選手も指導者も気をつけたい、オフトレでの「疲労骨折」
厳しい練習とトレーニングを行うチームも多いオフシーズン。そこで注意したいの、骨に物理的ストレスが繰り返しかかることによって起こる「疲労骨折」です。オフトレでの疲労骨折の注意点などをトレーナーの西村さんにお話を聞きました。
指導者向け「オフトレ」の注意ポイント!
選手も指導者も気をつけたい「疲労骨折」
オフシーズンは技術を高めるために基本練習を反復することが多くなりがちです。正しいフォームを身につける、再現性の高いプレーを習得するといったことは、ある程度時間をかけて繰り返し練習していくことが必要となるからです。さらにこの時期は体力強化としてスタミナを重視したランニングなども行われることが多く、全体の練習量と選手個々人の体力的な疲労とのバランスを見極めながら慎重に進めていく必要があります。
野球は反復動作による慢性的なスポーツ障害が発生しやすいスポーツです。「野球肘」「野球肩」といわれるものは主に筋や腱などに大きなストレスがかかることによって起こるものですが、骨に物理的ストレス(=荷重や衝撃など)が繰り返しかかることによって起こるのが「疲労骨折」です。
疲労骨折は体のさまざまな部位で起こりますが、野球でよく見られるものにはランニングやジャンプ動作が一因となる脛骨(けいこつ)、腓骨(ひこつ)といった脛の骨や、足の甲部分にある中足骨(ちゅうそっこつ)などがあります。また中高生によく見られる「腰椎分離症」は腰椎の疲労骨折を指します。この他にもスイング動作によって肋骨を疲労骨折することもあります。
こうした疲労骨折は選手の体力レベルに対して練習量(技術練習だけではなくトレーニングなども含む)が多くなり、体力的な疲労回復が追いつかずに脆弱な部分(疲労骨折の場合は骨や骨膜など)を中心に傷んでしまうことが考えられます。
また疲労骨折の傾向が見られても初期段階であれば、痛みを我慢しながらある程度練習を継続することができるため、全体練習を休みにくい雰囲気や練習に対する強制力が強く働くと疲労骨折を進行させてしまうことにもなります。
疲労骨折を予防しながら練習を進めていくためには、
・反復練習で疲労した部位を十分に回復させる期間を設ける
・回復期間にあたる時は別の部位を中心に練習やトレーニングを組み立てること
・痛みが続く場合は無理をさせず患部外のトレーニングなどに変更する
こういったことが大切になります。
またランニングやジャンプ動作では使用する場所(地表面=サーフェス)の選択も重要です。特にアスファルトで舗装されたところは荷重ストレスが大きくなりやすいため、土のグランドを選んで行うようにしたり、同じ場所ばかりを使わないようにしたりといった工夫が必要です。
疲労骨折は放置しておくと、競技復帰までに時間がかかってしまうスポーツ傷害です。体力レベルにあった練習量と疲労回復にかかる時間を考慮し、疲労骨折を防ぐように心がけましょう。(西村典子)
疲労骨折は荷重ストレスのかかる脛や足の甲などに起こりやすい
著者プロフィール
アスレティックトレーナー/西村典子(にしむらのりこ)
日本体育協会公認アスレティックトレーナー、NSCA-CSCS、 NSCA-CPT。東海大学スポーツ教育センター所属。高校、大学など学生スポーツを中心としたトレーナー活動を行う一方で、スポーツ傷害予防や応急処置、トレーニングやコンディショニングに関する教育啓蒙活動を行う。また一般を対象としたストレッチ講習会、トレーニング指導、小中学生を対象としたスポーツ教室でのウォームアップやクールダウンといったさまざまな年齢層への活動がある。一般雑誌、専門誌、ネットメディアなどでも取材・執筆活動中。大阪府富田林市出身。奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。