をしながらの60分のプログラム。子供たちは十分に満足したようだった。

母親に話を聞くと「サッカーか野球かどちらかをさせたいと思っている。これだけ運動量があるのなら、野球もいいかもしれない」とのことだった。
午後5時20分からの第2部は小学校1、2年生を対象にした体験会。こちらは約50人が集まった。照明が点灯し、ナイターとなる。
ストレッチの後、ミニハードル、ラダー、マーカーを走り抜けるサーキットトレーニングが行われる。コーチがお手本を示す。ものすごいスピードで走り抜けるコーチに親から感嘆の声が出る。
続いてバッティング練習。ここでも鈴木尚典コーチがお手本を見せる。小学校低学年でも、ボールをジャストミートする子供が結構いる。

さらに利き腕と反対の腕でボールを押してパイロンを回って帰ってくるトレーニング。子供たちが慣れてくると、最後はチーム対抗でのゲームで締めくくった。
幼児コースに比べると小学生コースは運動量がかなり増えている。コーチは「少し大変でも、頑張ってやってみよう」と子供たちを励ましていた。
スタンドでは事業を推進する會澤裕頼野球振興・スクール事業部長は、父母に対して
野球の技術だけでなくスポーツ全般の動きを習得できるので、体力や運動能力を高めることもできると説明していた。
これは重要なポイントだろう。先ほどの母親の話にもあったが、一部に「野球は運動量が少ない」という見方がある。試合はともかく、トレーニングの運動量は決して少なくはないが、多彩なスポーツの動きを取り入れて運動量をアピールするのは重要だ。
今、プロ、アマで未就学児、低学年児童への野球教室は全国で行われるようになっている。それは喜ばしいことだが、そういう形で野球の楽しさに振れた子供が本格的に野球を学ぶ「受け皿」が乏しい。小学校の野球クラブはたくさんあるが、旧来のスパルタ式の指導や子どもの発達段階を考慮しない指導をするクラブも多い。
横浜DeNAベイスターズは、「野球を好きになってもらう」ことを第一に事業を推進している。学ぶべきことが多いのではないだろうか。(文・写真:広尾晃)