【夏密着】神戸弘陵/3度目の前十字靭帯損傷。チームで「夢の甲子園」を目指す小林芽生主将

新型コロナウイルスの感染拡大で部活が停止になったり、時短になったり、エリアごとにさまざまな対策が講じられるなか、3年生たちは変化に対応し、感染予防を行いながら高校野球人生の総決算となる夏の大会に向けて努力を続けている。彼らの「いま」に密着した。

女子高校野球が歓喜した2021年春 ケガで選手生命を終えた選手がいた。

女子高校野球界に吉報が舞った。全国高校女子硬式野球連盟と全日本女子野球連盟は4月28日、今夏の第25回全国高校女子硬式野球選手権大会の決勝を甲子園球場で開催すると発表した。春の選抜ベスト4の強豪・神戸弘陵も歓喜に沸いた。

5年ぶり二度目の夏王者奪還を目指す小林芽生主将は、吉報が届く数週間前に野球ができない身体になった。4月2日に閉幕した選抜の大会期間中、右膝に違和感があり、大会後に病院を受診。中学以来3度目の前十字靭帯断裂の診断が下った。夏まで野球を続けるとその後の人生で歩行困難になる可能性があると告げられた。

「選抜では自分が最後の打者になってしまい、野球人生最後の打席が三振かぁ、と悔しかったです。でも女子も甲子園で野球ができることを聞き、楽しみな気持ちと緊張が大きくなってきました」。

悔しいけれど……仲間がいる。

「絶対に甲子園に行こう!」

中学2年のときに左足の前十字靭帯と半月板を、中学3年のときに右足の前十字靭帯を傷めている。中学最後の大会は、リーグの許可を得て膝の固定器具を着けたまま打席に立った。不完全燃焼に終わった野球をしっかりとやり切るため、神戸弘陵へ入学を決意。同校男子野球部を2度甲子園へ導いた石原康司監督の厳しい練習を乗り越えてきた。診断結果を知り涙する仲間から言われたのは、『絶対に甲子園に行こう』だ。

 4月25日から3回目の緊急事態宣言が発出され、対象地域に含まれる同校は部活動の時間が短縮されている。限られた時間の中で内容の濃い練習を行うため、準備やグラウンド整備をできるだけ迅速に行うようチームで心掛けている。小林はプレーをしなくなり、今まで以上にチーム全体を把握できるようになったと笑顔で語った。まずは6月5日に開幕する第12回関西女子硬式野球選手権(ラッキートーナメント)で2連覇達成を。そして怪我に負けず大舞台・甲子園での『日本一』を目指す。

(取材・文:喜岡 桜)