【相陽中】内藤先生が部員たちに望む「リーダー性」と「自立」
中学時代の菅野投手(巨人)を指導し、現在は相模原市立相陽中の野球部監督を務めているの内藤博洋先生。前編では「部活動の意義」と「軟球と硬球」について伺ったが、後編では「リーダー性」と「自立」について考えを伺った。
テーマは「リーダー性」と「自立」
――高校野球に送り出すにあたって、「こういうことを身に付けてほしい」と考えていることはありますか。
内藤 今、相陽中のテーマになっているのが「リーダー性」と「自立」です。相陽中に来て4年目になりますが、県大会準決勝で負けるなど、あと少しのところで全国大会を逃しています。「ここで1本打ったら」「ここで抑えたら」という場面で、なかなかいい結果が出ていない。それは技術だけでなく、勝負にのぞむうえでの自信もあると感じています。自信をつけていくには、野球の練習だけでなく、日々の生活も大事になっていくわけです。
――具体的に、選手にはどんなことを望んでいますか。
内藤 自ら考えて、自ら動くということです。周りを見て動くのではなく、自分が最初に動く。たとえ、それが間違っていてもいいので、やり通してほしい。友達の後ろにくっついているうちは、ダメですね。
――学級委員長のような役職に就いている部員もいますか。
内藤 います。全体で23クラスあるなかで、8クラスは野球部員が学級委員長を務めています。学級委員長になると、人前で話しをする機会が増えるので、自分の想いを伝える勉強になります。私がリーダーに求めているのは、「想い」「思考」「伝える力」です。まずは、学校や野球部をよりよくしたいという「想い」があって、そのためにどうすればいいかの「思考」があって、それをどう発信するかの「伝える力」がある。部員全員がこうしたリーダーになれれば、間違いなく強いチームになるはずです。

――高校でも必ず生きてくるでしょうね。
内藤 あとは、中学生のうちからプラスアルファの考えを持ってほしいですね。たとえば、授業中、先生が黒板に書いたことをノートに写すだけでなくて、先生の話を聴きながら、「ここが大事だな」と教科書に赤ペンでラインを引けるようなアイデアを持ってほしい。黒板を写すだけの生徒とは、理解力が変わってきます。
――なるほど。テスト勉強もしやすくなりますね。
内藤 野球でいえば、凡打してベンチに戻ってきたときに、打ち取られたコースを何度か素振りしてみると、次の打席への意識が変わるはずです。
逆境を楽しく前向きにとらえる

――内藤先生は、中学校の指導者になって15年目。まだまだ若い部類に入りますが、中学生の気質の変化は感じますか。
内藤 感じますね。私自身も指導方法を変えています。以前は、精神的に追い込みすぎてしまい、子どもの力を発揮させてあげられなかったこともありました。
――今はどう変えているのでしょうか。
内藤 たとえば、チャンスで凡退したときに、「お前のせいで負けたんだよ!」と厳しく言っていたときもありました。それが、今は「ここで打てるような選手になってほしい。それがチームの勝利につながる」と、期待を伝えるようにしています。へこますことよりも、「周りが期待してくれている」と感じることのほうが、練習のモチベーションにつながるように思います。
――特に、今の子どもたちはそうかもしれませんね。
内藤 試合を勝ち上がっていくには、我慢や忍耐も必要だと思いますが、今の子どもたちはそれだけでは厳しい。苦しい場面が来たときに、鼻歌でも歌って、ピンチを楽しく乗り越えられる前向きな心が必要です。物事をプラスにとらえて、逆境を乗りこえてほしいですね。
――内藤先生自身が、それを実践しているように思います。
内藤 何をするにしても、楽しむ心がないと、どこかで限界がきてしまいます。その姿勢を、指導者である大人が子どもたちに見せてあげなければいけない。全国にはたくさんの指導者がいらっしゃいますが、野球を楽しむ心は誰にも負けていない自信があります。その心を大事にしたうえで、日本一になることが、最終的な目標です。
――やっぱり、勝負事である以上、勝ちたいですよね。
内藤 勝ちたいです。それは、目標に向かって本気で努力を続けたら、結果が出ることを、部活動を通じて教えてあげたいから。こうした成功体験は、これからの人生にもきっと生きていくはずです。
内藤先生、ありがとうございました!