【明大中野八王子】3年生の思いを汲んで「実力勝負」で臨む代替大会

「甲子園がない」―。厳しい現実を前にして、球児たちはどのような思いで野球に取り組み、代替大会に臨もうとしているのでしょうか。球児達の生の声が聞きたいと思い、昨年秋の都大会で強豪・二松学舎大付を破り、優勝した国士館とも1点差の接戦を演じた明大中野八王子のグラウンドに伺いました。まずはチームを指導する椙原貴文監督に話を聞きました。

--まずシーズンが始まる3月から例年とは違う動きになったと思いますが、どのような活動をされてきたか教えてください。

椙原「2月の23日から試験休みだったんですけど、そのままの流れで練習も自粛に入りました。当初は春休みからやれるようにと思っていたら選抜が中止になって、春の都大会もなくなりそうだと。そのタイミングで一度全員に対してオンラインで話しました。そこから春も中止になったので、夏に向けてどうやって気持ちを作っていくかということは何度かに分けて話しましたね」
 
--登校できない期間に、監督から選手に対して何か指示をされましたか?

椙原「練習メニューについては指示はしていないですね。4月には1年生が入ってくるので、それに向けて2年生に対して受け入れるための準備などをするように言いましたが、具体的な指示をしたのはそれくらいだと思います」

--その期間、監督ご自身は不安はなかったですか?

椙原「今年のチームは今の3年生が秋から主体的に2年生も巻き込んでやっていたので、全体としては大丈夫かなと思っていました。体力的に落ちないかなと思っていたくらいです。ただ選手からは『個人でどうしてもモチベーションが下がるような選手が出てくるかもしれないのでどうしたらいいですか?』 という相談はありました。それに対してはポジションごとに細かく5~6人ずつで分けたグループを作って、そのグループ単位で連絡をとりあって、そのリーダーが吸い上げてキャプテンと副キャプテンに報告するような形をとりました。
あと冬の間に自分を表現する場としてフリーテーマで順番に1分間スピーチをやっていたんですけど、それを4月からオンラインでやりました。これは多少テーマを絞って、気持ちを高めるためのスピーチをやろうと。そしてその時点ではゴールデンウィーク明けの5月11日から通常通りになると思っていたので、全員が揃った時に、全員が同じテンションでグラウンドに立てるようにということを考えよう、という話はしました」

--ただ実際は5月中も全体での活動はできなかったわけですよね。

椙原「5月中はオンライン授業でまだ登校できませんでした。だから5月からはトレーナーさんにも入ってもらって、オンラインでトレーニングの指導なんかはしてもらいました。あとは5月からはどういう目標でどういう計画でやるかという計画表をオンラインで提出してもらうようにしました。こちらから指示はしていなくても何をしていたかは把握できるようにした感じですね。6月の2週目から分散登校が始まって、全員揃って練習ができるようになったのは7月2日からです」

--5月20日に甲子園の中止が決まったわけですけど、その決定を聞いた時に監督ご自身はどう思われましたか?

椙原「真っ白ですね。悲しいとか落ち込むとかじゃなくて真っ白です。こんなことってあるんだなと。何の感情も湧かなかったです。少し前から中止かもという話は出ていたので覚悟もしていましたし、想像もしていました。決まった後のことも色々考えていたんですけど、それでもいざ決まったと分かった瞬間は本当に真っ白でした。だからその前後のことはあまり覚えていないですね。少し落ち着いた後に選手たちに何て言ったらいいか考えたんですけど、対面で会っていないわけですから、この状態では何も話ができないなと。だからまずキャプテンと連絡をとって、1日空けようということだけ伝えました。だから20日に決まって、21日は空けて、22日に話をしようということを伝えました。その時にキャプテンからはまずは3年生だけにしてもらえますか? という話があったので、じゃあそうしようということだけ決めました」

--1日空けて22日、3年生とはどんな話をしましたか?

椙原「自分からは『東京は代替大会はあるみたいだけど、率直にどうしたい?』とまず聞きました。そうしたらキャプテンから『先生、大丈夫です』と言われました。前の日に3年生で話をして色んな意見が出たけれども『どんなことがあっても最後までやりきります』と。それを聞いた時に感動しちゃって涙が出ましたね。自分からは『じゃあそれに向けてがんばろうな』ということだけでしたね。
本当に今年このチームで良かったなと。僕は名将と言われるような監督でもないですし、人生経験も豊富なわけじゃない。だから一緒に頑張ろうということしか言えないなと思っていたんですけど、選手たちに上を行かれた感じです」

--代替大会に向けてようやくスタートし始めたところですけど、大会に向けてはいつもと違うようなことはありますか?

椙原「それについても3年生と話したんですね。『3年生だけで出るという選択肢もあるけどどうする?』って。それに対しても選手たちからは『西東京で一番になるのが目標で、思い出作りにはしたくないから実力勝負でやります』とはっきり言われました。じゃあそれでいこうという感じですね。それぞれの学校さんの都合はあると思いますけど、うちはそういう方針で臨むことにしました。そういう意味でやっと夏の大会前っぽくなってきた感じです」

(取材・西尾典文/写真:編集部)

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