【大分商】那賀誠監督|打倒明豊!「熱がなければ、圧には勝てない!」
大分商は1931(昭和6)年夏に、大分県勢初の甲子園出場を果たした。以降、夏に4度、春1度の甲子園8強進出を果たしている。なお、春夏の通算出場回数22度は、18度の津久見、17度の明豊を抑え県内トップの数字。チームを率いる那賀誠監督に話を聞いた。
熱がなければ、相手の圧に勝てるわけがない!
夏は2013年を最後に聖地から遠ざかっているが、プロ注目の148キロ右腕・平田玲翔を擁する今季は一大チャンス到来だ。しかし、現在の大分県で夏5連覇中の絶対王者・明豊を倒すことは、決して容易なことではない。昨秋も勝てばセンバツにつながる九州大会出場が決まる準決勝で3-9と力負け。春夏連続での甲子園を狙った2023年夏も、0-3で敗れ準優勝に終わっている。
それ以前を見ても、19年夏の準決勝で勝利を挙げたものの2015、17年夏は決勝で敗れた。つまり近年の明豊は、大分商にとって最大の“目の上のたんこぶ”なのである。
今春の大会も、両者が順当に勝ち上がれば3回戦での対戦が実現する。2023年春に大分商を甲子園へと導き、現在もチームを率いる那賀誠監督は、明豊に対してどのような意識で臨んでいるのか。
「僕自身は勝てると思っているのですが、秋の対戦であらためて感じたことがあります。今の子供たちは、物心がついた時から常に明豊が大分県で優勝しているし、甲子園に出ている。だから、口には出さなくても無意識のうちに見上げてしまっているんですよ。たとえば捕手はボール半個分外に構えてしまうから四球を出してしまって、そこから失点を重ねてしまう。バッテリーは逃げ腰になって、変化球が多めになってしまう。日頃は強がるようなことを言っていても、明豊のユニフォームを目の当たりにした選手たちは、無意識に目線が上向きになってしまうんです。相手は同じ高校生。同じ目線の高さで、さらに言えば“上から目線”で臨まなければ勝負になりません」

那賀監督は、打倒・明豊のヒントを視察した昨秋の九州大会で得た。県王者の明豊は、沖縄2位の日本ウェルネス沖縄と対戦し、タイブレークの末に初戦敗退を喫している。
「経験も戦力も明豊が有利と言われる中で、ウェルネスの選手たちは決して明豊を上には見ていませんでした。明豊は日頃から上から目線で試合をされることに慣れていないから、競り合いになった時に選手たちが平常心を失ったのかもしれません」
選手がコンプレックスを抱かずにプレーするためには“死に物狂いで食らいつく姿勢”が必要だと那賀監督は言う。プレーが完結するまで、最後のワンプレーまで手を抜かず、諦めてはいけない。
「フライを打ち上げた瞬間に下を向く。バックアップもあと一歩を詰めない。ミスをしたらグラブのせいにする。魂が抜けているからそんなことをするのです。そんな選手は試合途中で相手にリードを許せば、簡単に諦めてしまうでしょう。とにかく“熱”なんですよ。熱がなければ、相手の圧に勝てるわけがない!」

戦術的に必要なのは、やはり投手力ということになる。前提として、明豊と戦えるだけの投手がいること。秋のウェルネスも、長山武蔵という140キロ超のパワー系投手が、初見の明豊打線を苦しめている。そして、継投のタイミングだと那賀監督は言った。
「投手を引っ張らないことでしょうね。ボールの外れ方を見て“マズいな”と思ったら、たとえカウント途中でもスパッと代えること。“このバッターまで”などと考えていては手遅れになります。継投には相手の打順の並びなどいろんな判断基準がありますが、最優先すべきは投手の状態なんです」
最速148キロ右腕が本当に伸びるのは、まだまだ先の話だ

大分商では月曜を完全オフにして、火曜・木曜をウエイト/個人練習に、水曜・金曜を技術練習としている。しかも現チームになってからは、選手の方から水曜・金曜の練習メニューを提案するようになり、那賀監督もこれを認めている。今では選手が「今日は走者を入れてのノックをお願いします」、「明日の実戦形式では投手に登板させてください」と言ってくるのが当たり前となった。火曜と木曜は2組に分かれ、室内でのウエイトとティー打撃やポジションノックといった課題練習に取り組む。また、水曜・金曜と土日は中距離走2本、ミニサーキットを2セット、体幹トレーニングを練習最後に取り組む。大分商では、こうした練習を通年で行っている。
エースの平田をはじめ、投手陣のブルペン入りも本人たちの意思任せだ。
「私は『ブルペンに入れ』とも『入るな』とも言いません。むしろ重視しているのは傾斜のない場所での30~40投なんです。フラットな地面で下からの連動を意識しながら、ゆったりとしたフォームから綺麗な回転の球を投げてほしい」
最速148キロを誇る平田だが、その成長ペースは那賀監督が期待しているよりも緩やかで、出力の大きさに対して基礎体力は決して高くはないという。自分のパフォーマンスに見合った体力がない。それでも2年夏を前に、148キロを出してきた。そんな怪物級の素材に対しても、個別の強化メニューを与えずにここまで来た。
「今になって、焦らなくてよかったなと思います。入学時に183センチだった身長がまだ現在は188センチ。しかも、まだ伸びているという話を聞いた時に“この子がギュンと伸びる時期は、まだもうちょっと先なんだろうな”と思いました。だから今、あまり多くを求めすぎても出力が大きいだけに故障させてしまうかもしれない。平田は3年後、 5年後には 160 キロぐらい投げる可能性があります。体幹が弱くて腕立て伏せもできないのに、これだけの球を投げるわけですから。決して腫れ物に触るみたいに過保護にするつもりはないし、最低限やるべきことは伝えてはいますが、ここは本人の自覚、自立、探求、工夫に期待したいですね」
熱血指導に柔軟性を加えた指揮官が、13年ぶりの夏聖地、そして29年ぶりの甲子園勝利に導く。(取材:加来慶祐/写真:編集部・加来慶祐)
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