【相陽中】巨人菅野も指導した内藤先生に聞く「部活動の意義」と「軟球と硬球」

巨人のエースとして圧倒的な存在感を見せている菅野智之投手は相模原市立新町中の軟式野球部の出身。中学3年の夏の神奈川大会で優勝を遂げ、関東大会ベスト8まで勝ち進んだ。この時、菅野投手を指導し現在は相模原市立相陽中の野球部監督を務めているのが内藤博洋先生だ。

毎日、野球ができるのも部活動のメリット

――近年、野球部の部員数が減り続けていることに加え、スポーツ庁からの部活動ガイドラインによって、「野球部」を取り巻く環境が厳しくなっているように感じます。
内藤 相陽中は全校で23クラス(全国生徒およそ900名)の大規模校ということもあって、部員数には恵まれています。今年の夏、三学年いるときは合計で49名。調べてみたら、県内の公立では一番多い部員数でした。魅力ある野球部をいかに作っていくかを考えています。
 
――学校に部活動がある意義はどのように感じますか。
内藤 一番は学校全体が活気づくということです。サッカー部に元気があれば、野球部も元気が出ます。部活動によって、学校にエネルギーが生まれる。学校に与える影響、地域に与える影響は、クラブチームにはない良さだと思います。あとは、現実的な話をすると、部費がほとんどかからないので、経済的に優しいという面もあります。

 
――とはいえ、以前に比べて、完全下校時間が早くなっていて、思う存分に練習ができなくなっていますよね。
内藤 10月であれば17時15分に完全下校で、冬の一番短いときで16時半です。6時間授業のときは30分ぐらいで終了。その代わりではないですが、朝練の30分で打ち込みをしています。休みは毎週月曜日。練習時間が短いとはいえ、ほぼ毎日、野球ができるのも部活動のメリットだと思います。

高校で活躍するための技術指導


――軟球と硬球、ボールの違いはどう受け止めていますか。

内藤 一番差が出るのは、内野手の守備ではないでしょうか。とくに、低く速いゴロへの対応がなかなか難しい。ノックのときから、できるだけ硬式に近い打球を打つように心がけています。
 
――バッティングの違いは感じませんか。
内藤 さほど感じません。この間、日大三高で甲子園に出た教え子がグラウンドに来てくれて、いろいろと話をしました。はじめは、硬球を飛ばすのに苦労したそうですけど、練習を重ねていくうちに対応できるようになったようです。その理由を聞くと、興味深いことを言っていました。「中学時代にとにかく量を振ってきたので、振る力はあった。あとは、いろんな打ち方をやってきたことで、バッティングの引き出しがいくつかあった」。
 
――以前から、内藤先生の練習は見ていますが、本当にいろんな打ち方を教えていますね。
内藤 体全体を使ったフルスイング、手を先に出す意識で打つパンチショット、低めをヘッドを下げて打つことなど、いろんなことをやっています。「これしかできない」ではなく、中学時代にいろんな打ち方を経験して、バッティングに幅を持たせてあげたいのです。

 
――それが、高校での活躍にもつながっていくわけですね。
内藤 私がバッティングで大事にしているのは、強度と精度です。2つが両立できれば、おのずと結果は付いてきます。インパクトでボールがつぶれる軟球は、ボールの中心を少しでもずれると、強い打球が飛んでいきません。その分、技術的に難しくなるわけですが、精度=ミート力を高めるには適していると思います。練習では、ボールの中心を打つのはもちろん、あえて中心から上を打ったり、下を狙ってみたり、意識的にとらえるポイントを変えています。こうした練習が、バッティングの幅につながると思っています。
 
――この新チームから、中学軟式野球の公認球がB号からM号に変わりました。B号と比べると、直径が約2ミリ大きくなり、重さが約3グラム重くなりました。3カ月ほど使ってみての感想はいかがですか。
内藤 面白いですね。しっかりと振って、芯でとらえた打球は、B号以上に飛んでいく。ただし、ボールが重たくなっているので、振れない選手は重さに負けています。
 
――「ごまかせないボール」と言えるかもしれませんね。
内藤 インパクトでいかに負けないか。硬球につながっていくボールだと思います。(取材・文、写真:大利実)

*インタビュー後編に続きます。